[O-MT-10-1] 人工膝関節全置換術後長期間のリハビリテーションは必要である
―術後平均10年経過例における大腿四頭筋の等尺性筋力解析から―
Keywords:人工膝関節全置換術, 等尺性大腿四頭筋筋力, Knee Society Knee Scoring System
【はじめに,目的】
人工膝関節全置換術(以下TKA)後の大腿四頭筋筋力低下に関する報告の多くは術後短期間での成績であり,術後長期成績に関する報告は少ない。近年大腿四頭筋筋力(以下QS)は患者立脚型評価であるKnee Society Knee Scoring System(以下KSKSS)にて定義されている基本的活動ならびに応用的活動と高い相関関係があると報告されており,Furuらは(J Orthop Sci. 2016),QSはTKA術後患者の満足度や活動復帰においても重要であると報告している。本研究の目的は両側TKA術後平均10年経過例におけるQSをTKA症例と年齢を合わせた健常例と比較し,同時に同一症例間で左右異なるデザインのQSへの影響を検討することである。
【方法】
両側変形性膝関節症と診断され,一側をDepuy社製LCS Total Knee System後十字靭帯温存型(以下CR群)に置換し,もう一側を切離型(以下PS群)に置換した二期的両側TKA34例68膝を対象とした(平均年齢81歳,69-96歳)。手術はすべて同一術者によって施行され,CR群のフォローアップ期間は111カ月,PS群は114カ月であった。またTKA症例と年齢を合わせた膝への愁訴のない健常例35例70膝を対照群とした(平均年齢83歳,71-92歳)。大腿四頭筋筋力測定はアルケア社製ロコモスキャンにて,膝20°屈曲位での等尺性膝伸展筋力を測定した。各群3回ずつ測定し,最大値を代表値として,体重に対する筋力比(以下MS/BW;N/kg)を検討項目とした。医療側評価としてHospital for Special Surgery(以下HSS)スコア統計と患者立脚型評価であるKSKSSを実施した。
【結果】
MS/BWにおいて,CR群は3.3(1.4-10.5),PS群は3.4(0.9-9.3),対照群は4.6(0.4-8.8)であった。CR群とPS群との間に有意差を認めなかったが,健常群と比較しCR群・PS群ともに有意に低値を示した(CR群p=0.020,PS群p=0.024)。HSSはCR群95/100点,PS群95/100点であったが,KSKSSはCR群132/180点,PS群132/180点とそれぞれ低値を示した。
【結論】
本研究の結果より術後平均10年経過例において,臨床成績が良好にも関わらずCR群・PS群のいずれにおいても体重に対する筋力比が同年代の健常者と比較して有意に低値を示しており,大腿四頭筋の筋力低下が術後中長期においても残存していることが示唆された。また,CR群・PS群間で差を認めず,PCL温存は大腿四頭筋筋力の点において大きなメリットにならないことが示唆された。今回の結果から,医療側評価スコアが高値にも拘らず,患者自身の満足度が低く,残存する大腿四頭筋筋力低下もその一因であることが推察された。昨今の在院日数の短縮化や診療報酬改定によるリハビリテーション期間の短縮化が進められている中,TKA後の患者満足度や活動復帰にとって大腿四頭筋が重要であることを考慮し健常例と同レベルまでに改善させるためには,ホームエクササイズの提案など,大腿四頭筋筋力強化の長期間の継続が必要であることが示唆された。
人工膝関節全置換術(以下TKA)後の大腿四頭筋筋力低下に関する報告の多くは術後短期間での成績であり,術後長期成績に関する報告は少ない。近年大腿四頭筋筋力(以下QS)は患者立脚型評価であるKnee Society Knee Scoring System(以下KSKSS)にて定義されている基本的活動ならびに応用的活動と高い相関関係があると報告されており,Furuらは(J Orthop Sci. 2016),QSはTKA術後患者の満足度や活動復帰においても重要であると報告している。本研究の目的は両側TKA術後平均10年経過例におけるQSをTKA症例と年齢を合わせた健常例と比較し,同時に同一症例間で左右異なるデザインのQSへの影響を検討することである。
【方法】
両側変形性膝関節症と診断され,一側をDepuy社製LCS Total Knee System後十字靭帯温存型(以下CR群)に置換し,もう一側を切離型(以下PS群)に置換した二期的両側TKA34例68膝を対象とした(平均年齢81歳,69-96歳)。手術はすべて同一術者によって施行され,CR群のフォローアップ期間は111カ月,PS群は114カ月であった。またTKA症例と年齢を合わせた膝への愁訴のない健常例35例70膝を対照群とした(平均年齢83歳,71-92歳)。大腿四頭筋筋力測定はアルケア社製ロコモスキャンにて,膝20°屈曲位での等尺性膝伸展筋力を測定した。各群3回ずつ測定し,最大値を代表値として,体重に対する筋力比(以下MS/BW;N/kg)を検討項目とした。医療側評価としてHospital for Special Surgery(以下HSS)スコア統計と患者立脚型評価であるKSKSSを実施した。
【結果】
MS/BWにおいて,CR群は3.3(1.4-10.5),PS群は3.4(0.9-9.3),対照群は4.6(0.4-8.8)であった。CR群とPS群との間に有意差を認めなかったが,健常群と比較しCR群・PS群ともに有意に低値を示した(CR群p=0.020,PS群p=0.024)。HSSはCR群95/100点,PS群95/100点であったが,KSKSSはCR群132/180点,PS群132/180点とそれぞれ低値を示した。
【結論】
本研究の結果より術後平均10年経過例において,臨床成績が良好にも関わらずCR群・PS群のいずれにおいても体重に対する筋力比が同年代の健常者と比較して有意に低値を示しており,大腿四頭筋の筋力低下が術後中長期においても残存していることが示唆された。また,CR群・PS群間で差を認めず,PCL温存は大腿四頭筋筋力の点において大きなメリットにならないことが示唆された。今回の結果から,医療側評価スコアが高値にも拘らず,患者自身の満足度が低く,残存する大腿四頭筋筋力低下もその一因であることが推察された。昨今の在院日数の短縮化や診療報酬改定によるリハビリテーション期間の短縮化が進められている中,TKA後の患者満足度や活動復帰にとって大腿四頭筋が重要であることを考慮し健常例と同レベルまでに改善させるためには,ホームエクササイズの提案など,大腿四頭筋筋力強化の長期間の継続が必要であることが示唆された。