The 52st Congress of Japanese Society of Physical Therapy

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-11] 口述演題(運動器)11

Sat. May 13, 2017 3:30 PM - 4:30 PM B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:村木 孝行(東北大学病院リハビリテーション部)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-11-6] 超音波ガイド下腕神経叢ブロックによる非観血的授動術前の運動恐怖心が施術後1ヶ月の運動機能に及ぼす影響

榊 彰裕1, 中北 智士2, 芝 俊紀3, 和田 治4, 岡 智大4, 朴 基彦5 (1.あんしんクリニック, 2.あんしんクリニック住吉, 3.松井整形外科, 4.あんしん病院, 5.パクペインクリニック)

Keywords:凍結肩, 超音波, 非観血的授動術

【はじめに,目的】近年,難治性の凍結肩に対して,外来で簡便にできる超音波ガイド下腕神経叢ブロックによる非観血的授動術(以下:徒手授動術)が施行され,施術後早期より良好な治療成績が報告されている。徒手授動術後の疼痛・可動域に影響を与える因子に,施術前の可動域や糖尿病の有無が挙げられる。他の整形疾患術後患者では,術前の心理的な要因が術後の運動機能に影響を与えるとされ,運動に対する恐怖心が強いと疼痛の慢性化や身体的・心理社会的機能の障害に繋がると報告されている。そのため,徒手授動術患者においても運動恐怖心と機能障害が関連する可能性があるが,それらを報告したものはない。従って,本研究の目的は徒手授動術前の運動恐怖心が,施術後1ヶ月の運動機能に及ぼす影響を検討することとした。


【方法】対象は,徒手授動術を施行した肩関節拘縮患者23名23肩(男性5名,女性18名,右側14肩,左側9肩,年齢51.4±7.0歳)とした。除外基準は,腱板断裂を合併している者,糖尿病を罹患している者,施術前の他動肩関節屈曲可動域(以下:AE)が90°未満の者とした。評価時期は,施術前1週(以下:Pre)と施術後1ヶ月(以下:Post1m)とした。Preの運動恐怖心の評価にTampa Scale of Kinesiophobia(以下:TSK)を用いた。Post1mの運動機能評価には運動時痛,夜間痛,自動AE,下垂位外旋(以下:ER)可動域を測定し,上肢機能障害の評価にはQuick DASHの機能障害/症状スコアを用いた。統計学的解析には,PreのTSKとPost1mの疼痛,肩関節可動域,Quick DASHとの関連性をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。有意水準は5%とした。


【結果】

本研究の結果(Pre/Post1m),TSKは40.4±1.8点/36.1±4.9点,運動時痛は56.3±23.5mm/18.6±14.5mm,夜間痛は59.1±28.4mm/11.0±13.0mm,自動AEは105.7±16.5°/144.1±18.0°,自動ERは13.8±8.9°/46.3±12.4°,Quick DASHは34.5±16.0点/13.9±9.1点となった。単変量解析の結果,PreのTSKとPost1mの運動時痛(ρ=0.52,p=0.01),Quick DASH(ρ=0.54,p<0.01)に有意な相関を認めた。


【結論】本研究より,徒手授動術前の運動恐怖心は施術後1ヶ月の運動時痛,機能障害に影響を及ぼすことが示唆された。他の整形疾患患者において,術前の運動恐怖心は術後の疼痛,機能障害に影響すると報告されており,本研究においても同様の結果となった。また,運動恐怖心が高い場合では恐怖-回避モデルを形成しやいと報告されている。本研究においても,施術前より運動恐怖心が強いため恐怖-回避モデルを形成していた可能性が高く,施術後も疼痛を引き起こす可能性がある動作や行動を回避または制限したのではないかと考えられ,徒手授動術前の運動恐怖心が施後1ヶ月での運動時痛,機能障害に繋がったと考えられる。そのため,徒手授動術前より運動機能のみならず心理的な要因に対しても治療介入を行う必要があると考えられる。