The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-07] 口述演題(運動器)07

Fri. May 12, 2017 6:10 PM - 7:10 PM A6会場 (幕張メッセ国際会議場 中会議室303)

座長:石田 和宏(我汝会えにわ病院リハビリテーション科)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-07-4] 超音波画像診断装置を用いた後踵骨滑液包の癒着評価について

西嶋 力1, 浅野 昭裕1, 鵜飼 建志1, 福吉 正樹2, 斉藤 正佳2, 小野 哲矢2, 中川 宏樹2, 岸田 敏嗣3, 林 典雄3 (1.中部学院大学看護リハビリテーション学部, 2.名古屋スポーツクリニック, 3.運動器機能解剖学研究所)

Keywords:後踵骨滑液包, 癒着評価, 超音波画像診断装置

【はじめに,目的】アキレス腱付着部痛の一因として,後踵骨滑液包炎後に続発する踵骨とアキレス腱間の癒着が挙げられる。この癒着評価には底屈運動時のKager's fat pad(KFP)の動態をエコー観察することが有用とされているが一般的とは言い難い。Theobaldは,KFPにアキレス腱区画,長母指屈筋区画,ウエッジ区画の3区画があることを報告し,後踵骨滑液包へのウエッジ区画の流入には,長母指屈筋区画の役割が重要であることが示された。本研究の目的は,長母指屈筋区画への圧搾によるウエッジ区画の滑液包内への流入動態について検討し,癒着の評価に必要な超音波機能解剖を明示することである。

【方法】対象は,足部に運動器疾患を有さない健常者20名(男性13名,女性7)の両脚40足,平均年齢20.3±0.7歳である。エコーは,日立アロカメディカル社製Noblusを用い,18MHzのリニアプローブを使用した。方法は,腹臥位にて足関節底屈位とした状態(静止時)で,踵骨近位端からウエッジ区画の最遠位部までの距離を測定した。更に,同一検者がKFPの長母指屈筋区画を遠位方向へと圧搾し(押込時)同様に距離を測定した。描出方法は,アキレス腱の長軸走査によりfibrillar patternが鮮明な画像を描出した。描出画像からプローブを内側並びに外側へと移動し,踵骨後面のsuperior facetの形態を基準に,内側・中央・外側の3部位で測定した。

【結果】後踵骨滑液包の位置変化について,静止時では,内側3.2±1.4mm,中央4.1±1.9mm,外側4.1±1.9mm,押し込み時では,内側5.2±1.7mm,中央6.8±2.1mm,外側7.3±2.0mmであった。各測定部位において,静止時より押込時で有意(p<0.05)に尾側へ変位していた。左右差と性差はなかった。静止時には測定部位による差はなかったが,押込時には,内側より外側は有意(p<0.05)に深く,中央より外側が有意(p<0.05)に深く,ウエッジ区画が足底方向に変位していた。

【結論】長母指屈筋区画の押し込みにより,後踵骨滑液包に癒着のない健常者であっても,静止時に比して内側で2.0mm,中央で2.7mm,外側では3.2mmの変位があった。足関節底屈位での後踵骨滑液包へのウエッジ区画侵入動態を観ることで同部の癒着評価が可能であるが,押し込み操作を加えることで更に深部へウエッジが侵入した。同部の癒着評価において,長母指屈筋区画の押し込み操作を加えた方が,ウエッジ区画の動態観察が可能であり,癒着評価がより確実になると考える。侵入量は外側が最も深く,内側は浅い特徴があり,滑液包の奥行に由来するものと考えられ,癒着評価において留意すべきである。本研究は健常者の正常動態であることから標準値を知り得た訳であり,今後後足部障害と比較することが課題と考える。