第52回日本理学療法学術大会

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日本糖尿病理学療法学会 » 口述発表

[O-DM-01] 口述演題(糖尿病)01

2017年5月12日(金) 14:10 〜 15:10 A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:大平 雅美(信州大学医学部保健学科), 座長:林 久恵(星城大学リハビリテーション学部)

日本糖尿病理学療法学会

[O-DM-01-5] 歩行パターンの違いが歩行時足底圧へ及ぼす影響
~糖尿病足病変患者の足関節背屈制限を想定して~

吉田 耕治1, 國安 勝司2, 松本 晋輔3, 岡田 裕3, 笘野 稔3, 河島 隆貴4, 篠永 篤志4, 杉 吉郎4 (1.川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科, 2.川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科, 3.専門学校川崎リハビリテーション学院, 4.川﨑医科大学附属病院リハビリテーションセンター)

キーワード:足底圧, 糖尿病, 歩行パターン

【はじめに,目的】糖尿病により世界では20秒に1つの下肢が切断されているといわれ,その切断の原因の一つとして歩行時の異常足底圧が挙げられている。歩行時足底圧の上昇は足部の変形や軟部組織の損傷を引き起こし,潰瘍の発生・潰瘍治癒遷延に関与している。この足底圧の上昇の原因1つとして足関節背屈可動域制限が挙げられている。理学療法介入としては,その過剰な足底圧の上昇に対して装具療法によって改善を図るとの報告が多い。また,臨床上用いる機会の多い,歩行指導により足底圧を減少させる報告は少ない。そこで,本研究では健常人を対象とし,糖尿病足病変患者と類似した足関節背屈制限を独自に作成した短下肢型装具により設け,歩行パターンを変える指導が足底圧改善に効果的か検討した。

【方法】対象は健常男性22名(平均年齢27.1±3.8歳)とした。課題となる歩行は裸足条件での自由歩行と背屈5°制限を設定した短下肢型装具(以下,足関節背屈制限条件)による4種類の歩行パターン(自由歩行,そろえ型歩行,蹴りだしを抑えた歩行,歩行速度を抑えた歩行)を実施した。足底圧の測定にはfootscan(RSscan社)を用い,立位から3歩目で計測プレートに接地する3-step protocolを4回施行し,その最大値の平均を算出した。解析は,足底部を母趾,第2-5趾,1・2・3・4・5中足指節関節部(以下,MTP),中足部,踵部内側・外側の計10区画に分け,各区画の最大足底圧の平均を算出した。統計処理として歩行5条件間の平均最大足底圧の比較には,一元配置分散分析を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】平均最大足底圧は各MTP部において裸足歩行条件(4趾8.9±2.0N/cm2,5趾5.0±1.9N/cm2)と比較し足関節背屈制限自由歩行条件では(4趾11.9±4.0N/cm2および5趾7.3±2.1N/cm2)の足底圧が有意に上昇した。さらに,足関節背屈制限自由歩行条件(1趾8.4±3.2N/cm2,2趾12.4±3.0N/cm2,3趾12.2±3.0N/cm2,4趾11.9±4.0N/cm2,5趾7.3±2.1N/cm2)に比べ,そろえ型歩行(1趾4.7±1.7N/cm2,2趾5.7±2.0N/cm2,3趾6.8±2.0N/cm2,4趾8.7±2.7N/cm2,5趾5.9±2.1N/cm2)と蹴りだしを抑えた歩行(1趾4.8±2.2N/cm2,2趾7.3±3.4N/cm2,3趾8.6±3.0N/cm2,4趾1.0±3.4N/cm2,5趾5.9±2.2N/cm2)では,全てのMTP部において足底圧が有意に低下し,踵内外側部においては有意な圧変化はみられなかった。

【結論】裸足歩行に比べ,足関節背屈制限が生じると,前足部外側にあたる4趾・5趾MTP部において足底圧が有意に上昇する結果となった。また,同背屈制限条件下にて,そろえ型歩行,蹴りだしを抑えた歩行介入により同部位の足底圧が有意に低下する結果となった。この結果より,足関節背屈制限が生じた糖尿病患者においても歩行パターンの指導により,歩行時のMTP関節部の足底圧を軽減させる可能性が示唆された。今後は,糖尿病患者患者でも同様の結果が得られるか検討が必要である。