The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本糖尿病理学療法学会 » 口述発表

[O-DM-02] 口述演題(糖尿病)02

Fri. May 12, 2017 3:30 PM - 4:30 PM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:田仲 勝一(香川大学医学部附属病院リハビリテーション部)

日本糖尿病理学療法学会

[O-DM-02-4] 同種造血幹細胞移植における完全静脈栄養の長期使用が理学療法に及ぼす影響

松永 佑哉1, 中村 和司1, 高木 寛人1, 中山 靖唯1, 佐藤 貴彦2, 小澤 幸泰2, 宮村 耕一2 (1.名古屋第一赤十字病院リハビリテーション科, 2.名古屋第一赤十字病院血液内科)

Keywords:同種造血幹細胞移植, 完全静脈栄養, 筋力

【はじめに,目的】

同種造血幹細胞移植は,前処置・移植片対宿主病等による下痢・悪心・嘔吐・味覚異常・粘膜炎などの消化器合併症が多くみられる。長期間の経口摂取制限,栄養素の吸収障害,ステロイドの使用により,異化が亢進するため容易に低栄養となりやすい。さらに,適切な栄養管理を受けなければ,感染症や臓器障害などの合併症を招くとされている。移植患者の栄養サポートにおいて,完全静脈栄養(total parenteral nutrition:TPN)が選択肢の一つとされており,当院でも採用している。そこで今回は,TPNの使用が理学療法に及ぼす影響について検討した。


【方法】

対象は2012年9月から2016年6月までに当院にて同種造血幹細胞移植を施行し評価可能であった103例とした。対象者の内訳は,男性61例/女性42例,年齢中央値42歳(16~68歳),疾患は急性白血病(骨髄性44例/リンパ性24例),慢性骨髄性白血病1例,骨髄異形成症候群24例,非ホジキンリンパ腫9例,原発性骨髄線維症1例。移植細胞源は血縁者26例,非血縁者77例。移植の種類は骨髄60例,末梢血幹細胞27例(うちHLA半合致8例含む),臍帯血16例であった。移植後のTPN使用日数を算出した結果,中央値が18日であった。そこで,18日より早期にTPNを離脱した群を早期群(n=57),離脱が遅延した群を遅延群(n=46)として群分けした。評価項目は,年齢・血清アルブミン値(Alb)・握力・股関節外転筋力・6分間歩行とし,評価日は移植前と移植後60日とした。股関節外転筋力は,徒手筋力測定器ミュータスF1(アニマ社製)を用いて左右各2回測定し,平均値を体重で除した値を筋力値(kgf/kg)とした。6分間歩行はアメリカ胸部学会(ATS)のガイドラインに基づき距離を測定し身長(m)で除した値を歩行距離(m)とし,運動耐容能の指標とした。2群間における年齢,Alb値,筋力値,6分間歩行を,Mann WhitneyのU検定,対応のないt検定を用い比較した。いずれも有意水準を5%未満とした。


【結果】

2群間の比較の結果,年齢は早期群44.54±12.15/遅延群38.98±14.99歳(p<0.05),移植後60日の股関節外転筋力値は早期群0.38±0.10/遅延群0.33±0.09kgf/kg(p<0.05),移植後60日の握力は早期群28.72±8.61/遅延群24.12/7.59kg(p<0.05)と,いずれも早期群が有意に高かった。

移植前の握力・股関節外転筋力値,移植前後でのAlb値・6分間歩行,移植後60日でのAlb値の変化率に有意差は認められなかった。




【結論】

TPNの使用により,移植の前後において栄養の指標の1つであるAlb値には影響がみられず,また運動耐容能への影響もみられなかった。しかしTPNを長期使用する例では,移植後の握力・股関節外転筋力が低下する傾向となり,これらは若年層ほど影響を受けやすいことが示唆された。口腔粘膜炎・悪心等の種々の要因による経口摂取困難によってTPNが開始されるため,多職種間にてその要因を取り除くアプローチをし,筋力の維持に努めることが重要である。