第52回日本理学療法学術大会

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日本理学療法教育学会 » 口述発表

[O-ED-03] 口述演題(教育)03

臨床教育1

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 A4会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室301)

座長:田中 正則(国立病院機構福岡東医療センターリハビリテーション科)

日本理学療法教育学会

[O-ED-03-3] 理学療法士の臨床能力の難易度と経験年数間の差に関する縦断研究

芳野 純 (帝京平成大学健康メディカル学部理学療法学科)

キーワード:継続教育, 臨床能力評価, 縦断研究

【はじめに,目的】

理学療法士の能力は多くの要素で構成されているが,その内容の違いにより難易度が存在すると考える。本研究の目的は,理学療法士の資格取得後の継続教育において資格取得直後~経験3年目終了時までの能力を縦断的に調査し,その難易度および経験年数間の差を調査することである。

【方法】

本研究は,理学療法における臨床能力評価尺度(Clinical Competence Evaluation Scale in Physical Therapy:以下CEPT)を用いて調査を行った。CEPTは7つの大項目(理学療法実施上の必要な知識・臨床思考能力・医療職としての理学療法士の技術・コミュニケーション技術・専門職社会人としての態度・自己教育力・自己管理能力)と53の評価項目で構成されている。対象は協力の得られた7施設に所属し,2013年に理学療法士国家試験に合格した理学療法士68名とした。調査は1年目の5月(以下:経験0年)・2年目の4月(以下:経験1年)3年目の4月(以下:経験2年)4年目の4月(以下:経験3年)の計4回行った。解析はCEPTの53項目合計の平均と7つの大項目別合計の平均を経験年数別に対応のある一元配置分散分析にて,53の評価項目の平均を経験年数別にFriedman検定を用いた。さらにCEPTの段階付けで「自立している状態」である3点以上と評価した人数の割合を53の評価項目毎に単純比較した。

【結果】

4回全てCEPTの回答があった人数は38名であった。CEPTの53項目の合計の平均は全経験年数間で有意な差を認めた。7つの大項目別合計の平均は「理学療法実施上の必要な知識」と「医療職としての理学療法士の技術」において全経験年数間で有意な差を認めた。他の5つの大項目は経験0年と他の経験年数間のみ有意な差を認めた。大項目別の特徴として「専門職社会人としての態度」「自己教育力」「自己管理能力」は経験0年から比較的高値であった。「理学療法実施上の必要な知識」「臨床思考能力」「医療職としての理学療法士の技術」は経験0年の平均は低値であったが経験年数を重ねると高値を示した。53の評価項目毎の3点以上と評価した人数の割合は,「経験0年から高値を示す項目」,「3年間を通して向上する項目」「経験0年から1年間で向上するがその後の向上が穏やかな項目」に分けることができた。

【結論】

CEPTの合計点は全ての経験年間に有意な差があり,経験により総合的に臨床能力が向上していた。情意領域は比較的早期から高値を示しており,学生時代からまたは1ヶ月程度の臨床経験の早い段階で獲得できたと考えられる。認知・精神運動領域は経験に伴い点数が上昇しており,臨床経験により確実に能力が向上していると考える。53の評価項目毎にみると初期より高い能力を獲得している項目と,経験を重なることにより獲得していく能力と,1年程度の経験である程度の能力を獲得している項目があることが分かった。能力の項目により難易度の差があり,それに応じた教育の必要性があると言える。