The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-16] 口述演題(基礎)16

Sat. May 13, 2017 4:50 PM - 5:50 PM A5会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室302)

座長:沖田 実(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科運動障害リハビリテーション学分野)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-16-5] 運動の時間配分が肥満を伴う2型糖尿病ラットのブドウ糖負荷応答に及ぼす影響

藤田 直人1,2, 青野 沙紀2, 唐崎 航平2, 世羅 布実2, 黒瀬 智之1,2, 藤野 英己3, 浦川 将1,2 (1.広島大学大学院医歯薬保健学研究院, 2.広島大学医学部保健学科, 3.神戸大学生命・医学系保健学域)

Keywords:2型糖尿病, インスリン抵抗性, 運動

【はじめに,目的】運動は2型糖尿病を改善し,その効果は運動時間に依存する。アメリカスポーツ医学会による糖尿病に対する運動処方の指針では,長時間の運動が困難な場合は運動を数回に分けて実施することが推奨されているが,運動の時間配分による影響は不明である。本研究では,同一時間の運動を単回で実施した場合と複数回に分けて実施した場合の違いを,2型糖尿病のブドウ糖負荷応答に着目して検証した。


【方法】肥満を伴う2型糖尿病モデル動物として20週齢の雄性OLETFラットを用い,正常動物として同一週齢の雄性LETOラットを用いた。動物はトレッドミルを用いた走行運動を行う群と運動を行わない非運動群に区分し,走行運動を行う動物は60分間の運動を1日1回行う群(Ex60群)と20分間の運動を1日3回行う群(Ex20×3群)に分けた。トレッドミルを用いた走行運動は,週に5回の頻度で4週間継続して実施し,走行速度は18 m/minとし,傾斜角度は上り10度に設定した。最終運動の2日後に経口ブドウ糖負荷試験を行い,空腹時,ブドウ糖負荷30分後,60分後,120分後に血糖値と血清インスリン値,血清遊離脂肪酸濃度(FFA)を測定した。また,最終運動の4日後に血漿TNF-α発現量,体重,肝臓と精巣上体脂肪の湿重量を測定した。各群間の比較には一元配置分散分析とTurkey HSDの多重比較検定を用いた。測定値間の関連性はピアソンの積率相関係数を用いて検討した。全ての統計処理に関して有意水準は5%未満とした。


【結果】経口ブドウ糖負荷30分後と60分後における血糖値は,OLETFラットの各群ではLETOラットの各群に比較して有意に高値を示した。また,Ex60群とEx20×3群は非運動群に比較して低値を示した。OLETFラットのEx60群とEx20×3群の血糖値に差は認めなかった。空腹時における血清インスリン値とFFAは,OLETFラットの非運動群ではLETOラットの各群に比較して高い傾向を示した。一方,OLETFラットのEx60群,Ex20×3群,LETOラットの各群の間には有意差を認めず,同程度であった。TNF-αの発現量は全ての動物において低く,群間差を認めなかった。経口ブドウ糖負荷30分後と60分後におけるOLETFラットの血糖値は,体重,肝臓重量,精巣上体脂肪量との間に有意な正の相関を認めた。


【結論】本研究の経口ブドウ糖負荷の結果より,OLETFラットにおける高インスリン血症を伴うインスリン抵抗性が示唆された。また,運動は時間配分に関わらず,OLETFラットに生じるブドウ糖負荷応答を改善したことから,インスリン抵抗性を軽減した可能性がある。インスリン抵抗性の軽減には脂質の減少が関与している可能性が示されたが,脂質を減少する可能性がある長時間運動に優位性が確認できなかった点に関して,今後は検討する必要がある。