[O-MT-13-4] 難治性慢性痛患者に対するペインマネジメントプログラムの年代別効果
若年群と高齢群との比較
Keywords:慢性痛, ペインマネジメントプログラム, 年代別
【はじめに,目的】慢性痛患者では,痛み認知の歪みにより,不安や過度の回避行動を介して,抑うつや不活動,能力障害を呈しやすい。こうしたケースに対し,諸外国にて認知行動療法に基づいた講義と運動によるペインマネジメントプログラムが広く実施されている。その有効性について,長期経過や疾患別に検討した報告は散見されるが,年代別に検討した報告は少ない。我々は平成23年より外来型ペインマネジメントプログラムを実施しており,これまでにプログラム前後および6か月後における,痛み,精神心理機能,身体機能への影響や効果の持続などを報告してきた。今回,本プログラムによる年代別効果を比較検討した。
【方法】対象は,平成23年10月から平成28年9月に開催した本プログラム参加者98名とし,60歳未満の若年群26名(平均年齢45.1歳),60歳以上の高齢群72名(同69.1歳)に群分けした。プログラムは定員を5~7名とし,痛みに関する講義と運動を週1日,全9回実施した。講義は痛みのメカニズムおよび対処(コーピング),活動量のコントロール(ペーシング),グループミーティングなどで,医師,理学療法士が担当した。運動はストレッチング,ストレングストレーニング,エルゴメーター,ヨガ,水中歩行などで,理学療法士,トレーナーが担当した。またプログラム前後に下記の評価を実施した。痛み,精神心理機能の評価は,痛みの強さ:Visual Analog Scale(VAS),生活障害度:Pain Disability Assessment Scale(PDAS),不安・抑うつ:Hospital Anxiety and Depression scale(HADS不安,HADS抑うつ),痛み認知の歪み:Pain Catastrophizing Scale(PCS),自己効力感:Pain Self-Efficacy Questionnaire(PSEQ),QOL:EuroQol 5 Dimension(EQ-5D)などの質問票を使用した。身体機能評価は,10mジグザグ歩行(10m歩行),起居動作テスト(起居動作),身辺作業テスト(身辺作業),6分間歩行距離(6MD)などを計測した。プログラム前後における各評価項目の群間および群内比較に,二元配置分散分析,Scheffe法を使用した(有意水準5%未満)。
【結果】プログラム前において,若年群は高齢群と比較して10m歩行,起居動作,身辺作業,6MDで有意に良好な値を示したものの,VAS,HADS抑うつ,PSEQ,EQ-5Dで有意に不良な値を示した。またPDASは有意差を認めなかったが,若年群で不良な値を示した。プログラム前後において,高齢群は全項目で有意な改善を認めたが,若年群はHADS不安のみ有意な変化を認めなかった(p=0.8)。
【結論】若年群では身体機能は保たれているものの,痛みに対する認知の歪み,抑うつ,低い自己効力感のため,職場や家庭での社会的役割の遂行に支障を来すことが多く,低QOL,および生活障害度が高い傾向を示したと推察する。従って若年の慢性痛患者群には,身体的アプローチだけでなく,心理面や社会面に対するアプローチがより重要になるものと考える。
【方法】対象は,平成23年10月から平成28年9月に開催した本プログラム参加者98名とし,60歳未満の若年群26名(平均年齢45.1歳),60歳以上の高齢群72名(同69.1歳)に群分けした。プログラムは定員を5~7名とし,痛みに関する講義と運動を週1日,全9回実施した。講義は痛みのメカニズムおよび対処(コーピング),活動量のコントロール(ペーシング),グループミーティングなどで,医師,理学療法士が担当した。運動はストレッチング,ストレングストレーニング,エルゴメーター,ヨガ,水中歩行などで,理学療法士,トレーナーが担当した。またプログラム前後に下記の評価を実施した。痛み,精神心理機能の評価は,痛みの強さ:Visual Analog Scale(VAS),生活障害度:Pain Disability Assessment Scale(PDAS),不安・抑うつ:Hospital Anxiety and Depression scale(HADS不安,HADS抑うつ),痛み認知の歪み:Pain Catastrophizing Scale(PCS),自己効力感:Pain Self-Efficacy Questionnaire(PSEQ),QOL:EuroQol 5 Dimension(EQ-5D)などの質問票を使用した。身体機能評価は,10mジグザグ歩行(10m歩行),起居動作テスト(起居動作),身辺作業テスト(身辺作業),6分間歩行距離(6MD)などを計測した。プログラム前後における各評価項目の群間および群内比較に,二元配置分散分析,Scheffe法を使用した(有意水準5%未満)。
【結果】プログラム前において,若年群は高齢群と比較して10m歩行,起居動作,身辺作業,6MDで有意に良好な値を示したものの,VAS,HADS抑うつ,PSEQ,EQ-5Dで有意に不良な値を示した。またPDASは有意差を認めなかったが,若年群で不良な値を示した。プログラム前後において,高齢群は全項目で有意な改善を認めたが,若年群はHADS不安のみ有意な変化を認めなかった(p=0.8)。
【結論】若年群では身体機能は保たれているものの,痛みに対する認知の歪み,抑うつ,低い自己効力感のため,職場や家庭での社会的役割の遂行に支障を来すことが多く,低QOL,および生活障害度が高い傾向を示したと推察する。従って若年の慢性痛患者群には,身体的アプローチだけでなく,心理面や社会面に対するアプローチがより重要になるものと考える。