[O-MT-12-3] 骨盤臓器脱患者に行われる骨盤底筋体操の筋力増強効果とQOLの関係
Keywords:骨盤臓器脱, 骨盤底筋, 筋力増強
【はじめに,目的】
骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)は,膣から子宮,膀胱,直腸などの骨盤内臓器が下垂する疾患である。POP患者は,しばしば臓器下垂のために歩行困難を訴える。また,尿失禁や頻尿などを伴うために外出や運動を控え活動量が低下していることも少なくないと報告されている。さらに,POP患者は同年代の健常者と比較して,バランス能力,脚力,歩行能力といった運動機能の低下と関連があるとも報告されている。しかし,先行研究では,具体的な筋力に関する報告が認められず,POP患者に推奨される骨盤底筋体操による筋力増強効果は不明である。そこで,今回,骨盤底筋体操による筋力増強効果とQOLの関係について,調査を実施したので報告を行う。
【方法】
2016年3月~10月までに当院産婦人科から骨盤底筋体操指導の依頼を受けたPOP患者12名を対象とした。骨盤底筋体操は,肛門・膣を引き締める体操であり,体操の様式から調査する筋力を股関節内転筋,バランス能力に影響する外転筋,活動量に影響する筋として大腿四頭筋をターゲットとした。骨盤底筋体操のパンフレットは,当科で作成し対象者に体操を指導した。体操の内容は,膝屈臥位・四つ這い・椅子座位・立位の内いずれかの肢位で肛門・膣を締める運動を行った。運動頻度は5秒間持続収縮させることを10回で1セット,1日に10セット行うよう指導した。また,先行研究より体操の継続が困難な症例が多いと報告があるため,カレンダーを渡し行った回数を毎日記入させ体操を意識付けるようにした。
筋力の計測は,ハンドヘルドダイナモメーター(ANIMA μTas MT-1)を使用し,左右の和を2で除した数値からトルク体重比(Nm/kg)を算出した。バランス能力として,開眼片脚立位を測定した。QOL評価としてInternational Consultation on Incontinence Questionnaire-ShortForm(ICIQ-SF)とProlapse quality of life questionnaire(P-QOL)を使用した。P-QOLの評価に関しては,キング健康調査票と同様の手順にしたがって評価できる設問のみを使用した。評価時期は初回リハビリ時,1ヶ月後,2ヶ月後の計3回とした。統計処理は評価時期3群でFriedman検定を実施し,統計ソフトは自治医科大で配布されたEZRソフトを用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者の平均年齢は69.6±4.7歳,BMI22.9±2.6kg/m2,出産回数は1.9±0.8回であった。統計分析の結果,筋力では,股関節内転筋で有意差を認め,バランス能力としては,左右片脚立位で有意差を認めた。また,P-QOLにおいては,全健康感,重症度で有意差を認めた。
【結論】
POP患者に対する骨盤底筋体操は,股関節内転筋力やバランス能力を改善させることが示唆され,P-QOLにおいて,全健康感,重症度を改善させることが示唆された。今後は症例数を増やし,今回示唆された要因同士の関連について,検討していく必要がある。
骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse:POP)は,膣から子宮,膀胱,直腸などの骨盤内臓器が下垂する疾患である。POP患者は,しばしば臓器下垂のために歩行困難を訴える。また,尿失禁や頻尿などを伴うために外出や運動を控え活動量が低下していることも少なくないと報告されている。さらに,POP患者は同年代の健常者と比較して,バランス能力,脚力,歩行能力といった運動機能の低下と関連があるとも報告されている。しかし,先行研究では,具体的な筋力に関する報告が認められず,POP患者に推奨される骨盤底筋体操による筋力増強効果は不明である。そこで,今回,骨盤底筋体操による筋力増強効果とQOLの関係について,調査を実施したので報告を行う。
【方法】
2016年3月~10月までに当院産婦人科から骨盤底筋体操指導の依頼を受けたPOP患者12名を対象とした。骨盤底筋体操は,肛門・膣を引き締める体操であり,体操の様式から調査する筋力を股関節内転筋,バランス能力に影響する外転筋,活動量に影響する筋として大腿四頭筋をターゲットとした。骨盤底筋体操のパンフレットは,当科で作成し対象者に体操を指導した。体操の内容は,膝屈臥位・四つ這い・椅子座位・立位の内いずれかの肢位で肛門・膣を締める運動を行った。運動頻度は5秒間持続収縮させることを10回で1セット,1日に10セット行うよう指導した。また,先行研究より体操の継続が困難な症例が多いと報告があるため,カレンダーを渡し行った回数を毎日記入させ体操を意識付けるようにした。
筋力の計測は,ハンドヘルドダイナモメーター(ANIMA μTas MT-1)を使用し,左右の和を2で除した数値からトルク体重比(Nm/kg)を算出した。バランス能力として,開眼片脚立位を測定した。QOL評価としてInternational Consultation on Incontinence Questionnaire-ShortForm(ICIQ-SF)とProlapse quality of life questionnaire(P-QOL)を使用した。P-QOLの評価に関しては,キング健康調査票と同様の手順にしたがって評価できる設問のみを使用した。評価時期は初回リハビリ時,1ヶ月後,2ヶ月後の計3回とした。統計処理は評価時期3群でFriedman検定を実施し,統計ソフトは自治医科大で配布されたEZRソフトを用いた。なお,有意水準は5%未満とした。
【結果】
対象者の平均年齢は69.6±4.7歳,BMI22.9±2.6kg/m2,出産回数は1.9±0.8回であった。統計分析の結果,筋力では,股関節内転筋で有意差を認め,バランス能力としては,左右片脚立位で有意差を認めた。また,P-QOLにおいては,全健康感,重症度で有意差を認めた。
【結論】
POP患者に対する骨盤底筋体操は,股関節内転筋力やバランス能力を改善させることが示唆され,P-QOLにおいて,全健康感,重症度を改善させることが示唆された。今後は症例数を増やし,今回示唆された要因同士の関連について,検討していく必要がある。