第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P04

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-04-3] 回復期病棟入棟中より退院後の閉じこもりを防ぐことを目標にアプローチした症例に対する,生活の広がりに着目した退院後訪問調査

遠藤美紀, 今田健 (社会福祉法人こうほうえん錦海リハビリテーション病院)

Keywords:閉じこもり, 生活の広がり, 退院後訪問

【はじめに,目的】

退院後早期には活動量および日常生活活動(以下,ADL)能力が低下しやすいことが報告されており,当院の退院患者においても同様の経験をした。退院後の不活動による身体活動量およびADL能力の低下を危惧していた症例に対し,退院後に定期的な訪問調査を実施した。本調査の目的は,退院後の在宅生活における経時的変化を把握し,回復期病棟入棟中から行える,退院を見据えたアプローチを検討することである。

【方法】

対象は,脳梗塞を発症し当院に80日間入院した後に自宅退院した80歳代の女性であった。退院1,3,6,8,10,12ヵ月後の時点で自宅へ訪問した。入院中の病棟ADLは自立しており,退院時における機能的自立度評価表は運動項目(以下,FIM-m)87/91点,認知項目35/35点であった。本症例は独居であり,病前の生活関連動作(以下,IADL)は自立していたが外出は週1回程度で自宅に閉じこもる傾向であった。IADLの一部が自立した独居生活を送ることで閉じこもりを防ぐことを目標に,退院前訪問による家屋調整,自主練習の定着化と生活指導,介護保険サービスなどの退院調整を行った。退院後訪問においては,FIM-m,老研式活動能力指標およびElderly Status Assessment Set(以下,E-SAS)の指標を用いた。

【結果】

FIM-mは,退院後1ヵ月時点で89点となった。E-SASより,生活のひろがりは1ヵ月32点,3と6ヵ月42点,8ヵ月以降60.5/120点,歩くチカラは1ヵ月11.2秒,3ヵ月9.5秒,6ヵ月11.1秒,8ヵ月以降は9秒台であった。休まず歩ける距離は3ヵ月500~1000m未満,6ヵ月以降100~500m未満,人とのつながりは1ヵ月10点,6ヵ月以降24/30点であり知人宅に行く機会も増えた。IADLは,掃除と買い物はヘルパーを利用し,朝昼食の炊事,洗濯,ゴミ出し等は自立しており,老研式活動能力指標は1ヵ月6点,6ヵ月以降10/13点と変化した。転倒は退院後4ヵ月,7ヵ月の時点であった。

【結論】

ADLは退院1ヵ月後,IADLは6ヵ月後,活動状況は8ヵ月後より定着しており,一定の生活習慣を確立することで運動能力を維持していた。3ヵ月後には徒歩で外出するなど活動範囲が広がりつつあったが,6ヵ月後には外出頻度が減り,歩行能力が低下し転倒も確認された。この時期においても,デイサービス利用や知人宅への外出は維持しており,不活動や閉じこもりを防ぐことが出来ていた。高齢者の閉じこもりは機能低下の出現を高めADL障害を起こしやすいことが報告されている。また,不活動などの生活状態による廃用を予防するには,発症前の生活を把握し対応する必要があるとされており,入院中より発症前の生活や性格を把握したうえで閉じこもりを危惧し,サービスの調整を行ったことが能力維持に繋がったと考える。加えて,本症例はデイサービスや知人宅であれば自主的に外出しており,目的を持った外出の機会を入棟中より提案することで退院後の活動が減少しにくいと考える。