第52回日本理学療法学術大会

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[O-ED-02] 口述演題(教育)02

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2017年5月13日(土) 10:50 〜 11:50 A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:小山 理惠子(鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院リハビリテーション部)

日本理学療法教育学会

[O-ED-02-5] 大腿骨頚部/転子部骨折術後における急性期リハビリテーションの費用対効用

近藤 千雅1,2, 八木 麻衣子3, 西山 昌秀4, 岩崎 さやか4, 鈴木 智裕1, 川崎 一泰2, 仁木 久照5 (1.聖マリアンナ医科大学病院リハビリテーション部, 2.東洋大学大学院経済学研究科, 3.聖マリアンナ医科大学東横病院リハビリテーション室, 4.川崎市立多摩病院リハビリテーション科, 5.聖マリアンナ医科大学整形外科)

キーワード:費用対効用, 大腿骨頚部/転子部骨折, 急性期リハビリテーション

【はじめに,目的】

現在,医療費増加抑制のため,医療資源の効率的な利用について費用対効用に基づいた検討が重要とされているが,本邦のリハビリテーション(リハ)分野での医療経済学的検討はほぼなされていない。大腿骨頚部/転子部骨折術後の急性期リハについても,運動機能,ADLや予後の改善に寄与することは多く報告されているが,治療としての医療経済学的な有用性に関する検討はない。本報告は,大腿骨頚部/転子部骨折術後患者において,患者のQOLを加味した費用対効用分析の代表的な指標である質調整生存年(Quality-adjusted Life Years:QALY)を1QALY上昇させるための費用を計算し,急性期リハの医療経済学的有用性について検討することを目的とした。

【方法】

対象は,2016年5月から9月に大腿骨頚部/転子部骨折術後の急性期リハを行った45名中24名(年齢75.7±11.0,女性22名)とした。除外基準は,受傷前より寝たきり,本研究内容の理解が困難,状態悪化によりリハ中止例,とした。調査項目は1)リハ介入時と術後1週毎のEuro-QOL(EQ-5D)質問票によるQOL効用値,2)患者因子:年齢,性別,在院日数,リハ実施日数,リハ単位数,退院先,リハ介入時と術後1週毎Barthel Index(BI),総医療費,リハ医療費とした。運営費用は,人件費および施設基準により設置が義務付けられている設備費(リハ室代,リハ器具・福祉用具代)を算出し,患者1人にかかる1年間の費用を算出した。分析は,QOL効用値とBIの変化量の関係性をspearmanの相関係数を用いて検討した(有意水準p<0.05)。また,費用対効用分析として,退院時のQOL効用値が1年間継続すると仮定したリハ実施群と,リハを行わず初回のQOL効用値が1年継続すると仮定した対照群各々でQALYを算出し,リハ実施による増分費用を増分QALYで除した増分費用効果比(Incremental cost-effectiveness ratio:ICER)を算出した。

【結果】

対象者(在院日数35.0±13.5日)のBIは術前23.8±12.6から退院時74.6±26.4に上昇した。リハ介入時から退院時におけるQOL効用値は平均で0.06±0.19から0.65±0.14に上昇し,増分QALYは0.57であった。QOL効用値とBIの変化量には関連は認められなかった。リハ実施による増分費用は165.2万円となり,ICERは403.8万円/QALYであった。

【結論】

大腿骨頚部/転子部骨折術後の急性期リハのICERは403.8万円/QALYとなり,日本での医療経済学的有用性の基準である500万円/QALYを下回っていることから,今回のモデルにおいては急性期リハの効果が過小評価されている可能性が示唆された。