[O-DM-02-2] 保存療法を行うがん患者の運動機能と身体・精神症状に対する低強度運動の効果
―Performance Status別での検討―
Keywords:がん, 低強度運動, Performance Status
【はじめに】
放射線療法や化学療法といった保存療法を行うがん患者では,倦怠感をはじめとする身体症状や不安・抑うつなどの精神症状が強く,積極的な運動療法は行えない場合がある。そのようなケースに対しては,通常,無理なく実施できる歩行や基本動作を中心とした低強度運動が行われる。しかし,中には身体・精神症状が強くてもPerformance Status(以下,PS)1のように運動機能はある程度維持できているがん患者が多く存在し,そのようなケースに対しては低強度運動では十分ではないかという懸念が残る。そこで本研究の目的は,保存療法を行うがん患者に対する低強度運動の効果をPS別に調査し,低強度運動の適応を再検討することとした。
【方法】
対象は長崎大学病院で保存療法およびリハビリテーション(以下,リハビリ)を行ったがん患者95名(65.6±14.9歳,男45名,女50名)とし,すべての対象に対して歩行・基本動作を主体とした低強度運動を行った。低強度運動の強度はカルボーネン法により算出した上限心拍数の40%以下,時間は20~40分,頻度は週3~5回とした。そしてリハビリ開始時と退院時に,PS,膝伸展筋力,10m歩行テスト,1日平均歩数,日常生活動作能力(Functional Independence Measure:FIM),不安・抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS),倦怠感(Cancer Fatigue Scale:CFS)を評価した。解析では対象をPS1,PS2,PS3の3群に分け,各評価項目を対応のあるt検定を用いて縦断的に比較した。なお,PS0および4の対象者は少数であったため解析から除外し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
リハビリ開始時と退院時の各項目を比較すると,PS1群では1日平均歩数,FIM,倦怠感の3項目が改善した。また,PS2群とPS3群ではすべての項目で改善傾向が認められたが,PS2群では筋力のみ,PS3群では歩数のみ,リハビリ開始時と退院時の間に有意差が認められなかった。
【結論】
今回の結果,PS1群では膝伸展筋力や歩行スピードといった運動機能は変化しなかったが,歩数,FIM,倦怠感の改善が認められた。つまり,低強度運動は,運動機能がある程度保たれているがん患者に対しても一定の効果があるといえる。特に,1日平均歩数が増加したことは保存療法を行うがん患者の治療において重要とされる身体活動量の向上に繋がるのではないかと期待される。また,臥床時間が比較的長いPS2および3のがん患者では,運動機能と身体・精神症状のすべてにおいて改善が認められており,低強度運動の効果は明らかであった。したがって,低強度運動は保存療法を行うがん患者のすべてに適応できる可能性が高い。ただ,今回はPS0およびPS4のがん患者を対象に含めていないため,この点について検討を加えていく必要がある。
放射線療法や化学療法といった保存療法を行うがん患者では,倦怠感をはじめとする身体症状や不安・抑うつなどの精神症状が強く,積極的な運動療法は行えない場合がある。そのようなケースに対しては,通常,無理なく実施できる歩行や基本動作を中心とした低強度運動が行われる。しかし,中には身体・精神症状が強くてもPerformance Status(以下,PS)1のように運動機能はある程度維持できているがん患者が多く存在し,そのようなケースに対しては低強度運動では十分ではないかという懸念が残る。そこで本研究の目的は,保存療法を行うがん患者に対する低強度運動の効果をPS別に調査し,低強度運動の適応を再検討することとした。
【方法】
対象は長崎大学病院で保存療法およびリハビリテーション(以下,リハビリ)を行ったがん患者95名(65.6±14.9歳,男45名,女50名)とし,すべての対象に対して歩行・基本動作を主体とした低強度運動を行った。低強度運動の強度はカルボーネン法により算出した上限心拍数の40%以下,時間は20~40分,頻度は週3~5回とした。そしてリハビリ開始時と退院時に,PS,膝伸展筋力,10m歩行テスト,1日平均歩数,日常生活動作能力(Functional Independence Measure:FIM),不安・抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADS),倦怠感(Cancer Fatigue Scale:CFS)を評価した。解析では対象をPS1,PS2,PS3の3群に分け,各評価項目を対応のあるt検定を用いて縦断的に比較した。なお,PS0および4の対象者は少数であったため解析から除外し,有意水準は5%未満とした。
【結果】
リハビリ開始時と退院時の各項目を比較すると,PS1群では1日平均歩数,FIM,倦怠感の3項目が改善した。また,PS2群とPS3群ではすべての項目で改善傾向が認められたが,PS2群では筋力のみ,PS3群では歩数のみ,リハビリ開始時と退院時の間に有意差が認められなかった。
【結論】
今回の結果,PS1群では膝伸展筋力や歩行スピードといった運動機能は変化しなかったが,歩数,FIM,倦怠感の改善が認められた。つまり,低強度運動は,運動機能がある程度保たれているがん患者に対しても一定の効果があるといえる。特に,1日平均歩数が増加したことは保存療法を行うがん患者の治療において重要とされる身体活動量の向上に繋がるのではないかと期待される。また,臥床時間が比較的長いPS2および3のがん患者では,運動機能と身体・精神症状のすべてにおいて改善が認められており,低強度運動の効果は明らかであった。したがって,低強度運動は保存療法を行うがん患者のすべてに適応できる可能性が高い。ただ,今回はPS0およびPS4のがん患者を対象に含めていないため,この点について検討を加えていく必要がある。