[O-KS-18-2] 反復的他動運動が皮質内抑制回路に与える影響
Keywords:反復的他動運動, 運動頻度, 運動誘発電位
【はじめに,目的】
他動運動はリハビリテーション分野で幅広く用いられている運動療法の一つである。この他動運動を反復的に行うことで,一次運動野(M1)の興奮性が減弱すると報告されているが(Miyaguchi, et al., 2013),M1興奮性の減弱がどのような機序で起こっているのか不明である。そこで本研究は,反復的他動運動がM1内の抑制回路に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は同意の得られた健常成人12名(22.1±1.4歳)であった。M1興奮性の評価には,経頭蓋磁気刺激によって誘発される運動誘発電位(MEP)を用いた。刺激部位は左M1手指領域とし,右第一背側骨間筋から単発刺激によるMEP(single MEP)と二連発磁気刺激によって誘発されるMEP(SICI)を記録した。SICIの条件刺激強度は活動時運動閾値の70%とし,刺激間隔は3 msとした。介入前(pre)のsingle MEPとSICIの試験刺激の強度は安静時運動閾値の115%,120%,125%,130%とし,介入後は125%とした。他動運動課題は10分間の反復示指外転運動とし,運動頻度は1,3,5 Hzの3条件とした。single MEPとSICIはpreと介入終了後0分から4分までの2分毎(post0,post2)に各12回計測した。解析対象はsingle MEPとSICIの振幅値とし,各時間で得たMEP振幅の加算平均値を算出した。統計解析は介入と時間を要因として反復測定二元配置分散分析を行い,事後検定にはTurkey法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定二元配置分散分析の結果,single MEPとSICIにおいて時間の主効果と交互作用が認められた。事後検定の結果,single MEPは1 Hz条件でpre(1.08±0.08 mV)と比較してpost0(0.82±0.10 mV)で有意な低下を認めた。一方,3 Hz条件では有意差は認められなかった。5 Hz条件では,pre(1.11±0.12 mV)と比較してpost0(0.84±0.09 mV)とpost2(0.84±0.10 mV)で有意な低下を認めた。SICIは1 Hz条件でpre(0.73±0.11 mV)と比較してpost0(0.50±0.08 mV)で有意な低下を認めた。一方,3 Hz条件では有意差は認められなかった。5 Hz条件では,pre(0.73±0.09 mV)と比較してpost0(0.52±0.11 mV)で有意な低下を認めた。
【結論】
反復的他動運動によって誘起されるM1興奮性の減弱は,皮質内抑制機能の増大によるものであり,その影響は他動運動の頻度によって異なることが明らかになった。
他動運動はリハビリテーション分野で幅広く用いられている運動療法の一つである。この他動運動を反復的に行うことで,一次運動野(M1)の興奮性が減弱すると報告されているが(Miyaguchi, et al., 2013),M1興奮性の減弱がどのような機序で起こっているのか不明である。そこで本研究は,反復的他動運動がM1内の抑制回路に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は同意の得られた健常成人12名(22.1±1.4歳)であった。M1興奮性の評価には,経頭蓋磁気刺激によって誘発される運動誘発電位(MEP)を用いた。刺激部位は左M1手指領域とし,右第一背側骨間筋から単発刺激によるMEP(single MEP)と二連発磁気刺激によって誘発されるMEP(SICI)を記録した。SICIの条件刺激強度は活動時運動閾値の70%とし,刺激間隔は3 msとした。介入前(pre)のsingle MEPとSICIの試験刺激の強度は安静時運動閾値の115%,120%,125%,130%とし,介入後は125%とした。他動運動課題は10分間の反復示指外転運動とし,運動頻度は1,3,5 Hzの3条件とした。single MEPとSICIはpreと介入終了後0分から4分までの2分毎(post0,post2)に各12回計測した。解析対象はsingle MEPとSICIの振幅値とし,各時間で得たMEP振幅の加算平均値を算出した。統計解析は介入と時間を要因として反復測定二元配置分散分析を行い,事後検定にはTurkey法を用いた。有意水準は5%とした。
【結果】
反復測定二元配置分散分析の結果,single MEPとSICIにおいて時間の主効果と交互作用が認められた。事後検定の結果,single MEPは1 Hz条件でpre(1.08±0.08 mV)と比較してpost0(0.82±0.10 mV)で有意な低下を認めた。一方,3 Hz条件では有意差は認められなかった。5 Hz条件では,pre(1.11±0.12 mV)と比較してpost0(0.84±0.09 mV)とpost2(0.84±0.10 mV)で有意な低下を認めた。SICIは1 Hz条件でpre(0.73±0.11 mV)と比較してpost0(0.50±0.08 mV)で有意な低下を認めた。一方,3 Hz条件では有意差は認められなかった。5 Hz条件では,pre(0.73±0.09 mV)と比較してpost0(0.52±0.11 mV)で有意な低下を認めた。
【結論】
反復的他動運動によって誘起されるM1興奮性の減弱は,皮質内抑制機能の増大によるものであり,その影響は他動運動の頻度によって異なることが明らかになった。