The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT) » 口述発表

[O-KS-20] 口述演題(基礎)20

Sun. May 14, 2017 1:00 PM - 2:00 PM B3会場 (東京ベイ幕張ホール No. 6)

座長:森岡 周(畿央大学健康科学部理学療法学科)

日本基礎理学療法学会(JSPTF・JFPT)

[O-KS-20-1] 観察課題と測定上肢の肢位の違いが脊髄神経機能の興奮性へ与える影響について
前腕肢位の違いにおける検討

髙崎 浩壽1,2, 末廣 健児3, 田中 有美1, 石濱 崇史1, 鈴木 俊明2 (1.医療法人社団石鎚会田辺中央病院, 2.関西医療大学大学院保健医療学研究科, 3.医療法人社団石鎚会法人本部)

Keywords:F波, 運動観察, 脊髄神経機能

【はじめに,目的】

先行研究として我々は,第50回日本理学療法学術大会において右母指の静止映像,右母指の運動映像,右足関節の運動映像をそれぞれ観察させながら右母指球の筋腹上より誘発筋電図でF波を導出した。その結果,右母指の運動映像を観察させた際に他の2課題と比較して有意に脊髄神経機能の興奮性が高まると報告した。

本研究では,観察対象と測定上肢の肢位の違いによって脊髄神経機能の興奮性へ与える影響が変化するか否かについて,誘発筋電図のF波を用いて確認することを目的とした。

【方法】

対象は健常成人10名(男性6名,女性4名,平均年齢25.4±1.1歳)とした。対象者は右上肢を台上に乗せた安楽座位にて,右前腕回外位で手掌面を上方に向けた肢位(条件A),および右前腕回内外中間位で手掌面を左側方に向けた肢位(条件B)の2条件を測定肢位に設定した。また,視線の70cm先にパソコンを設置した。F波は右正中神経刺激時に右母指球の筋腹上より導出した。刺激強度はM波が最大となる強度の120%,刺激頻度は0.5Hz,刺激持続時間は0.2ms,刺激回数を30回とした。

測定の流れは,条件A・条件Bいずれかの測定肢位にて,まず閉眼で安静時のF波を測定し,続いて閉眼で4分間の休憩後,1分間映像を観察させながら同時にF波を測定した。提示する映像は,右母指の掌側内転・外転運動を橈側から撮影した動画とした。測定項目はF波出現頻度,振幅F/M比とした。

統計処理は,正規性を認めないデータが含まれていたため,条件A,条件Bそれぞれにおいて安静時と観察時を各測定項目で比較するために,wilcoxonの符号付順位和検定を実施した。さらに,条件A,条件Bの観察時の変化量を各測定項目で比較するため,各々安静時を1とした観察時の相対値を求めた上でwilcoxonの符号付順位和検定を実施した。有意水準はいずれも5%とした。

【結果】

条件Aは安静時に比べ観察時で振幅F/M比が有意に高い値を示した(p<0.05)。また,条件Bは安静時に比べ観察時でF波出現頻度,振幅F/M比共に有意い高い値を示した(p<0.05)。さらに,条件Aと条件Bを比較した際に,振幅F/M比相対値が条件Aに比べて条件Bで有意に高い値を示した(p<0.05)。

【結論】

Wrightらは,右母指対立運動の映像を観察させた際に右手の筋から導出した運動誘発電位は,右手の静止画を観察させた時よりも明らかに増大したと報告している。本研究結果を踏まえると,測定肢位に関わらず右母指の運動映像を観察したことによる視覚刺激が皮質へ何らかの影響を与え,下行性線維を介して脊髄神経機能に対し興奮性に作用したことが示唆された。さらに,測定上肢の肢位の違いによる比較においては,観察対象と対象者の上肢肢位が近似している方が,脊髄神経機能の興奮性はより高まる傾向にあることが考えられた。