第52回日本理学療法学術大会

講演情報

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-13] 口述演題(基礎)13

2017年5月13日(土) 12:50 〜 13:50 A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:谷埜 予士次(関西医療大学保健医療学部臨床理学療法学教室)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-13-4] 外反母趾を有する者の母趾にかかる荷重に関連する運動学的要因

川上 航1, 新小田 幸一2,3, 澤田 智紀1, 高橋 真2,3 (1.広島大学大学院医歯薬保健学研究科保健学専攻, 2.広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門, 3.広島大学大学院医歯薬保健学研究科附属先駆的リハビリテーション実践支援センター)

キーワード:外反母趾, 足圧中心, バイオメカニクス

【はじめに,目的】

外反母趾(Hallux Valgus:以下,HV)は女性に多く発症する足部障害である。HVの発症・進行にはさまざまな因子が関与し,特に母趾にかかる荷重圧の増大は第1中足骨や母趾に生じるストレスを増大させる。しかし,HVを有する者において足部形状や歩行中の足部運動が母趾側への荷重にどのように関連するかを調査した報告は渉猟する限り見当たらない。

そこで本研究は,HVを有する者において静的な足部形状や動的な足部の運動が足圧中心(Center of pressure:以下,COP)に及ぼす影響を明らかにすることを目的に実施した。

【方法】

被験者はHV角が20°以上の成人女性13人13足であり,両側性にHVを有する場合はHV角の大きい肢を解析対象とした。足部形状の評価には,横アーチ高率(足幅を足長で除した値),Normalised Navicular Height truncated(舟状骨高を第1中足趾節関節と踵骨最後面間の距離で除した値),Rearfoot angle(下腿に対する踵骨の傾斜角度)を採用した。課題動作は被験者が快適であると感じるスピードでの約10mの平地歩行とし,解析区間は解析肢の立脚期とした。運動学的データは赤外線カメラ6台からなる三次元動作解析システム(Vicon Motion Systems社製),運動力学的データは床反力計(テック技販社製)8基を用いて取得した。得られたデータを基にNexus2.1(Vicon Motion Systems社製)を用いて,近位セグメントを基準とした前足部・中足部・後足部セグメントの前額面の相対角度,COP座標を算出した。また,COPが最初に第1中足骨頭と第5中足骨頭の間を通過した時点での第1中足骨頭とCOP間の距離を算出し,第1中足骨頭と第5中足骨頭間の距離で除した(以下,MH1-COP)。統計学的解析には統計ソフトウェアSPSS Ver.22.0(日本アイ・ビー・エム社製)を用い,Shapiro-Wilk検定により正規性の有無を確認した後,Spearmanの順位相関係数を用いてMH1-COPと足部形状,歩行中の足部の前額面における運動との関連について検討した。有意水準は5%未満とした。

【結果】

MH1-COPといずれの足部形状の評価との間に有意な相関は認めなかった。一方,MH1-COPとMH1-COP算出時の後足部外反角度(r=-0.61,p<0.05)との間に有意な負の相関を認め,同時点の前足部,中足部外反角度との間に有意な相関は認めなかった。

【結論】

先行研究において,内側縦アーチの低下,後足部の外反アライメントはHVの主な要因であり,母趾にかかる荷重に影響を及ぼすと報告されている。しかし,本研究において,COPの母趾側への移動は静的な足部形状には関連せず,歩行中の後足部外反角度と関連していることが明らかとなった。このことから,歩行中の後足部の過度な外反は,COPを母趾側へ移動させ,母趾にかかる荷重の増大を引き起こす可能性があり,HVを有する者の母趾側への荷重には,後足部の外反運動に着目することの重要性が示唆された。