[O-KS-20-3] 運動-感覚の不一致によって生じる運動感覚システムの変容
Keywords:運動感覚システム, 身体所有感, 脳活動
【はじめに】運動指令とそれに対する感覚フィードバックが一致することで,違和感なく円滑な運動を遂行することができる。しかし,それらに不一致が生じると様々な異常感覚や身体所有感の損失が生じることが明らかになっている。本研究は運動-感覚の不一致を実験的に作成し,主観的な異常感覚の発現を明らかにするとともに,筋活動及び脳活動も同時に計測し,運動-感覚の不一致がもたらす運動感覚システムの変容について明らかにすることを目的とする。
【方法】対象は健康大学生25名である。運動-感覚の不一致を実験的に惹起させるために我々の先行研究に準じ,映像遅延システムを用いることとした(Shimada, 2010)。被験者の手関節運動をビデオカメラで撮影し,その映像を映像遅延装置(朋栄YEMエレテックス)経由で,被験者の実際の手と空間的不一致が生じない形で液晶モニターに投影した。時間遅延がない状況では,被験者は映像に映し出された手があたかも自分の手のように感じることができるように運動錯覚を生じさせた。この映像遅延装置を用いて,手の映像に4水準の映像遅延(0,150,300,750msec)を挿入し,各々の水準で手関節掌背屈運動時の撓側手根屈筋,撓側手根伸筋の筋活動を無線筋電計(DELSYS Trigno,サンプリング周波数;1000Hz,bandpass filter;30-500Hz)で記録し,筋電データからピーク周波数を算出することで運動リズムを定量化,ならびに二乗平均平方根(root mean square;RMS)を算出することで筋活動量を定量化した。7名の被験者は課題遂行中の脳波を測定し,運動開始から1秒間の時間窓に観測される対側一次運動野(C3領域)の運動関連電位を抽出した。また,各々の水準での身体損失感,重さ,疲労感を7段階のリッカート尺度で記録した。各水準はランダムに3試行実施され,各試行での手関節掌背屈運動は20回とした。統計解析は各水準間の比較をFriedman検定で行い,Bonferroni法で補正した。有意水準は0.008とした。
【結果】主観的知覚である身体の損失感,重さ及び疲労は,遅延時間の延長に伴って有意に増大した。また,運動リズム及び筋活動量は遅延時間増大に伴って有意に緩慢化・減少し,対側一次運動野の運動関連電位の振幅ピーク潜時は遅延時間増大に伴って遅延する傾向にあった。
【結論】随意運動に伴う視覚フィードバックの時間的遅延を与えることで,主観的知覚の変容が認められただけでなく,運動リズムの緩慢化及び対側一次運動野の活動に変調がみられたことから,運動-感覚の不一致が直接的に運動感覚システムを変容させることが示された。本結果は,運動-感覚不一致が生じているような脳卒中患者の運動障害を説明するモデルの一つになると示唆される。
【方法】対象は健康大学生25名である。運動-感覚の不一致を実験的に惹起させるために我々の先行研究に準じ,映像遅延システムを用いることとした(Shimada, 2010)。被験者の手関節運動をビデオカメラで撮影し,その映像を映像遅延装置(朋栄YEMエレテックス)経由で,被験者の実際の手と空間的不一致が生じない形で液晶モニターに投影した。時間遅延がない状況では,被験者は映像に映し出された手があたかも自分の手のように感じることができるように運動錯覚を生じさせた。この映像遅延装置を用いて,手の映像に4水準の映像遅延(0,150,300,750msec)を挿入し,各々の水準で手関節掌背屈運動時の撓側手根屈筋,撓側手根伸筋の筋活動を無線筋電計(DELSYS Trigno,サンプリング周波数;1000Hz,bandpass filter;30-500Hz)で記録し,筋電データからピーク周波数を算出することで運動リズムを定量化,ならびに二乗平均平方根(root mean square;RMS)を算出することで筋活動量を定量化した。7名の被験者は課題遂行中の脳波を測定し,運動開始から1秒間の時間窓に観測される対側一次運動野(C3領域)の運動関連電位を抽出した。また,各々の水準での身体損失感,重さ,疲労感を7段階のリッカート尺度で記録した。各水準はランダムに3試行実施され,各試行での手関節掌背屈運動は20回とした。統計解析は各水準間の比較をFriedman検定で行い,Bonferroni法で補正した。有意水準は0.008とした。
【結果】主観的知覚である身体の損失感,重さ及び疲労は,遅延時間の延長に伴って有意に増大した。また,運動リズム及び筋活動量は遅延時間増大に伴って有意に緩慢化・減少し,対側一次運動野の運動関連電位の振幅ピーク潜時は遅延時間増大に伴って遅延する傾向にあった。
【結論】随意運動に伴う視覚フィードバックの時間的遅延を与えることで,主観的知覚の変容が認められただけでなく,運動リズムの緩慢化及び対側一次運動野の活動に変調がみられたことから,運動-感覚の不一致が直接的に運動感覚システムを変容させることが示された。本結果は,運動-感覚不一致が生じているような脳卒中患者の運動障害を説明するモデルの一つになると示唆される。