第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP08

2016年5月28日(土) 16:00 〜 17:00 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-SP-08-1] 野球選手の打撃能力とバランスについての分析

―球場別の打撃成績と視覚情報に注目して―

三宅崇史1, 水池千尋1, 西本哲也2, 南場芳文3, 成瀬康4, 立原久義5, 山本昌樹1,5 (1.大久保病院リハビリテーション科, 2.川崎医療福祉大学医療技術学部健康体育学科, 3.神戸国際大学リハビリテーション学部理学療法学科, 4.国立研究開発法人情報通信研究機構脳情報通信融合研究センター脳機能計測研究室, 5.大久保病院明石スポーツ整形・関節外科センター)

キーワード:球場別打撃成績, 立位バランス, 視覚情報

【はじめに】

投手成績・打撃成績には球場間の差異が生じることが報告されている。一般に,投手であればマウンド傾斜や硬さなどが投球時のバランスを左右すると言われる。一方,野手においては打撃時に影響を与えるような因子は明らかにされておらず,個々の主観によるところが大きいと考えられる。しかし,それらを裏付ける先行研究は,我々が渉猟する限り見当たらなかった。そこで,本研究では,野球選手を対象として,野球場のバッターボックス上での立位時の重心動揺を計測し,その際の視覚指標について聞き取り調査を行った。球場別の打撃成績と合わせて解析を行い,野球選手の視覚情報と立位バランスがパフォーマンスに及ぼす影響について検証したので報告する。

【方法】

対象は,全日本大学野球連盟(JBUF)に所属する男子野球部員51名(平均年齢20.7歳)とした。方法は,打撃軸足の片脚立位を課題動作とし,JBUF加盟リーグ戦にて使用されるA球場とB球場のバッターボックス上における開眼及び閉眼時の30秒間の重心動揺を,重心動揺計(ANIMA社:GRAVICORDER GS-30)を用いて計測した。また,学習効果の影響を考慮し,無作為にて開眼あるいは閉眼から始める被験者に分けて,各片脚立位動作を交互に計3回ずつ行った。さらに,開眼時の視覚指標について聞き取り調査を行った。計測された総軌跡長,外周面積を球場別の打撃成績と比較検討した。なお,打撃成績はJBUFリーグ戦による打率とし,球場ごとの打率に2分以上の差があった場合に差があるものと定義した。統計学的処理は2標本の符号検定を用い,有意水準は5%未満とした。

【結果】

打撃成績において球場間に差のある者は22名であり,A球場の打率が高い者(a群)が14名,B球場の打率が高い者(b群)が8名であった。開眼時片脚立位において,a群では,総軌跡長(A球場:117.5cm,B球場:125.5cm),外周面積(A球場:5.2cm2,B球場:5.8cm2)でありA球場で有意に小さかった(p<0.05)。b群においても,総軌跡長(A球場:141.4cm,B球場:130.7cm),外周面積(A球場:6.6cm2,B球場:6.0cm2)であり,B球場で小さい結果を示した。一方,閉眼時片脚立位は,有意差を認めなかった。また,打率の高い球場において,視覚指標を定めている傾向がうかがえたものの,聞き取り調査から有意差を示す結果は得られなかった。

【結論】

本研究の結果から,野球選手において,球場ごとの視覚情報の違いが立位バランスに影響を及ぼしている可能性が考えられ,球場別の打撃成績の差異と関連していることが示唆された。しかしながら,公式戦の場面と計測場面では条件設定や心理状態が異なるため,視覚情報以外の要因も影響しているものと考えられる。今後は,実戦に近い条件において検証していく予定である。