[P-TK-14-4] 通所リハビリテーション利用者の利他的行動意欲が心理機能に及ぼす影響
キーワード:通所リハビリテーション, 利他的行動意欲, 心理機能
【はじめに】利他的行動とは,他者のためになろうと内発的に動機づけられた行動であり(Eisenberg, 1989),高齢者の若者に対する利他的行動は生きがいの獲得や主観的幸福感の向上に影響を及ぼす(Kruse, 2012)。また,自己にとって楽しい活動よりも利他的活動の方が永続性のある満足が得られる(Peterson, 2006)。しかし,高齢者の利他的行動に対する意欲には個人差があり(田淵,2010),利他的行動の効果に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究の目的は,小学生との交流における利他的行動を通して,利他的行動意欲が利他的行動後の心理機能に及ぼす影響を調査することとした。
【方法】対象は調査日の当院通所リハビリテーション利用者16名(平均年齢79±8.1歳,男性6名,女性10名)である。調査日の全利用者は28名であり,重度の認知機能の低下,精神疾患の既往,重度の視覚障害や聴覚障害により評価が実施困難,研究の同意が得られなかったものは除外した。介入は利他的行動として近隣の小学3年生と約40分の交流を実施した。交流内容は自己紹介,質疑応答,小学生の車いす体験への協力であり,全ての利用者が小学生と対話できるプログラムであった。また,利用者には,交流の目的が疾患のある高齢者がどの様な生活を過ごしているかを小学生に知ってもらうことであることを説明し,可能な範囲で伝えてもらうことを依頼した。評価項目は対象者の基本属性として年齢,性別,HDS-R,Barthel index,Frenchay Activities Indexをカルテ診療録より聴取した。介入前の評価は利他的行動意欲の評価を短縮版Generativity尺度で用いた。介入後の評価は,利他的行動の成果を援助成果測定尺度(愛他的精神の高揚,人間関係の広がり,人生への意欲喚起の下位尺度で構成),利他的行動の効果認識を「自分の活動が小学生の役に立ったと実感した」と定義し,その程度を交流の疲労の程度と合わせて質問紙(8件法)で用いた。統計解析は,介入前の全対象者の短縮版Generativity尺度得点の中央値を基準に高利他意欲群(8名),低利他意欲群(8名)の2群に振り分け,2群間の基本属性と介入後の各評価項目の比較にはMann-Whitney U検定,χ2検定を用いた。全ての分析において有意水準は5%未満とした。
【結果】基本属性において2群間で有意差は認められなかった。介入後の2群間の比較では,愛他的精神の高揚(p<0.05),人間関係の広がり(p<0.05),人生への意欲喚起(p<0.05),利他的行動の効果認識(p<0.01),交流の疲労度(p<0.01)において有意差が認められた。
【結論】通所リハビリテーション利用者の利他的行動は,利他的行動意欲が高いほど心理機能への影響が大きいことが明らかとなった。高齢者の利他的行動意欲は若い世代と接する機会を持つことで促進されることから,維持期リハビリテーションにおいて高齢者が若者と接する機会や利他的行動を体験できる新たなマネージメントが必要である。
【方法】対象は調査日の当院通所リハビリテーション利用者16名(平均年齢79±8.1歳,男性6名,女性10名)である。調査日の全利用者は28名であり,重度の認知機能の低下,精神疾患の既往,重度の視覚障害や聴覚障害により評価が実施困難,研究の同意が得られなかったものは除外した。介入は利他的行動として近隣の小学3年生と約40分の交流を実施した。交流内容は自己紹介,質疑応答,小学生の車いす体験への協力であり,全ての利用者が小学生と対話できるプログラムであった。また,利用者には,交流の目的が疾患のある高齢者がどの様な生活を過ごしているかを小学生に知ってもらうことであることを説明し,可能な範囲で伝えてもらうことを依頼した。評価項目は対象者の基本属性として年齢,性別,HDS-R,Barthel index,Frenchay Activities Indexをカルテ診療録より聴取した。介入前の評価は利他的行動意欲の評価を短縮版Generativity尺度で用いた。介入後の評価は,利他的行動の成果を援助成果測定尺度(愛他的精神の高揚,人間関係の広がり,人生への意欲喚起の下位尺度で構成),利他的行動の効果認識を「自分の活動が小学生の役に立ったと実感した」と定義し,その程度を交流の疲労の程度と合わせて質問紙(8件法)で用いた。統計解析は,介入前の全対象者の短縮版Generativity尺度得点の中央値を基準に高利他意欲群(8名),低利他意欲群(8名)の2群に振り分け,2群間の基本属性と介入後の各評価項目の比較にはMann-Whitney U検定,χ2検定を用いた。全ての分析において有意水準は5%未満とした。
【結果】基本属性において2群間で有意差は認められなかった。介入後の2群間の比較では,愛他的精神の高揚(p<0.05),人間関係の広がり(p<0.05),人生への意欲喚起(p<0.05),利他的行動の効果認識(p<0.01),交流の疲労度(p<0.01)において有意差が認められた。
【結論】通所リハビリテーション利用者の利他的行動は,利他的行動意欲が高いほど心理機能への影響が大きいことが明らかとなった。高齢者の利他的行動意欲は若い世代と接する機会を持つことで促進されることから,維持期リハビリテーションにおいて高齢者が若者と接する機会や利他的行動を体験できる新たなマネージメントが必要である。