第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP09

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-09-1] 小学生に行う足趾把持力測定の意義(第2報)

満丸望, 久保温子, 田中真一 (西九州大学リハビリテーション学部)

Keywords:小学生, 足趾把持力, 学校健診

【はじめに,目的】

近年,子どもたちの体格が大きくなっているのに反して,体力・運動能力は低下しており,さらには子どもの腰痛やロコモティブシンドロームについても議論されるようになった。一方で,過度な運動による運動器障害を抱える子どもも見られる状況にあり,子どもたちの身体問題はますます重要視されている。文部科学省は,学校健康診断を,近年の子どもの健康問題を考慮したものへと検査項目の見直しを進め,運動器の検診の導入を推奨している。その中の保健調査に「四肢の状態」の確認が必須項目となったが,足部に着目するような項目は見当たらない。一方で高齢者においては,転倒に関する研究として中でも足趾把持力測定は多くの研究で行われており,バランス能力や歩行能力との関連性が高く,重要であるという報告が散見される。また足趾把持力の測定は,簡便かつ安全に誰でも実施可能であり,少子高齢化が進むわが国においてスポーツ向上,障害予防の観点から見ても,学童期から学校健康診断において足部,特に足趾機能に着目することが重要ではないかと考えた。そこで本研究は小学生に行う足趾把持力測定の意義について,運動能力との関連から検討することを目的とした。

【方法】

対象は障害予防セミナーで募集した小学生71名を対象とした。対象者の年齢などの個人属性に関する情報の収集の後,足趾把持力測定,運動能力の評価として,握力,長座体前屈,上体起こし,反復横跳び,50m走,立ち幅跳び,ソフトボール投げの7項目を測定した。足趾把持力は,小児用足趾把持力測定器(竹井機器工業株式会社製)を用いて測定した。対象児に測定方法を十分に習得させた後,左右2回ずつ測定し,その最大値を足趾把持力値として採用した。その他の測定項目は,新体力テストに従い実施した。統計処理は,各測項目の正規性をShapiro Wilkの検定にて確認した。続いて対象児71名における足趾把持力とその他の測定値の関連をSpearmanの相関係数を用いて分析した。なお,統計処理にはIBM社SPSSを用い,統計学的有意水準は5%未満とした。

【結果】

足趾把持力と有意な相関を示したのは,身長(r=0.58p<0.01),体重(r=0.50,p<0.01),握力(r=0.71,p<0.05),長座体前屈(r=0.34,p<0.01),立ち幅跳び(r=0.40,p<0.01),反復横とび(r=0.39,p<0.01),50m走(r=-0.42,p<0.01),ソフトボール投げ(r=0.36,p<0.01)とすべての項目で相関を認めた。



【結論】

学童期の足趾把持力は身長や体重など体格を反映すること,握力や立ち幅跳びなどの運動能力と強く相関し,全身の筋力や体力を反映すること,強化によって運動能力の向上の可能性が示唆された。また足趾把持力の測定は簡便かつ安全であり,誰でも測定することができる。さらに児童自身が足部・足趾に着目できる機会でもあり,学校現場における有用性も高い測定項目ではないかと考える。