The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » 口述発表

[O-ED-03] 口述演題(教育)03

臨床教育1

Sat. May 13, 2017 12:50 PM - 1:50 PM A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:田中 正則(国立病院機構福岡東医療センターリハビリテーション科)

日本理学療法教育学会

[O-ED-03-1] 重度脳卒中片麻痺患者に対する後方からの歩行介助時の身体動揺
―理学療法士と理学療法学科学生との比較検証―

光武 翼1,2, 植田 耕造3, 一ノ瀬 和洋1, 中田 祐治1, 堀川 悦夫2 (1.白石共立病院, 2.佐賀大学医学部, 3.星ヶ丘医療センター)

Keywords:重度脳卒中片麻痺患者, 歩行介助, 身体動揺

【目的】

脳卒中治療ガイドライン2015では,脳卒中患者の歩行障害に対して,歩行に関連する練習量を多くすることが強く推奨されている。近年では歩行補助ロボットや体重免荷式トレッドミルなどを使用した積極的歩行練習が注目されているが,高価で装着に時間を費やすなどの問題から導入できない病院が多い。現状では,脳卒中患者に対して,長下肢装具を装着した患者を理学療法士(PT)が後方から介助する歩行練習の方法は一般的に行われている。しかし,歩行介助時の患者と介助者の動きを数量化した研究は,我々が渉猟し得た限り散見されない。そのため,歩行介助の臨床教育は,PTの経験に基づいて曖昧に教育される場面が見受けられる。本研究は重度脳卒中患者に対して,歩行介助時の身体動揺を客観的に評価し,PTと理学療法学科学生(PTS)による差異を検証することとした。

【方法】

歩行に介助が必要な脳卒中片麻痺患者8名(年齢74.3±10.1歳,男性4名,発症期間76.6±44.0日,Fugl-Meyer Assessment運動機能項目12.3±5.8点)を対象に,5名のPT(経験年数11.0±8.3年)と16名のPTSが後方から歩行を介助した。歩行距離は,加速路と減速路を1 mずつ含む5 mの直線歩行路を介助者の自由歩行で実施し,中間3 mの歩行中の身体動揺を測定した。歩行中の身体動揺は,小型無線多機能センサ(ATR-Promotions,TSND121)を重心位置に近似する第3腰椎棘突起部に装着し測定した。センサを患者と介助者の両方に設置し,歩行速度の2乗値で除したroot mean square(RMS)を指標とする身体動揺を算出した。統計解析はPTとPTSの歩行介助速度を対応のないt検定を用いて比較した。さらに,介助者(PT,PTS)とRMSの方向成分(患者と介助者の垂直,側方,前後成分RMS)を要因とする二元配置分散分析を行った。また,各要因のpost hoc検定にBonferroni法を用いた。有意水準は5%とした。

【結果】

本研究は転倒などの有害事象なく遂行した。歩行介助速度はPTがPTSと比較して有意に速かった(p<0.001)。介助者の違いによる比較では,PTと比べPTSの歩行介助において,患者と介助者の全方向のRMSで有意に高値を示した(p<0.05)。方向成分による比較では,PTが介助者の場合,すべてのRMSに有意差は認められなかったが,PTSが介助者では,患者と介助者の側方成分が垂直,前後成分より有意に高値を示した(p<0.001)。

【結論】

PTSの歩行介助では,PTと比較して歩行速度が遅く,患者と介助者ともに身体動揺の増大を示した。さらにPTSは側方への身体動揺が垂直,前後方向より大きくなることが示された。つまり,歩行介助指導の際は,歩行速度の減少や側方への身体動揺の増加に着目することが重要であると考えられる。今回のような身体動揺の測定により同一患者に対して,PTとPTSの介助による違いを提示することは,歩行介助技術を獲得するための臨床教育の一助となり得る。