[O-KS-01-2] 足関節周囲筋の同時収縮が不安板上での姿勢制御能力に与える影響
Keywords:不安定板, 同時収縮, 周波数解析
【はじめに,目的】
不安定な支持面における姿勢制御能力は不整地での転倒予防などにおいて重要である。安定した支持面上での立位姿勢制御能力には足関節周囲筋の同時収縮の程度が関連していることは多く報告されているが,不安定板上での立位課題について調べた研究は少ない。また立位課題中の足圧中心変動の質的特徴を調べる手段として周波数解析がよく用いられているが,不安定板の傾斜角度変動に対して周波数解析を用いて質的特徴を調べた研究はほとんどない。本研究の目的は,不安定板上での立位姿勢制御課題において,足関節周囲筋の同時収縮が姿勢制御能力に与える影響について量的・質的特徴の観点から検討することである。
【方法】
対象は健常若年女性25名(22.3±2.1歳)とした。前後または左右の一方向にのみ傾斜する不安定板(酒井医療製DYJOC board plus)を用いて,前方の印を注視しながら片脚立位姿勢を30秒間保持させた。不安定板または下肢が床に接触することなく30秒維持できた1試行を解析し,30秒のうち中間の10秒間を解析区間とした。不安定板の傾斜角度をサンプリング周波数40Hzにてコンピュータに取り込み,角度変動域を算出した。なお,角度変動域は傾斜した角度の絶対値平均であり,角度変動域が大きいほど不安定であることを示す。また,先行研究(Ogaya S, 2011)に基づき傾斜角度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行ってパワースペクトル密度を求めた上で,0.02~5Hzの間での中間周波数を算出した。周波数は不安定板の切り返しの頻度を表し,高周波であるほど不安定板の傾きを素早く細かく制御していることを示す。同時収縮の評価には筋電図計測装置(Noraxon社製)を使用し,片脚立位課題中の前脛骨筋,ヒラメ筋,長腓骨筋の筋活動を測定した。各筋の筋活動は最大等尺性筋力により正規化した後,時系列データから,足関節底背屈筋(ヒラメ筋と前脛骨筋)および足関節回内外筋(長腓骨筋と前脛骨筋)のそれぞれ2筋ごとにFalconerらの推奨する同時収縮指数(CI)を算出した。なお,CIは値が大きいほど2筋の同時収縮の程度が大きいことを示す。統計は各指標間の関連についてSpearmanの順位相関係数を用いて分析した。
【結果】
前後方向のみ傾斜する不安定板上での片脚立位課題における角度変動域,中間周波数はいずれもCIとの相関は認められなかった。一方,左右方向の傾斜では,前脛骨筋と長腓骨筋のCIと不安定板の中間周波数との間で有意な負の相関(r=-0.440),角度変動域との間で有意な正の相関(r=0.442)がみられた。
【結論】
本研究の結果,足回内筋・回外筋の同時収縮の程度が少ないほど不安定板の左右の傾きを素早く細かく制御して不安定板を安定させることが可能であることが示され,同時収縮が強いと主動作筋と拮抗筋の素早い切り替えが困難となり,繊細かつ俊敏な姿勢制御の妨げとなることが示唆された。
不安定な支持面における姿勢制御能力は不整地での転倒予防などにおいて重要である。安定した支持面上での立位姿勢制御能力には足関節周囲筋の同時収縮の程度が関連していることは多く報告されているが,不安定板上での立位課題について調べた研究は少ない。また立位課題中の足圧中心変動の質的特徴を調べる手段として周波数解析がよく用いられているが,不安定板の傾斜角度変動に対して周波数解析を用いて質的特徴を調べた研究はほとんどない。本研究の目的は,不安定板上での立位姿勢制御課題において,足関節周囲筋の同時収縮が姿勢制御能力に与える影響について量的・質的特徴の観点から検討することである。
【方法】
対象は健常若年女性25名(22.3±2.1歳)とした。前後または左右の一方向にのみ傾斜する不安定板(酒井医療製DYJOC board plus)を用いて,前方の印を注視しながら片脚立位姿勢を30秒間保持させた。不安定板または下肢が床に接触することなく30秒維持できた1試行を解析し,30秒のうち中間の10秒間を解析区間とした。不安定板の傾斜角度をサンプリング周波数40Hzにてコンピュータに取り込み,角度変動域を算出した。なお,角度変動域は傾斜した角度の絶対値平均であり,角度変動域が大きいほど不安定であることを示す。また,先行研究(Ogaya S, 2011)に基づき傾斜角度の時系列データに対して高速フーリエ変換を行ってパワースペクトル密度を求めた上で,0.02~5Hzの間での中間周波数を算出した。周波数は不安定板の切り返しの頻度を表し,高周波であるほど不安定板の傾きを素早く細かく制御していることを示す。同時収縮の評価には筋電図計測装置(Noraxon社製)を使用し,片脚立位課題中の前脛骨筋,ヒラメ筋,長腓骨筋の筋活動を測定した。各筋の筋活動は最大等尺性筋力により正規化した後,時系列データから,足関節底背屈筋(ヒラメ筋と前脛骨筋)および足関節回内外筋(長腓骨筋と前脛骨筋)のそれぞれ2筋ごとにFalconerらの推奨する同時収縮指数(CI)を算出した。なお,CIは値が大きいほど2筋の同時収縮の程度が大きいことを示す。統計は各指標間の関連についてSpearmanの順位相関係数を用いて分析した。
【結果】
前後方向のみ傾斜する不安定板上での片脚立位課題における角度変動域,中間周波数はいずれもCIとの相関は認められなかった。一方,左右方向の傾斜では,前脛骨筋と長腓骨筋のCIと不安定板の中間周波数との間で有意な負の相関(r=-0.440),角度変動域との間で有意な正の相関(r=0.442)がみられた。
【結論】
本研究の結果,足回内筋・回外筋の同時収縮の程度が少ないほど不安定板の左右の傾きを素早く細かく制御して不安定板を安定させることが可能であることが示され,同時収縮が強いと主動作筋と拮抗筋の素早い切り替えが困難となり,繊細かつ俊敏な姿勢制御の妨げとなることが示唆された。