The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-18] 口述演題(基礎)18

Sun. May 14, 2017 11:40 AM - 12:40 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:浅賀 忠義(北海道大学大学院保健科学研究院機能回復学分野)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-18-3] 下肢他動サイクリング運動と腕振り運動が下肢一次運動野の興奮性に与える影響
経頭蓋磁気刺激法による検討

越本 浩章1, 美馬 達哉2, 安藤 啓司3 (1.訪問看護ステーション友楽園, 2.京都大学大学院医学研究科附属脳機能総合研究センター, 3.神戸大学大学院保健学研究科)

Keywords:下肢他動サイクリング運動, 腕振り運動, 皮質興奮性

【はじめに】脳卒中後の下肢重度運動機能障害に対する有効性の高いリハビリテーション介入の報告は,ほとんどみられない。しかし,下肢重度運動機能障害を有する患者においても他動運動や腕振り運動は実施できる可能性がある。近年の脳イメージング研究では,肢の他動運動による一次運動野や運動関連領域の活性化が報告されている。しかし,運動誘発電位(Motor evoked potential:MEP)や皮質内抑制(Short-interval intracortical inhibition:SICI)の測定による運動皮質の興奮-抑制機構の変化や皮質脊髄路の興奮性の変化を調査した研究はほとんどみられない。一次運動野の興奮性や皮質内抑制の変化は,脳卒中患者の運動機能・動作能力の回復に影響しているとの種々の報告から,重度運動機能障害を有する脳卒中患者でも実施可能な運動による,それらの変化を検証することは有益であると考えられる。以上より,本研究では,健常成人に対する下肢他動サイクリング運動と腕振り運動が下肢一次運動野の興奮性に与える影響を,経頭蓋磁気刺激(Transcranial magnetic stimulation:TMS)を用いたMEPとSICIの計測により検討した。

【方法】対象は,健常成人7名とした(平均年齢26.6±2.7歳)。運動課題は,下肢他動サイクリング運動(Passive Cycling:PC条件),腕振り運動(Arm Swing:AS条件),両者の同時遂行(PC-AS条件),安静(Control:CON条件)の4条件とし,それぞれの対象者は,すべての介入条件を別日に実施した。実験手順は,Pre-test(Pre)として,左一次運動野下肢領域へのTMSにて右前脛骨筋(TA)から導出されたMEP,SICI及び右足背屈筋力を測定し,その後,各々の条件に応じた介入を15分間実施した。SICIは,運動時閾値の80%の条件刺激の3ミリ秒後にテスト刺激したMEPとテスト刺激のみのMEPの比として産出した。介入後に再びそれぞれの帰結評価をPost-test(Post)として行った。また,15分間の安静時間をとり,その後Follow up-test(Follow up)を実施した。統計学的分析は,全対象者のMEP,SICI,右TA等尺性筋力値を測定時期と介入条件を要因とした反復測定による二元配置分散分析にて処理した。その後,多重比較検定としてTukey検定を行った。

【結果】MEPは,各群ともに測定時期・介入条件の要因のいずれにも有意な主効果はみられなかった。SICIは,交互作用を認め,AS条件において0.6±0.07(Pre),0.77±0.08(Post)であり,Preと比較しPostの時点にて有意な増加を認めた(抑制の減少)。PC-AS条件においても,0.63±0.04(Pre),0.7±0.05(Post)であり,Preと比較しPostの時点にて有意な増加を認めた。しかし,PC及びCON条件では,測定時期の要因に有意差を認めなかった。TA筋力は,測定時期の要因,介入条件の要因に有意差はみられなかった。

【結論】本研究では,SICIがAS条件及びPC-AS条件にて増加したことから,腕振り運動により下肢一次運動野の皮質内抑制が減少する可能性が示唆された。