The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本理学療法教育学会 » 口述発表

[O-ED-05] 口述演題(教育)05

臨床教育2

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:大森 圭貢(聖マリアンナ医科大学整形外科学講座)

日本理学療法教育学会

[O-ED-05-1] 自己認識に関するコーピング尺度評価を用いたスタッフ教育の指標

西川 正一郎1, 藤井 隆文1, 西尾 光史1, 原口 脩平1, 福谷 克基1, 吾妻 勇吹1, 徳吉 陽河3, 小西 英樹2, 橋本 務2 (1.医療法人大植会葛城病院リハビリテーション部理学療法課, 2.医療法人大植会葛城病院リハビリテーション科, 3.東北文化学園大学)

Keywords:自己客観視, メタ認知, 自己評価

【はじめに,目的】

理学療法士の会員数は2016年3月末現在10万人を超えており,年齢層は約半数以上が30歳未満の会員組織である。また,リハビリテーションに特化した病院においては100人規模の施設も珍しくはなく,職務管理上の面談や自己目標の管理では,理学療法士の卒後教育に難渋することも増えている。今回,スタッフ教育における自己認識に関する調査を行い,目標管理や関わり方の方策に用いるために行った。


【方法】

調査対象は当院理学療法課スタッフ58名を対象,研究同意を得られた54名を経験年数別に分け,当院の外来リハ,回復期リハ専従,訪問リハのローテーションが終了する時期までの1~4年目21名(以下若手群),各業態の指導を行うリーダーを担う5~9年目の20名(以下中堅群),役職者を含む10年目以上が13名(以下ベテラン群)の3群とした。調査指標にSCMS(自己統制と管理のコーピング尺度日本語版)を用いて評価した。評価様式はアンケート形式であり,SCMSは自己客観視(6問),自己評価(5問),自己強化(5問)の3つの因子で構成されている。SCMSの得点について,3群間で比較の検証をして経験年数に差が生じるかを調べた。統計処理には一元配置分散分析および多重比較(Bonferroni法)による分析を用いた。なお,危険率は5%とした。


【結果】

3群によるSCMSにおける各項目の得点が異なるか否かを検証するために,一元配置分散分析を行ったところ,自己客観視因子の群間における得点に有意な差が認められた(F(2,51)=5.3,P<0.01)。さらに,多重比較(Bonferroni法)による分析を実施したところ,自己客観視の因子においてベテラン群が若手群と比べ,有意に高い得点を示した。その他,自己評価項目における群間の得点差は有意傾向であった(P<0.06)。そこで,多重比較で確認したところ,有意傾向であり(P<0.05),自己評価の因子においてベテラン群が若手群と比べ高い得点が認められた。一方,SCMSの自己強化の項目には,有意な差は認められなかった。


【結論】

今回の研究においてSCMSは理学療法士を対象としても,自己客観視ができているか否かなどを知るための有用なツールであることが分かった。分析結果からは自己客観視・自己評価に必要とされるメタ認知力などは技術の獲得,臨床経験,社会生活,倫理観などを積み重ねることにより向上するのではないかと推察され,スタッフを教育する上で職能評価や人事考課における参考資料になると考察できた。今後,同様の調査を継続する予定であるが,理学療法士協会などの職能団体としても,自己認識やコーピングなどを客観的に評価できるような指標を卒後研究や教育などに取り入れる必要性があるのではないかと考えられた。