The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-06] 口述演題(運動器)06

Fri. May 12, 2017 4:50 PM - 5:50 PM B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:来間 弘展(首都大学東京)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-06-4] 精神医学的問題の関与が疑われる腰痛症に対してマッケンジー法は有効か

柘植 孝浩1, 戸田 巌雄2, 弘中 美帆1 (1.倉敷成人病センターリハビリテーション科, 2.倉敷成人病センター整形外科)

Keywords:マッケンジー法, 運動療法, BS-POP

【はじめに,目的】

2012年の腰痛診療ガイドラインによれば,慢性腰痛に対する運動療法は高いエビデンスが報告され,管理下の運動療法が良いとされている。腰痛症では精神医学的問題の関与により治療に難渋することがあるが,そのような症例に対しても管理下の運動療法であるマッケンジー法(MDT)で改善することを経験する。本研究の目的は精神医学的問題の関与が疑われる腰痛症に対してのMDTの有効性を検討することである。


【方法】

対象は2013年11月から2016年1月に当院にてMDTを用いて治療を行ない,初回・最終評価が可能であった46例(男性20例,女性26例)である。MDT初回時に整形外科疾患における精神医学的問題を見つけるための簡易問診票(BS-POP)を用いて評価し,精神医学的問題の関与が疑われる症例を異常群(14例:男性7例,女性7例),それ以外を正常群(32例:男性13例,女性19例)に分類した。治療効果判定は日本整形外科学会腰痛評価質問票(JOABPEQ)とし,MDTの初回および最終時に評価し,両群を比較検討した。統計解析は治療前後の比較ではWilcoxon符号順位和検定,治療前の二群比較にはMann-Whitney U検定,有効率の二群比較にはFisherの正確確立検定を用いて,有意水準を5%未満とした。


【結果】

BS-POP正常群,異常群におけるJOABPEQの有効率はそれぞれ疼痛関連障害では77%,71%,腰椎機能障害では67%,40%,歩行機能障害では83%,42%,社会生活障害では58%,46%,心理的障害では31%,15%であり,歩行機能障害において有意差が見られていた(P<0.05)。疼痛関連障害において治療前の比較では正常群50.0±15.8,異常群43.0±14.5と異常群が低い傾向(P=0.06)であり,異常群において重症度が高いことが示唆されたが,治療後は正常群が85.5±14.5(P<0.01),異常群が71.0±21.4(P<0.01)とそれぞれ有意に改善が見られていた。

適切な運動方向(Directional Preference,DP)については正常群では伸展20例(63%),屈曲11例(34%),不明1例(3%),異常群では伸展8例(57%),屈曲3例(21.5%),不明3例(21.5%)であった。


【結論】

マッケンジー法では「中腰,前屈で痛い」,「座っていると痛い」等の姿勢や動作に関連する腰痛をメカニカルな腰痛と呼び,メカニカルな腰痛に対しては症状が改善する適切な運動方向(DP)に基づく運動療法が有効だとされている(Long A, et al., 2004)。今回の対象においてもBS-POP正常群で97%,異常群で78.5%のDPが検出されていたため,BS-POP異常群においても疼痛関連障害の良好な改善が見られていたと考えられる。精神医学的問題の関与が疑われる症例では,一見,病態が複雑なように見えるが,中にはメカニカルな要素による腰痛症も含まれており,これらに対してDPに基づいた運動療法は有効であったと思われる。