[O-MT-13-5] 筋骨格系患者における理学療法の治療効果における中枢性感作の影響
Central Sensitization Inventoryを用いた検討
Keywords:筋骨格系疼痛, 中枢性感作, スクリーニング
【はじめに,目的】
中枢性感作(Central Sensitization:CS)は,中枢神経系の過興奮による神経生理学的な状態を示し,慢性疼痛の病態の一つであることが示唆されている。CSは疼痛だけでなく,疲労や睡眠障害,不安,抑うつなどの身体症状を誘発することから,CSが関与する包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome:CSS)が提唱されている。近年,CSおよびCSSのスクリーニングツールとしてCentral Sensitization Inventory(CSI)が開発され,臨床的有用性が報告されている。CSIはCSSに共通する健康関連の症状を問うPart A(CSI score)および,CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無を問うPart Bで構成される。我々はこれまでに言語的妥当性の担保された日本語版CSIを作成し,筋骨格系疼痛患者において,CSI scoreと疼痛や健康関連QOLとの関連を報告している。また,人工膝関節置換術前にCSI scoreが高いと3ヶ月後の予後が不良であることも報告されており,CSIが予後を予測するスクリーニング評価として有用であることが報告されている。しかし,保存療法において,CSIが治療効果を予測する評価であるかは不明である。今回,筋骨格系疼痛患者においてCSIを用い,理学療法介入前のCSと介入後の疼痛および健康関連QOLの関連について調査し,CSIがCSのスクリーニング評価として有用であるか検討した。
【方法】
外来受診患者を対象に介入前にCSI,Euro QOL 5 Dimension(EQ5D),Brief Pain Inventory(BPI)を評価した。その後,3ヶ月理学療法を継続した46名(男性17名,女性29名,平均年齢55.1±16.3歳,頚部8名,肩部7名,腰部19名,膝部6名,その他6名)を対象に,EQ5D,BPIを再評価した。介入は関節可動域練習,筋力増強運動,動作指導といった標準的な理学療法を行った。CSI scoreと3ヶ月後のEQ5D,BPI(下位項目:Pain intensity,Pain interferenceの平均点を使用)の関連をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。また,CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無で2群(CSS群,no CSS群)に分け,3ヶ月後のEQ5D,BPIについてMann WhitneyのU検定を用いて比較検討した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
CSI scoreの中央値は21.5点(範囲:3-48点)であった。CSI scoreと3ヶ月後のEQ5Dは有意な負の相関を認め(EQ5D:r=-0.332,p<0.05),BPIと有意な正の相関を認めた(Pain intensity:r=0.425,p<0.01;Pain interference:r=0.378,p<0.01)。また,CSS群(n=14)における3ヶ月後のEQ5Dはno CSS群(n=32)に比べて有意に低く,Pain interferenceは有意に高かった(p<0.01)。
【結論】
介入前のCSI scoreが3ヶ月後のEQ5D,BPIと有意な相関を認めたことから,CSIがスクリーニング評価として有用である可能性が示唆された。また,CSSに関連する疾患の診断歴もリスクとして考慮する必要性が示唆された。これらのことから,CSI scoreが高い症例に対して,早期からCSを考慮した治療戦略を実施する必要性が示唆された。
中枢性感作(Central Sensitization:CS)は,中枢神経系の過興奮による神経生理学的な状態を示し,慢性疼痛の病態の一つであることが示唆されている。CSは疼痛だけでなく,疲労や睡眠障害,不安,抑うつなどの身体症状を誘発することから,CSが関与する包括的な疾患概念として中枢性感作症候群(Central Sensitivity Syndrome:CSS)が提唱されている。近年,CSおよびCSSのスクリーニングツールとしてCentral Sensitization Inventory(CSI)が開発され,臨床的有用性が報告されている。CSIはCSSに共通する健康関連の症状を問うPart A(CSI score)および,CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無を問うPart Bで構成される。我々はこれまでに言語的妥当性の担保された日本語版CSIを作成し,筋骨格系疼痛患者において,CSI scoreと疼痛や健康関連QOLとの関連を報告している。また,人工膝関節置換術前にCSI scoreが高いと3ヶ月後の予後が不良であることも報告されており,CSIが予後を予測するスクリーニング評価として有用であることが報告されている。しかし,保存療法において,CSIが治療効果を予測する評価であるかは不明である。今回,筋骨格系疼痛患者においてCSIを用い,理学療法介入前のCSと介入後の疼痛および健康関連QOLの関連について調査し,CSIがCSのスクリーニング評価として有用であるか検討した。
【方法】
外来受診患者を対象に介入前にCSI,Euro QOL 5 Dimension(EQ5D),Brief Pain Inventory(BPI)を評価した。その後,3ヶ月理学療法を継続した46名(男性17名,女性29名,平均年齢55.1±16.3歳,頚部8名,肩部7名,腰部19名,膝部6名,その他6名)を対象に,EQ5D,BPIを再評価した。介入は関節可動域練習,筋力増強運動,動作指導といった標準的な理学療法を行った。CSI scoreと3ヶ月後のEQ5D,BPI(下位項目:Pain intensity,Pain interferenceの平均点を使用)の関連をSpearmanの順位相関係数を用いて検討した。また,CSSに特徴的な疾患の診断歴の有無で2群(CSS群,no CSS群)に分け,3ヶ月後のEQ5D,BPIについてMann WhitneyのU検定を用いて比較検討した。統計学的有意水準は5%とした。
【結果】
CSI scoreの中央値は21.5点(範囲:3-48点)であった。CSI scoreと3ヶ月後のEQ5Dは有意な負の相関を認め(EQ5D:r=-0.332,p<0.05),BPIと有意な正の相関を認めた(Pain intensity:r=0.425,p<0.01;Pain interference:r=0.378,p<0.01)。また,CSS群(n=14)における3ヶ月後のEQ5Dはno CSS群(n=32)に比べて有意に低く,Pain interferenceは有意に高かった(p<0.01)。
【結論】
介入前のCSI scoreが3ヶ月後のEQ5D,BPIと有意な相関を認めたことから,CSIがスクリーニング評価として有用である可能性が示唆された。また,CSSに関連する疾患の診断歴もリスクとして考慮する必要性が示唆された。これらのことから,CSI scoreが高い症例に対して,早期からCSを考慮した治療戦略を実施する必要性が示唆された。