[O-HT-02-1] 長期集中治療管理を要する高齢心臓外科術後患者の集中治療室退室時の身体機能は自宅退院の規定因子である
多施設共同研究による検討
Keywords:長期集中治療管理, 心臓外科術後, 高齢者
【はじめに,目的】
近年,長期集中治療管理中の重症例に対する早期離床の報告が多数されているが,その多くは非心臓疾患を対象としており,長期集中治療管理を要する心臓外科術後症例に対する,早期離床に関する報告は殆ど存在しない。特に,集中治療に伴う身体機能低下のリスクが高い高齢心臓外科術後症例では,集中治療室(ICU)在室中に身体機能改善を図り,自宅復帰に繋げることは,理学療法における重要な役割と考えられる。そこで,「長期集中治療管理を要する高齢心臓外科術後症例におけるICU退室時の身体機能は自宅退院の可否に関連する」という仮説を検証するため,本研究を実施した。
【方法】
研究協力施設11施設において待機的に心臓外科手術を施行後,3日以上のICU管理を要した65歳以上の高齢者のうち,ICU在室中の死亡例,術前100m歩行困難例を除外した281例(年齢75±6歳,女性42%)を,自宅退院群245例と非自宅退院群36例の2群に分類した。ICUでの身体機能評価には,Functional Status Score for the ICU(FSS-ICU)得点を採用し,術後1病日とICU退室日に評価を実施した。統計学的解析には,SPSS Statistics 19(IBM)を用い,患者背景因子の比較にはt検定,カイ二乗検定およびFisherの正確確率検定,自宅退院の規定因子の検討には,自宅退院の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析,自宅退院の可否を予測するFSS-ICU得点のカットオフ値をROC曲線より算出し,カットオフ値に基づく2群間でカプランマイヤー曲線を描出し,ログランク検定による有意差の検定を行った。いずれも統計学的有意差は5%未満とした。
【結果】
自宅退院群は非自宅退院群に比べ,年齢,手術時間,麻酔時間,人工心肺時間,ICU在室日数が有意に低値であり(p<0.05),術前ヘモグロビン(Hb)(p<0.01),術前アルブミン(p<0.05),術後1病日およびICU退室日FSS-ICU得点が有意に高値を示した(p<0.05)。ロジスティック回帰分析の結果,年齢(OR:0.889,p<0.01),術前Hb(OR:1.446,p<0.05),手術時間(OR:0.992,p<0.05),ICU在室日数(OR:0.881,p<0.05),ICU退室日FSS-ICU得点(OR:1.132,p<0.01)が,自宅退院を規定する因子として抽出された。また,ROC曲線により自宅退院を予測するICU退室日FSS-ICU得点のカットオフ値を算出したところ,21点(AUC 0.678,感度0.592,特異度0.722,p<0.01)であり,21点をカットオフ値とする2群間においてカプランマイヤー曲線を用いて自宅退院率を比較した結果,21点未満のICU退室日FSS-ICU低値群では自宅退院率が有意に不良であった(log-rank test,p<0.001)。
【結論】
長期集中治療を要する高齢心臓外科術後症例の自宅退院の可否を決定する要因として,ICU退室日の身体機能が抽出された。またROC曲線より算出した自宅退院の可否を予測するICU退室日FSS-ICU得点のカットオフ値は21点であり,ICU退室日FSS-ICU得点が21点未満の高齢心臓外科術後症例は自宅退院率が不良であった。
近年,長期集中治療管理中の重症例に対する早期離床の報告が多数されているが,その多くは非心臓疾患を対象としており,長期集中治療管理を要する心臓外科術後症例に対する,早期離床に関する報告は殆ど存在しない。特に,集中治療に伴う身体機能低下のリスクが高い高齢心臓外科術後症例では,集中治療室(ICU)在室中に身体機能改善を図り,自宅復帰に繋げることは,理学療法における重要な役割と考えられる。そこで,「長期集中治療管理を要する高齢心臓外科術後症例におけるICU退室時の身体機能は自宅退院の可否に関連する」という仮説を検証するため,本研究を実施した。
【方法】
研究協力施設11施設において待機的に心臓外科手術を施行後,3日以上のICU管理を要した65歳以上の高齢者のうち,ICU在室中の死亡例,術前100m歩行困難例を除外した281例(年齢75±6歳,女性42%)を,自宅退院群245例と非自宅退院群36例の2群に分類した。ICUでの身体機能評価には,Functional Status Score for the ICU(FSS-ICU)得点を採用し,術後1病日とICU退室日に評価を実施した。統計学的解析には,SPSS Statistics 19(IBM)を用い,患者背景因子の比較にはt検定,カイ二乗検定およびFisherの正確確率検定,自宅退院の規定因子の検討には,自宅退院の可否を従属変数としたロジスティック回帰分析,自宅退院の可否を予測するFSS-ICU得点のカットオフ値をROC曲線より算出し,カットオフ値に基づく2群間でカプランマイヤー曲線を描出し,ログランク検定による有意差の検定を行った。いずれも統計学的有意差は5%未満とした。
【結果】
自宅退院群は非自宅退院群に比べ,年齢,手術時間,麻酔時間,人工心肺時間,ICU在室日数が有意に低値であり(p<0.05),術前ヘモグロビン(Hb)(p<0.01),術前アルブミン(p<0.05),術後1病日およびICU退室日FSS-ICU得点が有意に高値を示した(p<0.05)。ロジスティック回帰分析の結果,年齢(OR:0.889,p<0.01),術前Hb(OR:1.446,p<0.05),手術時間(OR:0.992,p<0.05),ICU在室日数(OR:0.881,p<0.05),ICU退室日FSS-ICU得点(OR:1.132,p<0.01)が,自宅退院を規定する因子として抽出された。また,ROC曲線により自宅退院を予測するICU退室日FSS-ICU得点のカットオフ値を算出したところ,21点(AUC 0.678,感度0.592,特異度0.722,p<0.01)であり,21点をカットオフ値とする2群間においてカプランマイヤー曲線を用いて自宅退院率を比較した結果,21点未満のICU退室日FSS-ICU低値群では自宅退院率が有意に不良であった(log-rank test,p<0.001)。
【結論】
長期集中治療を要する高齢心臓外科術後症例の自宅退院の可否を決定する要因として,ICU退室日の身体機能が抽出された。またROC曲線より算出した自宅退院の可否を予測するICU退室日FSS-ICU得点のカットオフ値は21点であり,ICU退室日FSS-ICU得点が21点未満の高齢心臓外科術後症例は自宅退院率が不良であった。