[O-KS-15-1] 温熱刺激はグルココルチコイド投与に伴う筋タンパク質分解経路の活性化と筋タンパク質合成経路の不活性化を抑制する
Keywords:筋萎縮, 温熱刺激, グルココルチコイド
【はじめに,目的】
グルココルチコイド(GC)療法は抗炎症等の薬理作用を期待して多くの疾患に適用されるが,多様な副作用が問題となる。中でも,副作用のひとつであるGC誘導性筋萎縮の予防対策は喫緊の医学的課題である。近年,プレコンディショニングとして骨格筋細胞に温熱刺激を行うことで,非荷重に伴う筋萎縮(Naito H, et al., 2000)やGC誘導性筋萎縮(Morimoto Y, et al., 2015)の進行を抑制できる可能性が示唆されている。しかしながら,その詳細な機序は解明されていない。本研究の目的は,GC投与により萎縮が生じるC2C12筋管細胞に対して温熱刺激を行い,そのGC誘導性筋萎縮の進行抑制作用と,筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路および筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路との関連について明らかにすることである。
【方法】
実験にはC2C12筋管細胞を用い,通常培養をした対照群,合成GCであるデキサメタゾン(Dex,10 μM)を培地に投与することで萎縮を誘導したD群,温熱刺激(41℃,60分)を行い,その6時間後にDexを培地に投与したHD群の3群に分けた。筋萎縮の評価指標は,細胞直径とし,Dex投与から24時間後に画像解析ソフトウェアを用いて測定した。筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路(REDD1 mRNA発現量,Aktリン酸化量,p70S6K1リン酸化量,GSK3βリン酸化量)は,Dex投与から3時間後にwestern blot法または定量RT-PCR法を用いて測定した。筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路(KLF15 mRNA発現量,Aktリン酸化量,FoxO1リン酸化量,FoxO3aリン酸化量,MuRF1 mRNA発現量)は,Dex投与から6時間後にwestern blot法または定量RT-PCR法を用いて測定した。
【結果】
D群の細胞直径は,対照群およびHD群と比較して有意に低値を示した。したがって,プレコンディショニングとして温熱刺激を行うと,GC投与に伴うC2C12筋管細胞の萎縮進行が抑制されることを確認できた。D群のREDD1 mRNA発現量は,対照群およびHD群と比較して有意に高値を示し,D群のAktリン酸化量,p70S6K1リン酸化量,GSK3βリン酸化量は,対照群およびHD群と比較して有意に低値を示した。また,D群のKLF15 mRNA発現量,MuRF1 mRNA発現量は,対照群およびHD群と比較して有意に高値を示し,D群のAktリン酸化量,FoxO1リン酸化量,FoxO3aリン酸化量は,対照群およびHD群と比較して有意に低値を示した。したがって,温熱刺激は,GC投与によって生じる筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路の不活性化および筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路の活性化を抑制することが示唆された。
【結論】
プレコンディショニングとして温熱刺激を行うことは,GC投与によって生じる筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路の不活性化および筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路の活性化を抑制することにつながり,結果的にGC誘導性筋萎縮の進行を抑制する。
グルココルチコイド(GC)療法は抗炎症等の薬理作用を期待して多くの疾患に適用されるが,多様な副作用が問題となる。中でも,副作用のひとつであるGC誘導性筋萎縮の予防対策は喫緊の医学的課題である。近年,プレコンディショニングとして骨格筋細胞に温熱刺激を行うことで,非荷重に伴う筋萎縮(Naito H, et al., 2000)やGC誘導性筋萎縮(Morimoto Y, et al., 2015)の進行を抑制できる可能性が示唆されている。しかしながら,その詳細な機序は解明されていない。本研究の目的は,GC投与により萎縮が生じるC2C12筋管細胞に対して温熱刺激を行い,そのGC誘導性筋萎縮の進行抑制作用と,筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路および筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路との関連について明らかにすることである。
【方法】
実験にはC2C12筋管細胞を用い,通常培養をした対照群,合成GCであるデキサメタゾン(Dex,10 μM)を培地に投与することで萎縮を誘導したD群,温熱刺激(41℃,60分)を行い,その6時間後にDexを培地に投与したHD群の3群に分けた。筋萎縮の評価指標は,細胞直径とし,Dex投与から24時間後に画像解析ソフトウェアを用いて測定した。筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路(REDD1 mRNA発現量,Aktリン酸化量,p70S6K1リン酸化量,GSK3βリン酸化量)は,Dex投与から3時間後にwestern blot法または定量RT-PCR法を用いて測定した。筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路(KLF15 mRNA発現量,Aktリン酸化量,FoxO1リン酸化量,FoxO3aリン酸化量,MuRF1 mRNA発現量)は,Dex投与から6時間後にwestern blot法または定量RT-PCR法を用いて測定した。
【結果】
D群の細胞直径は,対照群およびHD群と比較して有意に低値を示した。したがって,プレコンディショニングとして温熱刺激を行うと,GC投与に伴うC2C12筋管細胞の萎縮進行が抑制されることを確認できた。D群のREDD1 mRNA発現量は,対照群およびHD群と比較して有意に高値を示し,D群のAktリン酸化量,p70S6K1リン酸化量,GSK3βリン酸化量は,対照群およびHD群と比較して有意に低値を示した。また,D群のKLF15 mRNA発現量,MuRF1 mRNA発現量は,対照群およびHD群と比較して有意に高値を示し,D群のAktリン酸化量,FoxO1リン酸化量,FoxO3aリン酸化量は,対照群およびHD群と比較して有意に低値を示した。したがって,温熱刺激は,GC投与によって生じる筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路の不活性化および筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路の活性化を抑制することが示唆された。
【結論】
プレコンディショニングとして温熱刺激を行うことは,GC投与によって生じる筋タンパク質合成に関わる情報伝達経路の不活性化および筋タンパク質分解に関わる情報伝達経路の活性化を抑制することにつながり,結果的にGC誘導性筋萎縮の進行を抑制する。