The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本神経理学療法学会企画 » シンポジウム

[NV-2] シンポジウム 脳のシステム障害と理学療法

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 2:50 PM A2会場 (幕張メッセ国際会議場 国際会議室)

座長:吉尾 雅春(千里リハビリテーション病院セラピー部)

日本神経理学療法学会企画

[NV-2-1] 病態を捉える視点―視覚情報と運動調節の関係性に着目して―

河島 則天 (国立障害者リハビリテーションセンター研究所)

本シンポジウムのねらいは,脳を一つの『システム』として捉え,どの部分に破綻が生じているのか(病態の背景にあるメカニズム)を理解することで,いかに理学療法を通して身体機能の改善を実現できる可能性があるのかを議論することにあると思われる。システムとは,①複数の要素で構成され,②要素相互が関連し,③時間に沿ったプロセスによって動作する,ということであるから,ここでは脳を,『複数の領域が相互に関わりを持ち,時間系列に沿った情報処理を実行するもの=(システム)』として捉え,高次脳機能障害の代表格である半側空間無視を例に挙げて考えていくことにする。
半側空間無視は,かつては視空間情報の統合に関わる頭頂領域に限局した病態(いわゆる頭頂症候群)であると理解されていたが,現在では視空間性注意に関わる脳の広範な領域からなる神経ネットワークの機能不全によって生じるという考えが主流となっている。『無視』であるから,『見えていない』のではない。見えているけれども反応しない/できないというのが適した表現で,例えば食事の際に左側にある食べ物に手を付けずに残してしまう,あるいは身体の左側を良くぶつける,というような行動がしばしば現れる。一般に,半側空間無視の評価や介入は,理学療法の守備範囲としての認識が薄いように見受けられるが,無視症状の発現(視空間性注意の停滞)はリーチング動作や姿勢調節や歩行運動などにも大きく影響することは,疑う余地なしであろう。
本シンポジウムでは,①課題実施時の姿勢条件(立位か,座位か)によって視覚性注意のレベルが変化する,②閉眼状態で数歩,歩かせると進行方向が非無視空間の方向に大きく偏る,という事象を取り上げる。当日はこれら事象の背景メカニズムを考察するとともに,いかにして停滞機能の底上げ(機能回復)を図れる可能性があるかを考えてみたい。