[P-YB-20-2] 理学療法士の主観的な転倒予測は患者の退院後の転倒を予測できるか
~回復期リハビリテーション病棟退院患者での検討~
Keywords:転倒予測, 主観的, VAS
【はじめに,目的】在宅での転倒要因は身体機能や認知機能の低下だけでなく住環境など多岐に渡るとされている。回復期リハビリテーション病棟である当院では,パフォーマンス評価の転倒予測カットオフ値などの客観的指標を参考に,住環境などの要因をふまえて担当理学療法士(以下,PT)が主観的に転倒リスクの高さを予測(以下,主観的転倒予測)し転倒予防策を行う。しかし,この主観的転倒予測は退院後の転倒を正確に予測できているかは明らかでないため,今回調査することにした。
【方法】対象は,2015年1~4月に当院より自宅退院し,自宅内歩行が軽介助~自立予定の68名のうち,退院後調査ができた56名(平均年齢77.3±9.1歳,男性19名/女性37名,脳血管疾患21名/運動器疾患32名/廃用症候群3名)とした。調査は退院時と退院2ヶ月後に実施した。退院時調査では,担当PTの主観的転倒予測(転倒リスクの高さ,最も転倒リスクの高い場所・動作),転倒予測場所・動作への転倒予防策(介助指導および環境調整)の実施の有無を調査した。主観的転倒予測の評価は,松田らの「臨床判断による転倒予測」の方法を参考に,Visual Analogue Scale(以下,VAS)を使用し0mmを「全く転倒の危険がない」,100mmを「非常に転倒の危険がある」とした。退院2ヶ月後調査は,電話調査法にて転倒回数と転倒状況(場所・動作)を調査した。統計学的分析はエクセル統計を使用し,退院時調査のVAS50mm以上をVAS高値群,50mm未満をVAS低値群とし2群間の転倒率をχ2検定にて比較した(有意水準は5%未満)。原因分析のため,実際の転倒状況と予測の一致率(転倒予測一致率),転倒予防策実施箇所での転倒率,想定外の場所や補助具の不使用による転倒率(想定外転倒率)を算出した。
【結果】転倒率は31.3%/17.5%(VAS高値群/VAS低値群)で有意差を認めなかった。転倒者の内,転倒予測一致率は0%/12.5%,転倒予防策実施場所での転倒率は11%/0%,想定外転倒率は58%/50%だった。
【結論】2群間で転倒率に有意な差は認められないことから,PTの主観的予後予測のみでは退院後の転倒を正確に予測することは困難だと考えた。転倒予防策実施箇所での転倒率は両群共に低値であったことから,予測の範囲内での転倒予防策は効果的だったと考えた。しかし,想定外転倒率が両群共に高値であることから,想定外での転倒が多いことが転倒予測一致率を低くし,予後予測を困難にしたと考えた。想定外の転倒が多かった理由は退院時のPTの予測と実際の患者の行動に差があったためと考えられ,退院後の行動を正確に予測することで想定外の転倒は減少し,転倒予防ができると考えた。杉原らは身体能力認識の誤差が転倒に影響を及ぼすとしており,対象者とPTの身体能力の認識の差が実際の行動を予測困難にしたと考えられる。今後,身体能力の認識の差の原因を明らかにすることで転倒率の低下につなげたい。
【方法】対象は,2015年1~4月に当院より自宅退院し,自宅内歩行が軽介助~自立予定の68名のうち,退院後調査ができた56名(平均年齢77.3±9.1歳,男性19名/女性37名,脳血管疾患21名/運動器疾患32名/廃用症候群3名)とした。調査は退院時と退院2ヶ月後に実施した。退院時調査では,担当PTの主観的転倒予測(転倒リスクの高さ,最も転倒リスクの高い場所・動作),転倒予測場所・動作への転倒予防策(介助指導および環境調整)の実施の有無を調査した。主観的転倒予測の評価は,松田らの「臨床判断による転倒予測」の方法を参考に,Visual Analogue Scale(以下,VAS)を使用し0mmを「全く転倒の危険がない」,100mmを「非常に転倒の危険がある」とした。退院2ヶ月後調査は,電話調査法にて転倒回数と転倒状況(場所・動作)を調査した。統計学的分析はエクセル統計を使用し,退院時調査のVAS50mm以上をVAS高値群,50mm未満をVAS低値群とし2群間の転倒率をχ2検定にて比較した(有意水準は5%未満)。原因分析のため,実際の転倒状況と予測の一致率(転倒予測一致率),転倒予防策実施箇所での転倒率,想定外の場所や補助具の不使用による転倒率(想定外転倒率)を算出した。
【結果】転倒率は31.3%/17.5%(VAS高値群/VAS低値群)で有意差を認めなかった。転倒者の内,転倒予測一致率は0%/12.5%,転倒予防策実施場所での転倒率は11%/0%,想定外転倒率は58%/50%だった。
【結論】2群間で転倒率に有意な差は認められないことから,PTの主観的予後予測のみでは退院後の転倒を正確に予測することは困難だと考えた。転倒予防策実施箇所での転倒率は両群共に低値であったことから,予測の範囲内での転倒予防策は効果的だったと考えた。しかし,想定外転倒率が両群共に高値であることから,想定外での転倒が多いことが転倒予測一致率を低くし,予後予測を困難にしたと考えた。想定外の転倒が多かった理由は退院時のPTの予測と実際の患者の行動に差があったためと考えられ,退院後の行動を正確に予測することで想定外の転倒は減少し,転倒予防ができると考えた。杉原らは身体能力認識の誤差が転倒に影響を及ぼすとしており,対象者とPTの身体能力の認識の差が実際の行動を予測困難にしたと考えられる。今後,身体能力の認識の差の原因を明らかにすることで転倒率の低下につなげたい。