[O-KS-20-2] 筋リラックスイメージは小脳経頭蓋磁気刺激による対側運動野興奮性抑制効果を増大する
Keywords:リラックスイメージ, 小脳抑制, 経頭蓋磁気刺激
【目的】ヒトの運動野(M1)に経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation:TMS)を行うと,四肢体幹筋の筋電図上に運動誘発電位(Motor evoked potential:MEP)が観察できる。このMEPの振幅は運動野興奮性を反映し,運動実行イメージ中は増大,筋弛緩(リラクゼーション)イメージでは減少する(Katoら2015)。他方,運動には小脳も関わっている(Scott 2004)ことから,このリラクゼーションイメージ中の運動野興奮性減少に小脳が関わっていると考えられるが,未だ明らかではない。そこで,筋のリラクゼーションイメージ中の小脳-運動野間の機能的連結の変調について,小脳抑制,つまり小脳TMSによる対側運動野興奮性抑制法(Cerebellar brain inhibition:CBI)(Ugawaら1995)を用いて検討した。
【方法】対象は21~26歳の健常成人11名とした。被験者は椅子に座らせ,右手指が動かないように固定した。被験者の目前のモニターに表示される右first dorsal interosseous muscle(FDI)のelectromyography(EMG)波形を見ながら筋の最大収縮,完全弛緩を繰り返させ,筋が完全に弛緩(リラックス)する感覚を覚えるように指示をした。練習後,筋リラックスイメージ中に運動野TMSのみによるMEP(M1-ReI),小脳条件刺激を加えたconditioned MEP(CBI-ReI),および何もイメージしない条件下でのMEP(M1-NoI),conditioned MEP(CBI-NoI)を各10試行,右FDIから記録した。なお,試験MEPは約1mVの振幅になるように刺激強度を調整した。統計は対応のある二元配置分散分析(イメージ×刺激条件),およびPost-hoc test(t検定)を行った(α=0.05)。
【結果】分散分析の結果,MEP振幅は刺激条件間に有意差を認めた。Post-hoc testにて,M1-No ImageとM1 Re Image間には有意差はなかったが,CBI-ReIはCBI-NoIより有意に小さかった。
【結論】リラックスイメージによって小脳条件刺激によるMEP抑制は有意に増大した。このことは,筋のリラックスイメージを行うと小脳から運動野に対する抑制作用が増大する可能性を示唆する。このことは,小脳疾患患者では筋をリラックスするイメージによる運動野興奮性の抑制,および対象筋の弛緩作用が小さいことを裏付ける基礎的知見となる可能性がある。
【方法】対象は21~26歳の健常成人11名とした。被験者は椅子に座らせ,右手指が動かないように固定した。被験者の目前のモニターに表示される右first dorsal interosseous muscle(FDI)のelectromyography(EMG)波形を見ながら筋の最大収縮,完全弛緩を繰り返させ,筋が完全に弛緩(リラックス)する感覚を覚えるように指示をした。練習後,筋リラックスイメージ中に運動野TMSのみによるMEP(M1-ReI),小脳条件刺激を加えたconditioned MEP(CBI-ReI),および何もイメージしない条件下でのMEP(M1-NoI),conditioned MEP(CBI-NoI)を各10試行,右FDIから記録した。なお,試験MEPは約1mVの振幅になるように刺激強度を調整した。統計は対応のある二元配置分散分析(イメージ×刺激条件),およびPost-hoc test(t検定)を行った(α=0.05)。
【結果】分散分析の結果,MEP振幅は刺激条件間に有意差を認めた。Post-hoc testにて,M1-No ImageとM1 Re Image間には有意差はなかったが,CBI-ReIはCBI-NoIより有意に小さかった。
【結論】リラックスイメージによって小脳条件刺激によるMEP抑制は有意に増大した。このことは,筋のリラックスイメージを行うと小脳から運動野に対する抑制作用が増大する可能性を示唆する。このことは,小脳疾患患者では筋をリラックスするイメージによる運動野興奮性の抑制,および対象筋の弛緩作用が小さいことを裏付ける基礎的知見となる可能性がある。