[P-YB-18-1] 地域在住高齢者に対する運動機能の判定方法に関する妥当性の検証
キーワード:運動機能テスト, 生活機能, 妥当性
【はじめに,目的】
高齢者の生活機能低下を予測する指標として,各種の運動機能テストが臨床的に用いられている。しかし,運動機能テストには,基準値やカットオフ値といった明確な判定基準が定まっていないことが課題である。本研究は,地域在住高齢者に対する運動機能テストの判定方法を開発し,その妥当性について検証することを目的とした。
【方法】
対象は,要介護認定を受けていない地域在住高齢者91名(男性14名,女性77名),平均年齢71.2±5.3歳であった。対象者には,先行研究で生活機能低下の予測指標として有用性が示されている,快適条件歩行速度,最速条件歩行速度,Timed Up and Go test,5回チェアスタンドテスト,握力,の5種目の運動機能テストを実施した。各運動機能テストの測定値は,先行研究(Kamide, et al., 2011;安藤,他. 2013;Nakazono, et al., 2014;Kamide, et al., 2015)で報告されている,年齢と性別が考慮された各々の基準値とその標準偏差から,正規分布に基づく累積分布関数を用いて標準化した。すなわち,対象者の各運動機能テストの測定値を,全て0から1までの数値に統計学的に標準化する処理をした。5種目の運動機能テストの測定値をそれぞれ標準化処理した後,5種目の平均値を算出して各運動機能テストの結果を統合,運動機能の判定値(以下,運動機能スコア)とした。つまり,運動機能スコアも0~1で示され,数値が大きいほど総合的に運動機能が高いことを示す。また,生活機能の評価として老研式活動能力指標(老研式)を用い,老研式が満点の場合を生活機能低下無し,それ以外を生活機能低下有りと定義した。運動機能スコアの妥当性を検証するため,運動機能スコアと各運動機能テストの測定値について,生活機能低下の有無に対する識別能力をt検定および受信者動作特性曲線(ROC曲線)にて検証した。
【結果】
39名(42.9%)に生活機能低下を認めた。生活機能低下を有する高齢者は生活機能低下の無い高齢者と比較して,有意に運動機能スコアが低かった(p<0.01)。一方,年齢と各運動機能テストの測定値には,生活機能低下の有無で有意差は認められなかった。運動機能スコアの生活機能低下に関するROC曲線の曲線下面積(AUC)は0.7(95%CI:0.5-0.8)で,感度79.5%,特異度50.0%であった。各運動機能テストの測定値のAUCは0.5~0.6であり,運動機能スコアのAUCが最も高かった。
【結論】
本研究で開発した運動機能テストの判定方法である運動機能スコアは,地域在住高齢者の生活機能低下の識別能力に関して妥当性を有すると考えられた。運動機能スコアは,介護予防の現場などで高齢者の運動機能の判定方法として,実践的な活用も可能であると考えられた。
高齢者の生活機能低下を予測する指標として,各種の運動機能テストが臨床的に用いられている。しかし,運動機能テストには,基準値やカットオフ値といった明確な判定基準が定まっていないことが課題である。本研究は,地域在住高齢者に対する運動機能テストの判定方法を開発し,その妥当性について検証することを目的とした。
【方法】
対象は,要介護認定を受けていない地域在住高齢者91名(男性14名,女性77名),平均年齢71.2±5.3歳であった。対象者には,先行研究で生活機能低下の予測指標として有用性が示されている,快適条件歩行速度,最速条件歩行速度,Timed Up and Go test,5回チェアスタンドテスト,握力,の5種目の運動機能テストを実施した。各運動機能テストの測定値は,先行研究(Kamide, et al., 2011;安藤,他. 2013;Nakazono, et al., 2014;Kamide, et al., 2015)で報告されている,年齢と性別が考慮された各々の基準値とその標準偏差から,正規分布に基づく累積分布関数を用いて標準化した。すなわち,対象者の各運動機能テストの測定値を,全て0から1までの数値に統計学的に標準化する処理をした。5種目の運動機能テストの測定値をそれぞれ標準化処理した後,5種目の平均値を算出して各運動機能テストの結果を統合,運動機能の判定値(以下,運動機能スコア)とした。つまり,運動機能スコアも0~1で示され,数値が大きいほど総合的に運動機能が高いことを示す。また,生活機能の評価として老研式活動能力指標(老研式)を用い,老研式が満点の場合を生活機能低下無し,それ以外を生活機能低下有りと定義した。運動機能スコアの妥当性を検証するため,運動機能スコアと各運動機能テストの測定値について,生活機能低下の有無に対する識別能力をt検定および受信者動作特性曲線(ROC曲線)にて検証した。
【結果】
39名(42.9%)に生活機能低下を認めた。生活機能低下を有する高齢者は生活機能低下の無い高齢者と比較して,有意に運動機能スコアが低かった(p<0.01)。一方,年齢と各運動機能テストの測定値には,生活機能低下の有無で有意差は認められなかった。運動機能スコアの生活機能低下に関するROC曲線の曲線下面積(AUC)は0.7(95%CI:0.5-0.8)で,感度79.5%,特異度50.0%であった。各運動機能テストの測定値のAUCは0.5~0.6であり,運動機能スコアのAUCが最も高かった。
【結論】
本研究で開発した運動機能テストの判定方法である運動機能スコアは,地域在住高齢者の生活機能低下の識別能力に関して妥当性を有すると考えられた。運動機能スコアは,介護予防の現場などで高齢者の運動機能の判定方法として,実践的な活用も可能であると考えられた。