[P-YB-02-1] 食道がん手術後の身体機能回復に対する運動セルフエフィカシーの影響
Keywords:食道がん, 運動セルフエフィカシー, 身体機能
【はじめに,目的】
食道がん手術では多大な侵襲により術後合併症や身体機能回復に難渋する症例をよく経験する。また,食道がん患者は,高齢,喫煙による呼吸機能低下,通過障害による低栄養や術前化学療法による免疫機能低下を認めるなど術前よりリスクが高い症例が多い。そのため,術前より呼吸機能や身体機能の向上を目的とした理学療法を実施することが重要である。しかし,術前に継続的に個別の理学療法を提供することは入院期間短縮が求められる現状では困難であり,自主トレーニングが中心となる。運動の実施率や定着率を高めるためには,単なる運動指導だけでなく,行動変容に着目した介入が効果的である。近年,行動変容や運動の習慣化に運動セルフエフィカシー(運動SE)が関連していることが報告されている。運動の習慣化は術後の身体機能回復に好影響を与えることが期待されるが,食道がん患者において運動SEが身体機能回復に与える影響については明らかでない。本研究の目的は,食道がん患者の術前運動SEが身体機能回復に与える影響を検証することである。
【方法】
対象は食道がんに対して食道切除再建術を施行された患者96名(男性82名,女性14名,平均年齢65.9±7.1歳)。評価項目は,運動SEの指標として運動SE尺度,身体機能の指標として握力,膝伸展筋力,6分間歩行テスト(6MWT),属性として年齢,性別,Brinkman Index(BI),術前化学療法の有無,呼吸器疾患既往の有無,手術時間,術中出血量,術式(開胸・開腹操作の有無)とした。運動SEは術前理学療法開始時に,身体機能は術前理学療法開始時および退院時に測定し,その変化率を算出した。
統計解析は,単回帰分析にて,術前運動SEと身体機能の変化率の関連を確認した後,従属変数に関連を認めた身体機能の変化率,独立変数に術前運動SEおよび属性の変数を投入した重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
単回帰分析の結果,術前運動SEと6MWTの変化率に有意差を認めた(p=0.02)。また,重回帰分析の結果,術前運動SE(標準化回帰係数0.24,p=0.02),年齢(0.04,p=0.70),性別(-0.05,p=0.62),BI(-0.20,p=0.07),術前化学療法の有無(-0.19,p=0.07),呼吸器疾患既往の有無(-0.12,p=0.24),手術時間(-0.11,p=0.34),術中出血量(-0.08,p=0.53),開胸・開腹操作の有無(-0.02,p=0.86)であり(R2=0.18),術前運動SEに有意差を認めた。
【結論】
食道がん患者の術前運動SEが術後の身体機能回復に影響を与える因子として挙げられたことから,食道がんの手術が予定されている患者に対しては,術前から運動SEを考慮したアプローチを行うことにより運動の実施率・定着率の向上を図ることが,術後の身体機能回復につながると考えられた。
食道がん手術では多大な侵襲により術後合併症や身体機能回復に難渋する症例をよく経験する。また,食道がん患者は,高齢,喫煙による呼吸機能低下,通過障害による低栄養や術前化学療法による免疫機能低下を認めるなど術前よりリスクが高い症例が多い。そのため,術前より呼吸機能や身体機能の向上を目的とした理学療法を実施することが重要である。しかし,術前に継続的に個別の理学療法を提供することは入院期間短縮が求められる現状では困難であり,自主トレーニングが中心となる。運動の実施率や定着率を高めるためには,単なる運動指導だけでなく,行動変容に着目した介入が効果的である。近年,行動変容や運動の習慣化に運動セルフエフィカシー(運動SE)が関連していることが報告されている。運動の習慣化は術後の身体機能回復に好影響を与えることが期待されるが,食道がん患者において運動SEが身体機能回復に与える影響については明らかでない。本研究の目的は,食道がん患者の術前運動SEが身体機能回復に与える影響を検証することである。
【方法】
対象は食道がんに対して食道切除再建術を施行された患者96名(男性82名,女性14名,平均年齢65.9±7.1歳)。評価項目は,運動SEの指標として運動SE尺度,身体機能の指標として握力,膝伸展筋力,6分間歩行テスト(6MWT),属性として年齢,性別,Brinkman Index(BI),術前化学療法の有無,呼吸器疾患既往の有無,手術時間,術中出血量,術式(開胸・開腹操作の有無)とした。運動SEは術前理学療法開始時に,身体機能は術前理学療法開始時および退院時に測定し,その変化率を算出した。
統計解析は,単回帰分析にて,術前運動SEと身体機能の変化率の関連を確認した後,従属変数に関連を認めた身体機能の変化率,独立変数に術前運動SEおよび属性の変数を投入した重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】
単回帰分析の結果,術前運動SEと6MWTの変化率に有意差を認めた(p=0.02)。また,重回帰分析の結果,術前運動SE(標準化回帰係数0.24,p=0.02),年齢(0.04,p=0.70),性別(-0.05,p=0.62),BI(-0.20,p=0.07),術前化学療法の有無(-0.19,p=0.07),呼吸器疾患既往の有無(-0.12,p=0.24),手術時間(-0.11,p=0.34),術中出血量(-0.08,p=0.53),開胸・開腹操作の有無(-0.02,p=0.86)であり(R2=0.18),術前運動SEに有意差を認めた。
【結論】
食道がん患者の術前運動SEが術後の身体機能回復に影響を与える因子として挙げられたことから,食道がんの手術が予定されている患者に対しては,術前から運動SEを考慮したアプローチを行うことにより運動の実施率・定着率の向上を図ることが,術後の身体機能回復につながると考えられた。