The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-15] 口述演題(基礎)15

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:弓削 類(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-15-3] 細胞移植治療後のデュシェンヌ型筋ジストロフィー症モデルマウスに対する等尺性収縮トレーニングは,移植による治療効果を促進する

竹中 菜々1,2, 伊東 佑太3, 河上 敬介4, 櫻井 英俊1 (1.京都大学iPS細胞研究所, 2.日本学術振興会特別研究員(PD), 3.名古屋学院大学リハビリテーション学部, 4.大分大学福祉健康科学部)

Keywords:デュシェンヌ型筋ジストロフィー症, 細胞移植治療, 等尺性収縮トレーニング

【はじめに,目的】デュシェンヌ型筋ジストロフィー症(DMD)ジストロフィンタンパクの欠損を病因とし,筋線維の壊死と再生を繰り返しながら徐々に筋萎縮が進行していく遺伝性疾患であり,未だに有効な治療法はない。そこで,新たな根治療法として,細胞移植治療が期待され,様々な研究によりモデル動物での治療効果が報告されている。しかし,それらの多くは組織学的解析のみから治療効果を判定しており,細胞移植による運動機能の改善効果は明らかとなっていない。さらに,これまでにDMDに対する細胞移植治療と理学療法介入の相互作用に注目した研究はほとんどない。一方,骨格筋廃用萎縮モデル動物による実験では,骨格筋等尺性収縮トレーニングが筋萎縮抑制や筋再生促進に大きく寄与することが報告されている。そこで本研究では,細胞移植治療後のDMDモデル動物に対し,筋収縮トレーニングを負荷し,それらによるDMD phenotypeの改善効果を組織学的解析と運動機能評価の両面から明らかとすることを目的とした


【方法】重度免疫不全DMDモデルマウス(DMD-null/NSG)右腓腹筋に,ヒト不死化筋芽細胞(Hu5/KD3)8×106個を培養液中に懸濁して移植した。その際,左腓腹筋には同量の培養液を注入した(sham ope)。移植2日後,麻酔下で両側の下腿後面に経皮的電気刺激を加えて筋収縮を惹起し,その際に発揮される足関節底屈トルクの最大値を計測した。その後,それらのマウスはトレーニング群(N=2)と通常飼育群(N=5)とに分けられ,トレーニング群のマウスの両側後肢には,最大収縮時の40%の底屈トルクを発揮する電流値で電気刺激を50回繰り返して加え,等尺性収縮トレーニングが負荷された(トレーニング頻度:1回/1日,7日/週,期間:2週間)。移植8週間後には,両側腓腹筋が採取され,生着細胞数,ジストロフィン陽性線維数,筋線維径等を指標とした組織学的解析を行った。さらに,トレーニング開始日と終了日,そして,移植4・8週間後には最大底屈トルク値を計測し運動機能の経時的変化を記録した。


【結果】トレーニングの有無に関わらず,移植細胞はDMDモデルマウスの腓腹筋に生着し,移植筋ではジストロフィン陽性の筋線維が新たに形成されていたが,トレーニング群では通常飼育群と比較して,移植肢での生着細胞数とジストロフィン陽性線維数が共に約3倍増加していた。さらにトレーニング群では,最大底屈トルク値も増加し,野生型マウスでの測定値に近い値を示した。現在は,トレーニング群と通常飼育群,両群のサンプル数を増やし,再現性の確認と治療メカニズムの解明を進めている。さらに,新たに移植後不動群(尾部懸垂)を加え,細胞移植後のトレーニングによる効果をより多面的に解析中である。


【結論】細胞移植後に骨格筋等尺性収縮トレーニングを負荷すると,細胞の移植効率が向上し,細胞移植によるDMD phenotype改善効果もより促進されることが明らかとなった。