[O-KS-19-4] 変形性股関節症患者における中殿筋の筋萎縮に関連する因子の検討
Keywords:変形性股関節症, 筋萎縮, 中殿筋
【はじめに,目的】変形性股関節症(以下,股OA)患者における中殿筋の筋萎縮は股関節外転筋力の低下を招き,前額面上での歩行の不安定性の原因となる。臨床の場面において,股OA患者の歩行能力の改善を目標として,股関節外転筋力の向上に取り組むことが多い。より適切に股OA患者の歩行能力の改善を図るためには,股関節外転筋力の低下の原因となる中殿筋の筋萎縮に関連する因子を明確にする必要がある。しかし,これらの因子を詳細に検討した報告は少ない。本研究の目的は,股OA患者の中殿筋の筋萎縮に関連する因子を身体所見及び画像所見から明らかにすることである。
【方法】片側の進行期または末期の股OA患者52名(年齢64.6±9.8歳,BMI22.9±3.8kg/m2,男性10名,女性42名)を対象とした。身体所見として股関節屈曲・伸展・外転角度,股関節痛(VASを用いて評価)を測定した。画像所見として当院整形外科医の処方により撮影された股関節正面のX線画像から脚長差,Central-edge angle(以下,CE角),骨盤前傾角度を測定し,CT画像から中殿筋の筋断面積を測定した。中殿筋の筋断面積の測定は,仙腸関節最下端での水平断におけるCT画像を採用し,画像解析ソフト(TeraRecon社製)を用いた。さらに,得られた筋断面積から中殿筋の筋萎縮率として患健比×100%を算出した。中殿筋の筋萎縮率と各測定項目の関連性の検討にはSPSS ver.18を使用し,Pearsonの相関係数,Spearmanの順位相関係数,ステップワイズ法による重回帰分析を用いた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】中殿筋の筋萎縮率は77.2±13.8%(患側2066.3±486.1mm2,健側2698.7±528.6mm2)であり,脚長差12.8±11.5mm(r=-0.51),患側の股関節屈曲角度91.6±16.7°(r=0.53),CE角17.8±10.4°(r=0.28)と有意な相関関係を認めた。一方,その他の測定項目については有意な相関関係を認めなかった。さらに,中殿筋の筋萎縮率を従属変数,脚長差,患側の股関節屈曲角度,CE角を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析の結果,股OA患者の中殿筋の筋萎縮率に関連する因子として,脚長差(β=-0.49),患側の股関節屈曲角度(β=0.34)が選択された(調整済みR2=0.47)。
【結論】本研究の結果から,股OA患者の中殿筋の筋萎縮が進行している症例では,脚長差が大きく,患側の股関節屈曲制限が顕著であることが明らかとなった。脚長差が大きく,股関節屈曲制限が顕著であると大腿骨頭が外上側変位や扁平化を呈していると考えられ,その結果,中殿筋の筋長が弛み機能不全となることで,中殿筋の筋萎縮を招いていると考えられた。これらのことから,股OA患者において,脚長差が大きく,股関節屈曲制限が顕著である場合は中殿筋が筋萎縮を呈している可能性を考慮し,股関節外転筋のアプローチを実施していく必要性があると示唆された。
【方法】片側の進行期または末期の股OA患者52名(年齢64.6±9.8歳,BMI22.9±3.8kg/m2,男性10名,女性42名)を対象とした。身体所見として股関節屈曲・伸展・外転角度,股関節痛(VASを用いて評価)を測定した。画像所見として当院整形外科医の処方により撮影された股関節正面のX線画像から脚長差,Central-edge angle(以下,CE角),骨盤前傾角度を測定し,CT画像から中殿筋の筋断面積を測定した。中殿筋の筋断面積の測定は,仙腸関節最下端での水平断におけるCT画像を採用し,画像解析ソフト(TeraRecon社製)を用いた。さらに,得られた筋断面積から中殿筋の筋萎縮率として患健比×100%を算出した。中殿筋の筋萎縮率と各測定項目の関連性の検討にはSPSS ver.18を使用し,Pearsonの相関係数,Spearmanの順位相関係数,ステップワイズ法による重回帰分析を用いた。統計学的有意水準は5%未満とした。
【結果】中殿筋の筋萎縮率は77.2±13.8%(患側2066.3±486.1mm2,健側2698.7±528.6mm2)であり,脚長差12.8±11.5mm(r=-0.51),患側の股関節屈曲角度91.6±16.7°(r=0.53),CE角17.8±10.4°(r=0.28)と有意な相関関係を認めた。一方,その他の測定項目については有意な相関関係を認めなかった。さらに,中殿筋の筋萎縮率を従属変数,脚長差,患側の股関節屈曲角度,CE角を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析の結果,股OA患者の中殿筋の筋萎縮率に関連する因子として,脚長差(β=-0.49),患側の股関節屈曲角度(β=0.34)が選択された(調整済みR2=0.47)。
【結論】本研究の結果から,股OA患者の中殿筋の筋萎縮が進行している症例では,脚長差が大きく,患側の股関節屈曲制限が顕著であることが明らかとなった。脚長差が大きく,股関節屈曲制限が顕著であると大腿骨頭が外上側変位や扁平化を呈していると考えられ,その結果,中殿筋の筋長が弛み機能不全となることで,中殿筋の筋萎縮を招いていると考えられた。これらのことから,股OA患者において,脚長差が大きく,股関節屈曲制限が顕著である場合は中殿筋が筋萎縮を呈している可能性を考慮し,股関節外転筋のアプローチを実施していく必要性があると示唆された。