第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本スポーツ理学療法学会 一般演題ポスター
スポーツP09

Sun. May 29, 2016 10:00 AM - 11:00 AM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-SP-09-2] 肘障害予防のための啓蒙活動とその効果~地域チームにおける取り組み~

岡里拓郎, 宇良田大悟, 井上彰, 芹田祐, 村山俊樹, 藤井廉, 中野翔, 川島雄太, 小林凌, 宮本梓 (慶友整形外科病院リハビリテーション科)

Keywords:野球肘予防, 啓蒙活動, メディカルチェック

【はじめに,目的】

野球肘は成長期における投球疾患の中でも成長期に発症頻度が高く,少年野球選手の約20~40%にも及ぶ(渡邉ら,2010)と報告されており,全国で少年野球選手に対してメディカルチェックが広がっている。成長期の野球肘疾患を予防するためには,指導者に対する啓蒙活動と医療機関との連携が重要であると考えられる。また,当院では,年1回,全チームを対象にメディカルチェックを行い,その際に指導者・選手への啓蒙活動を実施し,また,野球肘予防に関するセミナーを年1回行っている。そこで本研究では,継続してメディカルチェックに参加した地域少年野球チームにおける肘関節痛の有無及び肘関節病変の有無について調査し,医療機関による啓蒙活動の効果を検証したので報告する。




【方法】

対象は,当院において2011年と2014年にメディカルチェックを行った地域少年野球チーム(2011年10チーム127名:年齢10.8±0.8歳,2014年9チーム119名:年齢10.4±1.4歳)において,現在の肘関節痛および過去1年間の肘関節痛を有するかのアンケートを実施した。このアンケート結果を基に肘関節痛および過去1年間の肘関節痛の有無とメディカルチェック当日に超音波画像診断装置Pro sound α7(ALOKA社製)にて肘関節病変の有無を調査した。2011年と2014年の肘関節痛および過去1年間の肘関節痛及び肘関節の病変の有無についてχ二乗検定を行った。有意水準は5%とした。また,各チームの指導者に年間試合数・大会数・練習時間や至適全力投球数など野球肘に関与すると考えられる項目についてアンケート調査を行った。






【結果】

指導者へのアンケート結果は,至適全力投球数において2011年で50球以下は1名,51から100球は7名,101球以上は2名であり,2014年で50球以下は5名,51から100球は4名であった。肘関節痛および過去1年間の肘関節痛を有する者は,2011年で127名中40名(31.4%),2014年で119名中31名(26.0%)であった。肘関節病変を認める者は2011年で109名中35名(32.1%),2014年で109名中12名(11.0%)であった。2011年と比較し2014年において肘関節痛を有する者は有意差を認めなかったが,減少傾向であった。肘関節病変を認める者は有意に減少した(p<0.05)。






【結論】

メディカルチェックを通した啓蒙活動を行うことで,指導者の意識が変わり,指導者が考える至適全力投球数が減少し,肘関節痛及び肘関節病変予防に繋がることが示唆された。さらに,定期的なメディカルチェックを行うことで,早期の段階での局所安静や病院受診などの対応が可能になり,早期治療に繋がると考えられる。今後も開催回数を増やし,活動範囲を広げながら,地域に根ざしたメディカルチェックを実施していきたいと考えている。