第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-10] 口述演題(基礎)10

2017年5月13日(土) 09:30 〜 10:30 A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:中江 秀幸(東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-10-3] 生体インビーダンス法による筋量推定法を用いた筋量低下者における骨格筋量と身体機能・構造
健常成人における骨格筋指数の算出方法の違いによる筋量低下者の特徴

髙橋 泰子1,2, 石坂 正大3, 久保 晃3 (1.国際医療福祉大学大学院, 2.化学療法研究所附属病院リハビリテーション室, 3.国際医療福祉大学)

キーワード:サルコペニア, 筋量, 生体インピーダンス法

【はじめに,目的】

サルコペニアは加齢による骨格筋量の低下を特徴とする症候群であり,高齢者ではADL・QOLや転倒・骨折リスクに及ぼす影響が大きくサルコペニアの予防は必須となってきている。European Working Group on Sarcopenia in Older People(以下,EWGSOP)では筋量の低下と身体能力の両方で評価を行うことを推奨している。これまで骨格筋指数(Skeleal muscle index:SMI)の算出方法は,四肢骨格筋量を身長の2乗で除したBaumgartnerらの方法,骨格筋量を体重で除し100%に換算したJanssenらの方法,四肢除脂肪重量を身長の2乗で除したNewmanらの方法がある。また,Janssenらは若年被験者の平均-1SDから-2SDまでをClass1のサルコペニア,-2SD以下をClass2のサルコペニアと定義している。加齢に伴い骨格筋量が減少する度合いや時期が報告され,このことから,高齢となった際の骨格筋量は若年者の骨格筋量に影響することが考えられた。そこで,本研究では健常者で筋量の低下を認める対象者の特徴を明らかにし若年者の基礎資料を得ることを目的とした。

【方法】

対象者は,健常成人51名(男性32名/女性19名),平均年齢19.4±0.8歳であった。筋量の計測では,In Bodyを用いて,体脂肪量・体脂肪率,除脂肪量,四肢骨格筋量などの体組成を測定した。測定周波数は,5kHz,50kHz,500kHzの3種類からなり,四肢遠位より電流を供給する8点接触型電極法である。握力測定は握力計を使用し計測を行った。また,全対象者のSMIの平均値と標準偏差を算出し,性別ごとに平均値-1SDから-2SDの間を筋量低下群(以下低下群)と平均値±1SDをNormal群(以下N群)と分類し,対応のないt検定で比較した。SMIの算出方法は,Baumgartnerらの方法をBsmiとし,Janssenらの方法をJsmi,Newmanらの方法をNsmiとして算出した。統計解析は,IBM SPSS Statistics 23を用い,有意水準は5%とした。

【結果】

N群が36名(男性25名/女性11名),低下群が15名(男性7名/女性8名)であった。Jsmi7名(男性4名/女性3名),Nsmi7名(男性3名/女性4名),Bsmi7名(男性3名/女性4名)となった。骨格筋指数の算出方法の違いでは,Jsmiの低下群ではBMI,体脂肪量,体脂肪率でN群より有意に大きい値を示した。Nsmiでは,体重,BMI,タンパク質,除脂肪量で有意に小さく,体脂肪率では有意に大きい値を示した。Bsmiでは,体重・タンパク質・除脂肪量,握力にてN群より有意に小さい値を示した。男性での2群間の比較では,体脂肪量・体脂肪率で低下群が有意に大きい値を示した。一方女性では,タンパク質・除脂肪量・四肢骨格筋量・握力にて有意に小さい値を示した。

【結論】

各SMIの算出方法にて,-1SDと-2SDの間に入る若年者が存在しており,N群と比較すると有意差が出現する項目は各算出方法によって異なる。Jsmiは,体脂肪との有意差が出現し,Bsmiでは体組成に加え握力でN群と比して有意に小さい値となった。またSMIは,男性は体脂肪に,女性は筋量に影響を与えることが示唆された。