[O-HT-02-2] 末梢動脈疾患(PAD)患者におけるサルコペニアの潜在性と身体機能
Keywords:PAD, サルコペニア, 膝伸展筋力
【はじめに,目的】
PAD患者は,加齢に加え,間歇性跛行(IC)による低活動に伴いサルコペニアの割合は高いと推察されるが,サルコペニアの実態調査は,一般高齢者が対象であることが多く,PAD患者を対象としたものはまだ見当たらない。
そこで本研究は治療前のPAD患者を対象にサルコペニアの潜在性と身体機能について調査・検討した。
【方法】
2015年4月から2016年8月に当院でリハビリ処方されたFontaine分類2度の血行再建術術前患者,または保存療法が適応となったPAD患者51名73肢(平均年齢70.4±9.4歳,男性36名,女性15名)を対象とした。
サルコペニアの評価は,Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の基準に従い,握力と骨格筋量(SMI)の両方満たした者をサルコペニア,SMIのみ低下した者をプレサルコペニアとし,サルコペニア群(S群),プレサルコペニア群(PS群),正常群(N群)の3群に分類し,サルコペニアの有病率と3群間の身体機能を比較した。
SMIは,InBody S10を使用し,部位別直接生体電気インピーダンス法(BIA)にて測定した。
身体機能は,最大歩行距離(MWD),膝伸展筋力,握力,片脚立位,WIQ,ABIを測定し,MWDはトレッドミルを用い,速度2.4km/h,傾斜12%,最大10分間を基本として実施した。
測定した筋力について,握力はAWGSの基準,膝伸展筋力は5Metsの運動耐容能に必要といわれる0.46kgf/kg(神谷ら)を基準値として比較した。
統計処理にはIBM SPSS statistics 20を使用し,有意水準は5%とした。MWDと膝伸展筋力(全体・S群以外)やMWDと握力との相関にはspearmanの順位相関係数を用い,S群のMWDと膝伸展筋力との相関にはpersonの相関係数を用いた。
【結果】
S群は全体の17.6%,PS群は33.3%であり,半数以上の者は筋肉量が低下している状態であった。患側膝伸展筋力は,S群で0.30±0.15kgf/kg,PS群で0.42[0.31-0.54]kgf/kg,N群で0.45±0.15kgf/kgであり,3群の中でS群が最も低値であった。このような傾向は,MWDや握力,片脚立位,WIQの各身体機能も同様であった。
また,筋力が基準に満たなかった者は,膝伸展筋力で全体の52.9%,握力で21.6%であった。
MWDと膝伸展筋力の間には強い相関を認め,r=0.6,P<0.0001であり,S群単独ではr=0.8,p<0.014,S群以外ではr=0.5,p<0.002であった。MWDと握力の間にも相関を認めたが,膝伸展筋力の方が強い相関を認めた。
【結論】
本研究におけるサルコペニア有病率は17.6%と,幸らの8.6%よりも高く,PAD患者にはサルコペニアが一般高齢者よりも多いことが分かった。
PAD患者では,より下肢筋力が低下しやすく,それがMWDに強く影響していると思われた。さら筋力低下が著しいS群ではより強く影響していることが示唆された。
PAD患者におけるサルコペニアや身体機能を改善させていく為には,ガイドラインでは明記されていない筋力トレーニングを含めた運動療法を行っていく必要性があると思われた。
PAD患者は,加齢に加え,間歇性跛行(IC)による低活動に伴いサルコペニアの割合は高いと推察されるが,サルコペニアの実態調査は,一般高齢者が対象であることが多く,PAD患者を対象としたものはまだ見当たらない。
そこで本研究は治療前のPAD患者を対象にサルコペニアの潜在性と身体機能について調査・検討した。
【方法】
2015年4月から2016年8月に当院でリハビリ処方されたFontaine分類2度の血行再建術術前患者,または保存療法が適応となったPAD患者51名73肢(平均年齢70.4±9.4歳,男性36名,女性15名)を対象とした。
サルコペニアの評価は,Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)の基準に従い,握力と骨格筋量(SMI)の両方満たした者をサルコペニア,SMIのみ低下した者をプレサルコペニアとし,サルコペニア群(S群),プレサルコペニア群(PS群),正常群(N群)の3群に分類し,サルコペニアの有病率と3群間の身体機能を比較した。
SMIは,InBody S10を使用し,部位別直接生体電気インピーダンス法(BIA)にて測定した。
身体機能は,最大歩行距離(MWD),膝伸展筋力,握力,片脚立位,WIQ,ABIを測定し,MWDはトレッドミルを用い,速度2.4km/h,傾斜12%,最大10分間を基本として実施した。
測定した筋力について,握力はAWGSの基準,膝伸展筋力は5Metsの運動耐容能に必要といわれる0.46kgf/kg(神谷ら)を基準値として比較した。
統計処理にはIBM SPSS statistics 20を使用し,有意水準は5%とした。MWDと膝伸展筋力(全体・S群以外)やMWDと握力との相関にはspearmanの順位相関係数を用い,S群のMWDと膝伸展筋力との相関にはpersonの相関係数を用いた。
【結果】
S群は全体の17.6%,PS群は33.3%であり,半数以上の者は筋肉量が低下している状態であった。患側膝伸展筋力は,S群で0.30±0.15kgf/kg,PS群で0.42[0.31-0.54]kgf/kg,N群で0.45±0.15kgf/kgであり,3群の中でS群が最も低値であった。このような傾向は,MWDや握力,片脚立位,WIQの各身体機能も同様であった。
また,筋力が基準に満たなかった者は,膝伸展筋力で全体の52.9%,握力で21.6%であった。
MWDと膝伸展筋力の間には強い相関を認め,r=0.6,P<0.0001であり,S群単独ではr=0.8,p<0.014,S群以外ではr=0.5,p<0.002であった。MWDと握力の間にも相関を認めたが,膝伸展筋力の方が強い相関を認めた。
【結論】
本研究におけるサルコペニア有病率は17.6%と,幸らの8.6%よりも高く,PAD患者にはサルコペニアが一般高齢者よりも多いことが分かった。
PAD患者では,より下肢筋力が低下しやすく,それがMWDに強く影響していると思われた。さら筋力低下が著しいS群ではより強く影響していることが示唆された。
PAD患者におけるサルコペニアや身体機能を改善させていく為には,ガイドラインでは明記されていない筋力トレーニングを含めた運動療法を行っていく必要性があると思われた。