第52回日本理学療法学術大会

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日本運動器理学療法学会 » 口述発表

[O-MT-13] 口述演題(運動器)13

2017年5月13日(土) 16:50 〜 17:50 B4会場 (東京ベイ幕張ホール No. 8・9)

座長:田中 創(九州医療スポーツ専門学校理学療法学科)

日本運動器理学療法学会

[O-MT-13-6] 線維筋痛症に対する物理療法の介入効果
メタアナリシスによる検討

濱上 陽平1,2, 本田 祐一郎2,3, 片岡 英樹2,4, 佐々部 陵2,3, 後藤 響2,4, 福島 卓矢2,3, 大賀 智史2, 近藤 康隆2,5, 佐々木 遼2, 田中 なつみ2, 坂本 淳哉2, 中野 治郎2, 沖田 実2 (1.社会福祉法人十善会十善会病院リハビリテーション科, 2.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科運動障害リハビリテーション学研究室, 3.長崎大学病院リハビリテーション部, 4.長崎記念病院リハビリテーション部, 5.日本赤十字社長崎原爆病院リハビリテーション科)

キーワード:線維筋痛症, 物理療法, メタアナリシス

【はじめに,目的】

線維筋痛症は全身の激しい痛みと軟部組織のこわばりによって特徴づけられる難治性の慢性疾患であり,本邦における推定患者数は200万人以上といわれている。線維筋痛症に対する理学療法アプローチとしては,運動療法に加えて鎮痛を目的とした各種の物理療法が行われているが,線維筋痛症の原因・病態が明らかにされていないがゆえに,物理療法に効果があるのか否かは未だ議論が続いており,エビデンスも示されていない。そこで今回,これまでに発表された線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証したランダム化比較試験(Randomized controlled trial;RCT)を検索し,メタアナリシスを行ったので報告する。

【方法】

医学文献データベース(Medline,CINAHL Plus,Pedro;1988年~2016年8月に発表されたもの)に収録された学術論文の中から,線維筋痛症に対する物理療法の効果を検証した論文を系統的に検索・抽出した。その中から,ヒトを対象としたもの,研究デザインがRCTであるもの,アウトカムとして痛みの程度(VSA),圧痛箇所数(Tender point),線維筋痛症質問票(Fibromyalgia Impact Questionnaire;FIQ)のいずれかを用いているもの,結果の数値が記載されているもの,適切な対照群が設定されているもの,言語が英語であるものを採用し,固定効果モデルのメタアナリシスにて統合した。なお,有意水準は5%未満とし,採用したRCT論文はPEDroスコアを用いて質の評価を行った。

【結果】

抽出された227編の論文のうち,採用条件のすべてを満たした論文は11編であり,PEDroスコアは平均5.82ポイントであった。検証された物理療法の内訳は,低出力レーザーが5編で最も多く,全身温熱療法が4編,電気刺激療法が1編,磁気刺激療法が1編であった。次に,メタアナリシスにおいて,物理療法による介入の有無によって痛み(VAS)の変化を比較した結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてで有意差を認め,効果が確認された。同様に,圧痛箇所数およびFIQの変化を比較した結果,低出力レーザーと全身温熱療法で有意差を認め,効果が確認された。なお,採用した論文の中に電気刺激療法,磁気刺激療法の効果を圧痛箇所数およびFIQで検証したものはなかった。

【結論】

今回の結果,低出力レーザー,全身温熱療法,電気刺激療法,磁気刺激療法のすべてにおいて線維筋痛症の痛みに対する効果が確認された。採用論文は多くはないが,線維筋痛症に対する物理療法の効果をメタアナリシスで検証した研究は国内外で他に見あたらず,本研究の結果は物理療法のエビデンスの確立に寄与するものと思われる。ただ,電気刺激療法と磁気刺激療法に関しては採用した論文はそれぞれ1編であったため,エビデンスが示されたとは言い難く,今後さらにRCTの発表と蓄積が求められる。