第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P01

Fri. May 27, 2016 11:50 AM - 12:50 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-YB-01-2] 高齢骨折患者の転倒恐怖感に対する身体機能低下およびうつ症状の影響

篠原淳1,2, 石山大介2, 西尾尚倫2, 照屋康治2, 山本裕子2, 木村鷹介2, 石橋嘉津雄3, 山田実2 (1.医療法人社団緑眞会世田谷下田総合病院リハビリテーション科, 2.筑波大学大学院人間総合科学研究科, 3.医療法人社団緑眞会世田谷下田総合病院整形外科)

Keywords:高齢者, 骨折, 転倒恐怖感

【はじめに,目的】高齢者における転倒恐怖感は,身体活動量を低下させる要因の一つとされている。転倒恐怖感は転倒経験により強まり,転倒を起因とした高齢骨折患者はより転倒恐怖感が高いことが推察される。したがって,高齢骨折患者の転倒恐怖感を軽減させることは重要と考えられる。転倒恐怖感に影響を与える因子に身体機能低下やうつ症状が挙げられるが,高齢骨折患者を対象に双方の因子を考慮して検討された報告は少ない。そこで本研究の目的は,高齢骨折患者の転倒恐怖感に対する身体機能低下とうつ症状の影響を明らかにすることとした。

【方法】デザインは横断研究とした。対象は,2014年11月~2015年10月に当院に入院加療した65歳以上の骨折患者49例(平均年齢78.5±7.3歳,女性77.6%)であった。骨折部位は,上肢17例(34.7%),体幹6例(12.2%),下肢26例(53.1%)であった。除外基準は,運動療法の禁忌事項に該当,中枢神経疾患,認知症,それに転倒以外の原因で骨折した症例とした。調査項目は,転倒恐怖感,身体機能,うつ症状とした。転倒恐怖感は,「転倒に対して恐怖心はありますか」という質問に対して,「有り」と答えた場合を転倒恐怖感有りと定義した。身体機能は,Timed up and go test(TUG)を測定し,13.5秒以上を身体機能低下と定義した。うつ症状は,Geriatric Depression Scale(GDS)を用いて評価し,5点以上をうつ傾向と定義した。統計解析としては,転倒恐怖感を従属変数に,身体機能低下の有無とうつ症状の有無の組合せによって4カテゴリー化したものを独立変数に,さらに年齢,性別,それに骨折部位を調整変数に投入したロジスティック回帰分析を行った。

【結果】転倒恐怖感を有する症例は31例(63.3%)であった。身体機能低下を認めた症例は33例(67.3%)であり,うつ傾向を認めた症例は,12例(24.5%)であった。身体機能低下とうつ傾向の双方を有する症例は8例(16.3%),双方とも有さない症例は12例(24.5%)であった。ロジスティック回帰分析の結果,身体機能低下とうつ傾向の双方を有した場合にのみ,双方を有さない場合に対して有意に転倒恐怖感を有するリスクが高くなり,調整済みオッズ比は14.46(P=0.044)となった。

【結論】高齢骨折患者は,身体機能低下とうつ傾向の双方が合併することで,転倒恐怖感が高くなるものと考えられた。したがって,高齢骨折患者の転倒恐怖感を軽減させるには,身体機能とうつ症状の両側面を考慮する必要性が示唆された。