第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本地域理学療法学会 一般演題ポスター
地域P05

Fri. May 27, 2016 4:30 PM - 5:30 PM 第12会場 (産業振興センター 2階 体育実習室)

[P-TK-05-3] 維持期における障がい者の移動能力および日常生活動作能力と地域参加の関係

戸坂友也1, 石原未来2, 小林佳雄1 (1.千葉県千葉リハビリテーションセンターリハビリテーション療法部成人理学療法科, 2.千葉県千葉リハビリテーションセンター地域連携部地域支援室)

Keywords:維持期, 移動能力, 地域参加

【はじめに,目的】

維持期における障がい者の移動能力および日常生活動作能力は,地域参加を達成する上で重要である。しかし,地域への移行期間である障害者支援施設の入所中に獲得される移動能力および日常生活動作能力と,地域参加の達成との関係については明らかではない。本研究は,障害者支援施設の入所時からの移動能力および日常生活動作能力を後方視的に調査し,地域参加の達成群と未達成群の違いについて検討する事を目的とした。

【方法】

対象は2013年4月から2015年3月の間に障害者支援施設に入所し自立訓練を実施した28名(平均年齢:41.8±9.6歳,発症から入所時までの期間:910.6±1044.1日)である。疾患内訳は,脳卒中20名,頭部外傷5名,脊髄損傷1名,下肢切断1名である。本研究では地域参加の達成基準を,公共交通機関を自立歩行で利用できる事と設定した。移動能力評価指標は,移動形態の変化(車椅子,四点杖,T杖,独歩),10m歩行の快適・最大歩行速度,(以下,CWS・MWS),Timed Up and Go test(以下,TUG)を用いた。日常生活動作能力評価指標は,機能的自立度評価法(以下,FIM)の運動・認知項目(以下,FIMmotor・FIMcog)を用いた。各指標の変化は,入所時,3,6,9および12ヵ月時点で観察した。各指標の統計処理は,移動形態の分布の変化はカイ二乗検定,CWS,MWSおよびTUGの比較はKruskal-Wallis検定,FIMmotorおよびFIMcogの比較は,Mann-Whitney検定を用いて行った。有意水準は5%とした。

【結果】

対象者は,達成群16名,未達成群12名に分類された。達成群は未達成群に比べ,CWSは3ヵ月時点で有意に低い値を示し,TUGは入所時,3,6ヵ月時点で有意に低い値を示した。FIMmotorは,達成群は未達成群に比べ,入所時,3,6,9,12ヵ月時点で有意に高い値を示した。移動形態は,未達成群で有意に分布が変化した。

【結論】

達成群と未達成群では,入所時から移動能力およびFIMmotorに違いが観察された。特に,CSWにおいて3ヵ月時点から群間の違いが認められたことは,その後の生活場面でも移動能力の影響が大きいことが考えられる。本研究により,運動機能を反映する移動能力およびFIMmotorが,維持期施設入所者の地域への参加達成に関連する因子であることが示唆された。維持期の身体および認知機能の変化を把握することは,地域への参加達成を予測する上で重要である。本研究で観察された維持期初期の運動機能特性は,障がい者の地域参加を支援していく上で有益な知見である。