第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P03

2016年5月27日(金) 15:20 〜 16:20 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-03-3] 急性期病院におけるADL自立度と介護保険サービスとの関係

松下一紀1, 三井普祐子1, 稲垣麻恵1, 高西浩佑1, 笹木菜奈未1, 高岩亜輝子2, 柴田孝3 (1.済生会富山病院リハビリテーション科, 2.富山大学附属病院リハビリテーション科, 3.済生会富山病院脳神経外科)

キーワード:急性期病院, ADL, 介護保険

【はじめに,目的】当院では退院前に家屋調査を実施した患者のうち,ケアマネージャーと契約された患者を対象に退院後約1ヶ月で再度家屋調査を実施し,退院後のADLの状況,家屋改修や介護保険サービスの利用状況を確認している。地域完結型医療へ変化している現在では退院前の家屋調査や退院時のカンファレンスで助言したことが退院後の生活に活かされているか把握することは必要であるが困難になりつつある。そこで今回われわれは,家屋調査や退院時のカンファレンスなどでの助言内容を向上させるために,退院前と退院後のADL改善度と退院後のADL自立度と介護保険サービスの利用回数を検討した。

【方法】2011年10月~2015年9月までに退院前後に家屋調査を行なった40例を対象とした。男性19例・女性21例,年齢79±7.9歳,疾患は脳血管疾患23例・運動器疾患12例・その他5例であった。方法はADLの食事・整容・更衣・トイレ・入浴の5項目を「自立」「見守り」「介助」の3段階に評価し,自立している割合を退院前後で算出し比較した。退院後のADLが自立している群(自立群)と介助を要する群(介助群)に分類し,1週間当たりの介護保険サービスの利用回数を比較した。本研究の「自立」とは,患者自らが動作を行え,見守りを要さない状態と定義し,退院前のADLは退院時の「しているADL」を,退院後のADLは退院後の家屋調査で「しているADL」とした。

【結果】退院前後の比較ではADLが自立している割合は食事が退院前80%から退院後82.5%に,整容は67.5%から67.5%に,更衣は55%から60%に,トイレは60%から70%に,入浴は2.5%から30%となり,入浴のみ退院前に比べて退院後の自立している割合が有意に上昇した(p<0.01)。1週間当たりの介護保険サービスの利用回数では,食事が自立群1.8±1.9回に対し介助群2.4±2.1回,整容は1.6±1.8回に対し2.7±2.0回,更衣は1.6±1.9回に対し2.4±1.9回,トイレは1.6±1.8回に対し2.8±2.1回,入浴は0.9±1.2回に対し2.4±2.0回であり,入浴のみ自立群に比べて介助群が有意にサービスの利用回数が多かった(p<0.05)。

【結論】急性期病院から退院前に家屋調査やカンファレンスを行い退院する患者の場合,退院前の食事や整容,更衣,トイレのADLが自立できていない例では退院1ヶ月後も自立できる可能性は低く,退院後の介護保険サービスの利用回数として1週間に2~3回の利用を薦めるのが良いのではないかと考えられた。入浴は退院後に自立できる患者も多く,退院前に介護保険サービスの利用回数について助言する場合は,退院後の入浴動作の自立度を予測して助言する必要があると考えられた。今後は退院前の自立度を改善するために理学療法士が早期から積極的に病棟でのADL動作に介入していくことや退院後のADLや患者の社会的背景なども考慮に入れながら適切な助言を患者・家族や多職種に行っていく必要があると考える。