第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-03] 口述演題(運動器)03

2017年5月12日(金) 14:10 〜 15:10 B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:金村 尚彦(埼玉県立大学)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-03-5] 内側半月板損傷患者におけるMMPRT(内側半月板後角横断裂)の占める割合とその傾向

弦巻 徹1, 藤澤 汐里1, 皆川 陽美1, 富田 樹1, 齋藤 昭彦2, 天本 藤緒3 (1.自由が丘整形外科リハビリテーション科, 2.杏林大学保健学部, 3.自由が丘整形外科)

キーワード:膝関節, 半月板損傷, MMPRT

【はじめに,目的】

MMPRT(Medial Meniscus Posterior Root Tear)は内側半月板後角付着部付近の横断裂,又は根部の靭帯部分での引き抜き損傷である。MMPRTでは他の内側半月板損傷例に比べ大腿骨又は脛骨の骨壊死を伴う例が多いという先行研究の報告があり,運動療法や手術適応判断の観点からもその病態を理解しておくことは重要である。一般的にMMPRTの発症は50~75歳の女性に多く,膝屈曲位で軸圧がかかった際に膝窩部の痛みを伴う自分ではっきりと認識できるエピソードで発症することが多いとされている。内側半月板損傷患者の中にMMPRT症例はどの程度の割合で存在するのか,その傾向と転帰について明らかにする目的で後方視的に比較検証を行った。






【方法】

2014年12月~2016年8月の間に自由が丘整形外科を受診し内側半月板損傷と診断された383人の中から,MRIにて医師がMMPRTありと診断した118人(男:女=16:102,年齢:66.47±9.60歳,身長:1.58±0.08m,体重:60.36±13.54kg)と,MMPRT以外の265人(男:女=56:209,年齢:64.0±11.02歳,身長:1.59±0.08m,体重:59.78±10.73kg)をMMPRT群と非MMPRT群の2群に分けた。非MMPRT群の断裂形態は後角以外の横断裂,水平断裂,斜断裂であった。両群間の①男女比,②年齢,③BMI,④骨壊死の有無,⑤発症の際の明確なエピソードの有無,⑥転帰について,その傾向を比較検証した。統計学的処理として,男女比と骨壊死,発症の際のエピソードの有無,転帰についてはX2検定を使用し,その他の項目については対応の無いt検定を使用し,有意水準5%未満とした。転帰についてはリハビリテーション処方例(MMPRT群:111人,非MMPRT群250人)を保存群(運動療法継続または終了例),手術群,カットアウト群に分類し,保存療法の有効性を検証した。半月板損傷の診断がつかない例,関節の変形が進行しMRI上で内側半月板が摩耗して確認できない例は除外した。






【結果】

内側半月板損傷全例に占めるMMPRTの割合は30.81%であった。身長,体重,BMI値には有意差がなかったが,年齢はMMPRT群で有意に高く(p<0.05),発症の際の明確なエピソードと骨壊死はMMPRT群で有意に多かった(p<0.01)。転帰についてはMMPRT群で手術となる例が有意に多かった(p<0.01)。






【結論】

内側半月板損傷患者には3割程度の割合でMMPRT例が存在する可能性が示唆された。MMPRTは非MMPRT例に比べ身長体重等の身体的特徴は変わらないが,高年齢で自覚できる明確なエピソードを持って発症し,骨壊死を伴う例が多いことが分かった。非MMPRTでは保存療法が有効な例が多く,MMPRTで結果的に手術となる例が多くなることが分かった。これはMMPRTで骨壊死例が多いこととの関連が推察される。本検証より,内側半月板損傷を疑う症例については発症の際の明確なエピソードの有無を聴取すること,画像診断によって骨壊死の有無を確認した上で転帰について予想し,保存療法の有効性を検討して治療に臨むことが重要であると示唆された。