第51回日本理学療法学術大会

講演情報

一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P09

2016年5月28日(土) 10:30 〜 11:30 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-YB-09-4] サルコペニアの病期の違いにより運動耐容能に関連する因子は異なるか?

野々山忠芳1, 久保田雅史1, 鯉江祐介1, 安竹正樹1, 松尾英明1, 成瀬廣亮1, 渡部雄大1, 安竹千秋1, 嶋田誠一郎1, 中田透2, 佐藤佳州2, 山村修3 (1.福井大学医学部附属病院リハビリテーション部, 2.Panasonic株式会社先端研究本部知能研究室, 3.福井大学医学部附属病院地域医療推進講座)

キーワード:サルコペニア, プレ・サルコペニア, 運動耐容能

【はじめに,目的】サルコペニアは筋肉量減少に筋力低下や身体機能低下を伴う状態であり,運動耐容能の低下を引き起こす。サルコペニアの病期の進行により運動耐容能はさらに低下するが,サルコペニアの病期の違いが運動耐容能と他の身体機能,筋肉量との関係にどのような影響を及ぼすかは明らかになっていない。そこで,サルコペニアと,筋肉量減少のみのプレ・サルコペニアにおける運動耐容能に関連する因子を検索し比較することを目的とし,検討を行った。

【方法】対象は,新聞広告やデイサービスなどへの被検者募集に対して応募のあった,歩行可能な地域在住高齢者107例のうち,下記のすべての評価が実施可能であった80例(男性35例,女性45例,平均年齢70.9±8.2歳)とした。評価項目は,年齢,身長,体重,握力,膝伸展筋力,歩行速度,姿勢安定度評価指標(Index of postural stability:以下IPS),生体電気インピーダンス法による全身骨格筋量,全身骨格筋量と水分量の分布をもとに算出した四肢骨格筋量(Skeletal muscle mass index:以下SMI)とした。また,運動耐容能の評価として6分間歩行試験を実施し,歩行距離を測定した。サルコペニアの判定は,Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によるサルコペニア診断のためのアルゴリズムに基づき,歩行速度:0.8m/s以下または握力:男性26kg,女性18kg未満,SMI:男性7.0kg/m2 女性5.7kg/m2未満を満たした者とした。また,SMIのみ低下し,握力や歩行速度の低下のない者をプレ・サルコペニアと判定し,それぞれサルコペニア群(S群),プレ・サルコペニア群(PS群)として分類した。統計学的解析として,2群における6分間歩行距離と各評価項目との相関は,Pearsonの相関係数,Spearmanの順位相関係数を用いた。次に,有意な相関関係を認めた項目を独立変数とし,6分間歩行距離を従属変数としてStepwise法による重回帰分析を行った。統計ソフトはSPSS 22.0 Jを用い,有意水準は5%とした。



【結果】PS群60例,S群20例と判定され,全対象者が2群に分類された。6分間歩行距離と有意な相関関係を認めたのは,PS群で年齢(r=0.48),握力(r=0.31),膝伸展筋力(r=0.66),歩行速度(r=0.76),IPS(r=0.47),全身骨格筋量(r=0.28)であり,S群で年齢(r=0.46),膝伸展筋力(r=0.64),歩行速度(r=0.90),IPS(r=0.49),全身骨格筋量(r=0.65)であった。また,重回帰分析によって選択された要因は,PS群で年齢(β=-0.195),膝伸展筋力(β=0.302),歩行速度(β=0.543)であり,S群では歩行速度(β=0.897)のみであった。



【結論】運動耐容能と関連する因子に関して,プレ・サルコペニアでは幾つかの因子が関連していたが,サルコペニアでは歩行速度のみが強く関連していた。サルコペニアの病期により運動耐容能と関連する因子は異なる可能性があり,運動耐容能向上のための治療戦略は異なるかもしれない。