第52回日本理学療法学術大会

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-18] 口述演題(基礎)18

2017年5月14日(日) 11:40 〜 12:40 B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:浅賀 忠義(北海道大学大学院保健科学研究院機能回復学分野)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-18-4] 低強度の神経筋電気刺激による生体内機能変化
―筋線維伝導と深部温より―

三和 真人1, 雄賀多 聡1, 大谷 拓哉1, 小川 真司2 (1.千葉県立保健医療大学健康科学部リハビリテーション学科理学療法学専攻, 2.浜松赤十字病院リハビリテーション科)

キーワード:神経・筋電気刺激, 深部温, 筋線維伝導速度

【はじめに,目的】

理学療法の治療法の一つである神経・筋電気刺激(NMES)は広く臨床応用され,整形外科疾患や中枢性神経麻痺の運動機能回復,痙縮抑制や疼痛軽減など様々な目的に応じて用いられてきた。しかしながら,生体内の電気的変化は表在や深部の温度変化から捉えた論文は散見されるが,NMESによる筋線維伝導速度から生体内の変化を捉えた論文は見当たらない。そこで本研究はSynder-Markler(1994)らの論文を参考に,20%MVCの低い刺激強度で深部温と筋線維伝導速度(MFCV)の関係を明らかにすることを目的とした。


【方法】

対象は健常成人10名(男:女=4:6,21.9±0.7歳)とし,被験筋を右前脛骨筋とした。3回の足関節MVICを測定したうちの最大値の20%を目標刺激強度とした。除外基準は整形外科疾患,神経・筋疾患の既往がある人とした。実験プロトコールはパルス幅0.35msec,周波数20Hzで筋疲労を抑制するために,Benton(1981)らの研究を基に刺激1秒,休止5秒の10分間,60サイクルとした。

NMESの実験はRESPOND SYSTEMの使用機器を用い,刺激電極3.5cm×4cmの電極間距離15cmの双極方法とした。測定の評価は,コアテンプCM-210による深部温は開始前と終了後,サーモグラフィによる表面温度は開始前,5分後,終了後,電極間距離0.5cm,塩化銀電極7本のArray電極によるMFCV(500回加算平均)は開始前と終了後でそれぞれ測定した。統計学的解析は,深部温とMFCVは対応のあるt検定,皮膚表面温度は一元配置分散分析を行った。なお,有意水準は5%とした。

【結果】

電気刺激前後の表面温度変化は,開始前33.8±0.7(32.3~34.7)℃,5分後34.0±0.5℃(32.9~35.3),終了直後33.9±0.7(32.2~34.6)℃と群間に差は見られなかった。深部温度変化は,開始前34.3±0.6(34.4~35.0)℃と終了後35.2±0.5(33.4~35.8)℃で有意差(p<0.001)がみられた。また,MFCVの開始前3.59±1.5(1.7~5.8)m/sと終了直後4.48±1.7(1.8~7.7)m/sで有意差(p<0.05)が認められた。


【結論】

本研究の低刺激強度NMESのModalityでは,Malty(2007)らが電気刺激によって刺激電極間の筋腹中央の皮膚温上昇を皮膚血流量(skin blood flow)の上昇として報告していることとは異なるため,皮膚温上昇はみられなかった。しかし,深部温とMFCVが上昇しており,双極刺激法による刺激電極間で生体内に磁力線が密集して,運動神経の筋枝部に磁界が集中するため,生体組織に熱が生じるものと考えられる。つまり,深部温が上昇することとなり,MFCVが速くなるものと考えられた。

今後の本研究の課題は,同一Modalityで刺激電極間距離の違いが磁力線密度間隔に影響を与え,発熱変化を生じるのか検討を進めることが必要と考える。