[O-ED-04-5] 医療系専門学校の多職種連携教育の志向性効果について
Keywords:多職種連携, チーム医療, 授業
【はじめに,目的】
人口の高齢化に伴って,複雑な問題を抱える対象者の全人的ケア,継続的ケアを単一の医療専門職のみで行うことは難しく,各専門職が連携する力は医療専門職として非常に重要である。また厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会 報告書」(平成22年3月)においても,チーム医療の推進やその教育が今後の日本の医療において不可欠の課題であることが示されている1)。多職種連携・チーム医療は,現場ですぐに実践できるようになるものではなく,学生時代の専門職連携教育(IPE;Interprofessional education)によって培われるものであり,その実現には,専門の異なる学生同士が共に学ぶ専門職連携教育プログラムが重要である2)。そこで本校では,IPE科目授業として理学療法士学科(以下,PT学科),作業療法士学科(以下,OT学科),視能訓練士学科(以下,ORT学科)の3学科合同で授業を行った。授業内容は,「自己紹介・職業紹介」,「コミュニケーションゲーム」,「事例演習」,「自己学習」,「発表」の5つのブロックに分けて授業課題を構成した。今回,授業の評価指標として,専門職連携について学ぶ準備性・志向性尺度RIPLS(Readiness for Interprofessional Learning Scale「RIPLS日本語版」(田村他,2012)3)を設定した。授業前後の尺度得点の変化で志向性効果を検討したので報告する。
【方法】
対象は,3年制養成課程専門学校の2年生計111名で,内訳はPT学科41名,OT学科38名,ORT学科32名である。方法は,授業前後での比較をRIPLSの回答を集計し,各質問項目に対する授業前後の回答傾向に差異が見られるかについて,Wilcoxonの符号付順位和検定で分析をした。分析には,統計解析ソフトEZRを用い,有意水準は5%未満とする。尚,本研究について学内での倫理審査委員会にて承認を得た。
【結果】
RIPLS日本語版19項目全体のスコアを授業前後で比較した結果,授業前の平均スコアは71.7±7.3,授業後は81.2±8.1でスコアが上昇し,有意な差が認められた(p<0.01)。また下位尺度の「チームワークとコラボレーション」,「IPEの機会」,「専門性」においても同様に志向性の向上がみられた(p<0.01)。
【結論】
今回のIPE科目授業の志向性効果について,授業前より授業後のRIPLSのスコアが高くなっており,学習成果としてIPE学習への志向性が高まったことが示唆された。その要因として,授業を構成する上で,各ブロックの課題の到達ラインを明確にしたこと,各専攻科が活躍できる事例を設定したこと,テューターガイドを作成し進行を統一したこと,学習プロセスチェックリストに沿って学習を進めたこと,これらを設定・作成したことが志向性の向上に繋がったと考える。今後も継続してIPE科目授業を実施していくことが,将来,様々な医療現場で複雑な問題を抱える対象者に多職種連携を積極的に推進する医療人の人材育成に繋がると考える。
人口の高齢化に伴って,複雑な問題を抱える対象者の全人的ケア,継続的ケアを単一の医療専門職のみで行うことは難しく,各専門職が連携する力は医療専門職として非常に重要である。また厚生労働省の「チーム医療の推進に関する検討会 報告書」(平成22年3月)においても,チーム医療の推進やその教育が今後の日本の医療において不可欠の課題であることが示されている1)。多職種連携・チーム医療は,現場ですぐに実践できるようになるものではなく,学生時代の専門職連携教育(IPE;Interprofessional education)によって培われるものであり,その実現には,専門の異なる学生同士が共に学ぶ専門職連携教育プログラムが重要である2)。そこで本校では,IPE科目授業として理学療法士学科(以下,PT学科),作業療法士学科(以下,OT学科),視能訓練士学科(以下,ORT学科)の3学科合同で授業を行った。授業内容は,「自己紹介・職業紹介」,「コミュニケーションゲーム」,「事例演習」,「自己学習」,「発表」の5つのブロックに分けて授業課題を構成した。今回,授業の評価指標として,専門職連携について学ぶ準備性・志向性尺度RIPLS(Readiness for Interprofessional Learning Scale「RIPLS日本語版」(田村他,2012)3)を設定した。授業前後の尺度得点の変化で志向性効果を検討したので報告する。
【方法】
対象は,3年制養成課程専門学校の2年生計111名で,内訳はPT学科41名,OT学科38名,ORT学科32名である。方法は,授業前後での比較をRIPLSの回答を集計し,各質問項目に対する授業前後の回答傾向に差異が見られるかについて,Wilcoxonの符号付順位和検定で分析をした。分析には,統計解析ソフトEZRを用い,有意水準は5%未満とする。尚,本研究について学内での倫理審査委員会にて承認を得た。
【結果】
RIPLS日本語版19項目全体のスコアを授業前後で比較した結果,授業前の平均スコアは71.7±7.3,授業後は81.2±8.1でスコアが上昇し,有意な差が認められた(p<0.01)。また下位尺度の「チームワークとコラボレーション」,「IPEの機会」,「専門性」においても同様に志向性の向上がみられた(p<0.01)。
【結論】
今回のIPE科目授業の志向性効果について,授業前より授業後のRIPLSのスコアが高くなっており,学習成果としてIPE学習への志向性が高まったことが示唆された。その要因として,授業を構成する上で,各ブロックの課題の到達ラインを明確にしたこと,各専攻科が活躍できる事例を設定したこと,テューターガイドを作成し進行を統一したこと,学習プロセスチェックリストに沿って学習を進めたこと,これらを設定・作成したことが志向性の向上に繋がったと考える。今後も継続してIPE科目授業を実施していくことが,将来,様々な医療現場で複雑な問題を抱える対象者に多職種連携を積極的に推進する医療人の人材育成に繋がると考える。