[O-ED-05-3] リハビリテーション分野のランダム化比較試験における抄録の情報に対する姿勢の検討:文献調査
Keywords:文献抄読, 批判的吟味, 報告バイアス
【はじめに,目的】
研究の結果を印象付けるために,本来目的とした結果ではなく,副次的な結果を強調して記載することをSpinと呼ぶ(Fletcher, et al., Med Law, 2007)。特に抄録は結果を限局して記載している可能性があり,実際にリハビリテーション以外の分野では,68%がSpinであったと報告されている(Boutron, et al., JAMA, 2010)。このSpinは読者に誤解を与える要因となりうるため,リハビリテーション分野でも現状把握が必要である。そこで本研究は,リハビリテーション分野のランダム化比較試験(RCT)の抄録において,その内容がどの程度Spinに当てはまるか検討することとした。
【方法】
リハビリテーション分野のうち研究デザインがRCTである論文を対象に,Spinの評価を行った。対象論文は,「リハビリテーション」と「RCT」に関する検索語を組み合わせた検索式を用いて抽出した。文献検索に使用したデータベースは,MEDLINE,Cochrane Central Register of Controlled Trials,医学中央雑誌とした(検索日2016年8月1日)。包含基準は,英語・日本語論文,全文が入手可能なもの,原著論文とした。除外基準は,RCT以外の論文,本文中に主要アウトカムが明記されていないもの,主要アウトカムの群間比較の結果が統計的に有意な差を認めるものとした。選択基準に基づき,評価論文を抽出後,抄録がSpinであるか評価を行った。Spinの判断は,Boutronらの方法を参考に,1)抄録の結果に主要アウトカムが明記されていない,2)抄録の結果が主要アウトカム以外に着目していることを基準とした。Spinの判断は,2名の評価者が独立して評価をした後,4名の評価者で妥当性の再検証を重ねた。解析は,どの程度Spinが報告されているか検討するために,対象論文に対するSpinの数とその割合を算出した。
【結果】
検索の結果,1054件が抽出され,対象論文は13件であった。そのうち,Spinの判断基準である1)抄録の結果に主要アウトカムが明記されていないものは,10件(76.9%)であった。2)抄録の結果が主要アウトカム以外に着目しているものは,13件(100%)であり,抽出した全ての抄録がSpinと判断された。
【結論】
リハビリテーション分野において研究デザインがRCTである抄録は,結果を歪曲して記載している割合が高かった。論文から情報を得る際,時間と金銭的な負担によって,抄録を参照することが多い(Kurata, et al., Plos One, 2013)。よって本研究から,抄録のみの情報では臨床の判断を誤る可能性が示唆された。なお,本研究の限界として,どのくらい報告内容が歪められているかというSpinの程度については言及できないため,今後の検討課題としたい。
研究の結果を印象付けるために,本来目的とした結果ではなく,副次的な結果を強調して記載することをSpinと呼ぶ(Fletcher, et al., Med Law, 2007)。特に抄録は結果を限局して記載している可能性があり,実際にリハビリテーション以外の分野では,68%がSpinであったと報告されている(Boutron, et al., JAMA, 2010)。このSpinは読者に誤解を与える要因となりうるため,リハビリテーション分野でも現状把握が必要である。そこで本研究は,リハビリテーション分野のランダム化比較試験(RCT)の抄録において,その内容がどの程度Spinに当てはまるか検討することとした。
【方法】
リハビリテーション分野のうち研究デザインがRCTである論文を対象に,Spinの評価を行った。対象論文は,「リハビリテーション」と「RCT」に関する検索語を組み合わせた検索式を用いて抽出した。文献検索に使用したデータベースは,MEDLINE,Cochrane Central Register of Controlled Trials,医学中央雑誌とした(検索日2016年8月1日)。包含基準は,英語・日本語論文,全文が入手可能なもの,原著論文とした。除外基準は,RCT以外の論文,本文中に主要アウトカムが明記されていないもの,主要アウトカムの群間比較の結果が統計的に有意な差を認めるものとした。選択基準に基づき,評価論文を抽出後,抄録がSpinであるか評価を行った。Spinの判断は,Boutronらの方法を参考に,1)抄録の結果に主要アウトカムが明記されていない,2)抄録の結果が主要アウトカム以外に着目していることを基準とした。Spinの判断は,2名の評価者が独立して評価をした後,4名の評価者で妥当性の再検証を重ねた。解析は,どの程度Spinが報告されているか検討するために,対象論文に対するSpinの数とその割合を算出した。
【結果】
検索の結果,1054件が抽出され,対象論文は13件であった。そのうち,Spinの判断基準である1)抄録の結果に主要アウトカムが明記されていないものは,10件(76.9%)であった。2)抄録の結果が主要アウトカム以外に着目しているものは,13件(100%)であり,抽出した全ての抄録がSpinと判断された。
【結論】
リハビリテーション分野において研究デザインがRCTである抄録は,結果を歪曲して記載している割合が高かった。論文から情報を得る際,時間と金銭的な負担によって,抄録を参照することが多い(Kurata, et al., Plos One, 2013)。よって本研究から,抄録のみの情報では臨床の判断を誤る可能性が示唆された。なお,本研究の限界として,どのくらい報告内容が歪められているかというSpinの程度については言及できないため,今後の検討課題としたい。