第51回日本理学療法学術大会

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一般演題ポスター

日本予防理学療法学会 一般演題ポスター
予防P18

Sun. May 29, 2016 11:10 AM - 12:10 PM 第11会場 (産業振興センター 2階 セミナールームA)

[P-YB-18-2] 尿失禁の改善が歩行機能に及ぼす影響

バイオフィードバックを用いた個別アプローチによる変化

松谷綾子1, 青田絵里1, 服部耕治1, 木村俊夫2 (1.甲南女子大学看護リハビリテーション学部理学療法学科, 2.市立芦屋病院産婦人科)

Keywords:尿失禁, 骨盤底筋トレーニング, 歩行機能

【はじめに,目的】

尿失禁は日常生活に支障をきたす症状であり,趣味・レジャー等の外出活動に影響があると報告されている。高齢者は,外出活動を通して身体運動を行うことが多いため,尿失禁による外出活動の制限は,日常生活での運動量減少につながり,その結果,歩行などの運動機能を低下させると考えられる。先行研究では歩行能力と転倒の関係性は,Timed Up & Go Test(TUG)や歩行速度と外出頻度,転倒,運動習慣に有意な関係を認めている。したがって,外出活動を制限する一因子である尿失禁の改善には,歩行機能低下や転倒予防につながるとの想定から,積極的に介入すべきと考えられる。今回我々は,尿失禁を持つ者に対して筋電図バイオフィードバックを用いた骨盤底筋トレーニングを個別に行い,尿失禁改善が歩行機能に及ぼす影響について調査した。

【方法】

対象は,尿失禁を呈する女性8名である。研究期間は2013年11月~2015年7月であった。評価指標は,尿失禁の実態把握にICIQ-SF(International Consultation on Incontinence Questionnaire-Short Form日本語版)及び,IIQ-7(Incontinence Impact Questionnaire Short Form)を用いた。日常生活での運動量の把握には,1週間の平均外出日数を用いた。歩行機能の指標は,歩行速度とTUG(Timed Up & Go)を測定した。骨盤底筋機能は,筋電図バイオフィードバック機器(Myotrac3 Infiniti System,Thought Technology社製)を用いて,最大収縮・10秒間持続収縮・20秒間持続収縮の筋活動を測定した。2週間ごとに個別の骨盤底筋トレーニングセッションを実施し,各セッション間は自主練習を実施させた。1か月ごと6か月間の結果を一元配置分散分析,およびWilcoxonの符号付順位検定を用いて分析した。有意水準は5%とした。

【結果】

ICIQ-SFは,1か月後から有意に減少し,改善した状態が6か月後まで維持された(開始時:11.00±3.27点,1か月後:6.14±5.01点,6か月後:5.14±4.06点)。IIQ-7は,開始時と比して5か月後に有意な減少を示した(開始時4.86±3.93点,5か月後1.57±2.30点)。骨盤底筋活動は,最大収縮,10秒間持続収縮,20秒間持続収縮全てが増加傾向だが,有意な増加ではなかった。10m歩行速度は速くなる傾向を示したが,有意な変化は見られなかった(開始時5.71±0.58秒,6か月後5.30±0.82秒)。TUGは,1か月後と6か月後の比較で有意に速くなった(開始時6.48±0.67秒,6か月後5.49±0.43秒)。

【結論】

筋電図バイオフィードバックを用いた骨盤底筋トレーニングで,開始後1か月後より尿失禁症状の改善を示したが,骨盤底筋の筋活動の有意な増加を認めなかった。一方,歩行において直線的な動きの10m歩行よりもTUGに改善が見られた。これは失禁状況改善により立ち座り及び方向転換動作が円滑になり,運動時間が短縮したと考えられる。高齢者の歩行機能に関与する要因として失禁状況を考慮する必要性が示された。