[P-YB-13-5] 当院回復期リハビリテーション病棟における転倒予防への取り組み
歩行自立テストの有用性
Keywords:転倒予防, Berg Balance Scale, 歩行自立度
【はじめに,目的】
我々は,第33回関東甲信越ブロック理学療法士学会において,Berg Balance Scale(以下BBS)と当院独自の歩行自立テストを併せて行うことは,歩行自立の指標となり得ると報告した。しかし,課題としてBBSについては評価に時間がかかること,歩行自立テストについては,高次脳機能障害の影響を評価する項目としては不十分であることが挙がった。そのため,今回は更なる転倒率の減少に向け,より現実に即した評価項目となるよう歩行自立テストを一部改訂しテストの有用性を検討したので以下に報告する。
【方法】
対象は平成27年1月から平成27年8月までの当院回復期病棟の入院患者のうち,担当理学療法士が「介助者なしに歩行が可能」と判断し,主治医から病棟内歩行の自立を許可された患者60名(男性26名女性34名,年齢72.0±11.7歳,運動器疾患25名,脳血管疾患35名)とした。病棟内歩行自立を許可された日から3日間を評価期間としBBSおよび歩行自立テストを評価し,退院日までの転倒の有無を調べた。なおBBSについては先行研究に基づき,全14項目のうち8項目(移乗・閉脚立位・リーチ動作・振り向き・360度回転・段差踏み換え・継足立位・片脚立位)を測定項目とした。また,歩行自立テストは前報をもとに,二重課題項目を加え独自に作成した。評価は病棟内(病室,廊下,トイレを含む)で実施し,10項目各々について自立レベルの場合を1点とし,非自立レベルを0点として合計点を求めた。加えて,平成27年10月に評価に携わった理学療法士14名にアンケート調査を実施した。
【結果】
転倒者は1名,転倒者率は1.7%であった。また,BBSと歩行自立テストとの相関(r=0.57)を認めた。加えてアンケート調査から,85.7%が「BBSの評価結果がその後の治療に役立った」「歩行自立テストの評価結果がその後の治療に役立った」,また,64.3%が「BBSの評価は楽だった」と回答した。
【結論】
歩行自立テストは独自に作成されたものであり,評価ツールとしての信頼性・妥当性に欠けるが,BBSとの相関(r=0.57)が認められたことから,身体機能を含むADL動作能力を評価する有用な指標となり得ると考える。また,転倒率は先行研究(15~20%)を大幅に下回っており,今回の研究自体に転倒予防の効果があったと示唆される。アンケート結果からも,「評価結果がその後の治療に役立った」という意見が大半であった。このことからも,担当療法士と患者様が病棟生活での問題点を共有することとなり,さらなる生活機能の向上につながった可能性がある。加えて今回BBSを先行研究に基づき8項目の評価としたことで,評価時間の短縮が可能となり,病棟歩行自立判定の評価指標として今後取り入れやすくなると思われる。しかし,8項目での自立のカットオフ値は報告されていない。そのため今後の課題として,症例数を増やし,カットオフ値を求めたいと考える。
我々は,第33回関東甲信越ブロック理学療法士学会において,Berg Balance Scale(以下BBS)と当院独自の歩行自立テストを併せて行うことは,歩行自立の指標となり得ると報告した。しかし,課題としてBBSについては評価に時間がかかること,歩行自立テストについては,高次脳機能障害の影響を評価する項目としては不十分であることが挙がった。そのため,今回は更なる転倒率の減少に向け,より現実に即した評価項目となるよう歩行自立テストを一部改訂しテストの有用性を検討したので以下に報告する。
【方法】
対象は平成27年1月から平成27年8月までの当院回復期病棟の入院患者のうち,担当理学療法士が「介助者なしに歩行が可能」と判断し,主治医から病棟内歩行の自立を許可された患者60名(男性26名女性34名,年齢72.0±11.7歳,運動器疾患25名,脳血管疾患35名)とした。病棟内歩行自立を許可された日から3日間を評価期間としBBSおよび歩行自立テストを評価し,退院日までの転倒の有無を調べた。なおBBSについては先行研究に基づき,全14項目のうち8項目(移乗・閉脚立位・リーチ動作・振り向き・360度回転・段差踏み換え・継足立位・片脚立位)を測定項目とした。また,歩行自立テストは前報をもとに,二重課題項目を加え独自に作成した。評価は病棟内(病室,廊下,トイレを含む)で実施し,10項目各々について自立レベルの場合を1点とし,非自立レベルを0点として合計点を求めた。加えて,平成27年10月に評価に携わった理学療法士14名にアンケート調査を実施した。
【結果】
転倒者は1名,転倒者率は1.7%であった。また,BBSと歩行自立テストとの相関(r=0.57)を認めた。加えてアンケート調査から,85.7%が「BBSの評価結果がその後の治療に役立った」「歩行自立テストの評価結果がその後の治療に役立った」,また,64.3%が「BBSの評価は楽だった」と回答した。
【結論】
歩行自立テストは独自に作成されたものであり,評価ツールとしての信頼性・妥当性に欠けるが,BBSとの相関(r=0.57)が認められたことから,身体機能を含むADL動作能力を評価する有用な指標となり得ると考える。また,転倒率は先行研究(15~20%)を大幅に下回っており,今回の研究自体に転倒予防の効果があったと示唆される。アンケート結果からも,「評価結果がその後の治療に役立った」という意見が大半であった。このことからも,担当療法士と患者様が病棟生活での問題点を共有することとなり,さらなる生活機能の向上につながった可能性がある。加えて今回BBSを先行研究に基づき8項目の評価としたことで,評価時間の短縮が可能となり,病棟歩行自立判定の評価指標として今後取り入れやすくなると思われる。しかし,8項目での自立のカットオフ値は報告されていない。そのため今後の課題として,症例数を増やし,カットオフ値を求めたいと考える。