[O-KS-15-2] 多発性筋炎モデルマウスにおける骨格筋間葉系前駆細胞の異常性と運動刺激が与える影響
Keywords:骨格筋間葉系前駆細胞, 多発性筋炎, 運動
【はじめに,目的】
多発性筋炎に対する運動は炎症の助長や異所性組織を形成させるリスクがある。本研究では,骨格筋の炎症と再生,異所性組織形成において中心的な役割を果たす骨格筋間葉系前駆細胞(Mesenchymal Progenitor Cell:MPC)を中心として,運動刺激と炎症の助長および異所性組織形成のメカニズムを解明する。
【方法】
8週齢のBalb/cマウス(メス)に精製したBalb/c由来ミオシンと完全フロイトアジュバントをリンパ節付近に免疫し実験的自己免疫性筋炎(Experimental Autoimmune Myositis:EAM)を作成した。免疫後5週の時点で運動介入(17m/min,-20度傾斜,30分)を実施し,24時間後に腓腹筋を採取した。MPCはLineage陰性α7-integrin陰性PDGFRα陽性の細胞を単離した。単離後のMPCにて遺伝子発現解析(筋再生関連遺伝子Follistatin,IGF-1;抗炎症関連遺伝子TSG-6,IL-1Ra,IL-33;細胞周期阻害遺伝子p16ink4a;線維化関連遺伝子αSMA,TGFβ)を実施した。Control(Con)群,Controlに運動介入をしたControl-Exercise(Con-Ex)群,EAM群,EAMに運動介入をしたEAM-Exercise(EAM-Ex)群の4群で比較検討した。
【結果】
片側腓腹筋あたりのMPC細胞数はCon群(mean,0.37*105 cells;95% CI,0.24-0.50)と比較してEAM群(mean,2.02 *105 cells;95% CI,1.58-2.46)で有意に増加した(P<0.001)。Con群ではEx介入によってMPC細胞数は有意に増加したが(mean,0.70 *105 cells;95% CI,0.56-0.84;P=0.02),EAM群ではEx介入で細胞数に有意差はなかった(mean,1.52 *105 cells;95% CI,1.90-1.14;P=0.132)。MPCの遺伝子発現解析の結果,Con-Ex群では筋再生関連,抗炎症関連および細胞周期阻害遺伝子の発現量増加を認めたが(P<0.05),EAM-Ex群減少(P<0.05),もしくは変化しなかった。さらに,EAM-Ex群では線維化関連遺伝子の発現が増加した(P<0.05)。
【結論】
正常マウスと筋炎マウスのMPCでは運動刺激に対する反応が異なることを明らかにした。慢性炎症状態の骨格筋に対する運動刺激は,本来MPCがもつ抗炎症能力や筋サテライト細胞ニッチとしての働きを減弱させること,MPCにおけるαSMAやTGFβの発現が亢進させて骨格筋線維化の原因となる可能性を示唆した。また,間葉系細胞におけるp16ink4aの発現低下は様々な組織における線維化や再生不良に寄与することが報告されている。今回,筋炎モデルでは運動介入によってp16ink4a発現低下を認め,正常モデルでは発現亢進した。以上より,p16ink4aは適切な運動刺激のバイオマーカーとなるかもしれない。
多発性筋炎に対する運動は炎症の助長や異所性組織を形成させるリスクがある。本研究では,骨格筋の炎症と再生,異所性組織形成において中心的な役割を果たす骨格筋間葉系前駆細胞(Mesenchymal Progenitor Cell:MPC)を中心として,運動刺激と炎症の助長および異所性組織形成のメカニズムを解明する。
【方法】
8週齢のBalb/cマウス(メス)に精製したBalb/c由来ミオシンと完全フロイトアジュバントをリンパ節付近に免疫し実験的自己免疫性筋炎(Experimental Autoimmune Myositis:EAM)を作成した。免疫後5週の時点で運動介入(17m/min,-20度傾斜,30分)を実施し,24時間後に腓腹筋を採取した。MPCはLineage陰性α7-integrin陰性PDGFRα陽性の細胞を単離した。単離後のMPCにて遺伝子発現解析(筋再生関連遺伝子Follistatin,IGF-1;抗炎症関連遺伝子TSG-6,IL-1Ra,IL-33;細胞周期阻害遺伝子p16ink4a;線維化関連遺伝子αSMA,TGFβ)を実施した。Control(Con)群,Controlに運動介入をしたControl-Exercise(Con-Ex)群,EAM群,EAMに運動介入をしたEAM-Exercise(EAM-Ex)群の4群で比較検討した。
【結果】
片側腓腹筋あたりのMPC細胞数はCon群(mean,0.37*105 cells;95% CI,0.24-0.50)と比較してEAM群(mean,2.02 *105 cells;95% CI,1.58-2.46)で有意に増加した(P<0.001)。Con群ではEx介入によってMPC細胞数は有意に増加したが(mean,0.70 *105 cells;95% CI,0.56-0.84;P=0.02),EAM群ではEx介入で細胞数に有意差はなかった(mean,1.52 *105 cells;95% CI,1.90-1.14;P=0.132)。MPCの遺伝子発現解析の結果,Con-Ex群では筋再生関連,抗炎症関連および細胞周期阻害遺伝子の発現量増加を認めたが(P<0.05),EAM-Ex群減少(P<0.05),もしくは変化しなかった。さらに,EAM-Ex群では線維化関連遺伝子の発現が増加した(P<0.05)。
【結論】
正常マウスと筋炎マウスのMPCでは運動刺激に対する反応が異なることを明らかにした。慢性炎症状態の骨格筋に対する運動刺激は,本来MPCがもつ抗炎症能力や筋サテライト細胞ニッチとしての働きを減弱させること,MPCにおけるαSMAやTGFβの発現が亢進させて骨格筋線維化の原因となる可能性を示唆した。また,間葉系細胞におけるp16ink4aの発現低下は様々な組織における線維化や再生不良に寄与することが報告されている。今回,筋炎モデルでは運動介入によってp16ink4a発現低下を認め,正常モデルでは発現亢進した。以上より,p16ink4aは適切な運動刺激のバイオマーカーとなるかもしれない。