[O-MT-15-6] 寛骨臼骨折術後患者におけるQOLに影響する因子の検討
Keywords:寛骨臼骨折, QOL, 股関節外転筋力
【はじめに】
寛骨臼骨折は全骨折の2%という稀な骨折(Laird,2005)である。その手術手技は整形外科領域の中で最も難易度の高い部類に入り(入船,2014),治療する施設は限られる。そのため本骨折における報告は少なく,QOLに関する報告はほとんどない。今回,当院で骨接合術が施行された寛骨臼骨折患者を対象に,QOLに影響する因子を検討したので報告する。
【対象と方法】
2011年10月~2015年10月に当院で寛骨臼骨折骨接合術が施行された40例を対象とし,そのうち術後人工股関節置換となったものや重篤な合併症を有するものを除外した。調査項目は,年齢,性別,陥没骨片の有無,術式,骨折面のstep off(術直後および術後12ヶ月時点),股関節機能評価としてHarris Hip Score,股関節外転筋筋力(患側および健側),歩行時痛(VAS),QOL評価として日本語版EQ-5D-5Lとした。股関節外転筋力については徒手筋力計(モービィ,酒井医療社製)を使用し,トルク体重比(Nm/kg)を算出した。歩行時痛(VAS)は,0-100の範囲で疼痛のない状態を0とした。陥没骨片の有無と骨折面のstep off(術直後および術後12ヶ月時点)については,主治医がレントゲンとCTから判断および計算した。日本語版EQ-5D-5Lについては,換算表からQOL値(0-1.000)を算出した。以上の各項目についてそれぞれ術後12ヶ月に調査を行なった。QOLに影響する因子の検討として,QOL値を従属変数,それ以外の項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行なった。なお,統計処理にはSPSS Statistics ver.24を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
12ヶ月以上のフォローが可能であった24例(平均53.0±15.3歳,男性19例,女性5例)で解析を行なった。各項目の内訳および平均は,陥没骨片は「有り」が11例,「無し」が13例,術式は「前方」が19例,「後方」が5例,骨折面のstep offは「術直後」が1.6±1.5mm,「術後12ヶ月」が2.8±1.5mm,Harris Hip Scoreは90.4±12.8点,股関節外転筋筋力は「患側」が1.0±0.4Nm/kg,「健側」が1.1±0.4Nm/kg,歩行時痛は9.5±19.3,日本語版EQ-5D-5Lから算出されたQOL値は0.817±0.164であった。重回帰分析の結果,QOLを説明する因子として患側股関節外転筋力が抽出され,このモデルの重決定係数はR2=0.635(p<0.001)であった。また,患側股関節外転筋力の標準化回帰係数はβ=0.811であった。
【結論】
寛骨臼骨折術後患者におけるQOLには患側股関節外転筋力が影響することが示された。一方で陥没骨片の有無や術式,骨折面のstep offについては関連が認められなかった。筋力は理学療法士の介入によって改善が期待できる項目である。本骨折は関節面骨折であり術後は免荷となることが多く,介入には股関節面へのストレスについての配慮が必要であると考える。
寛骨臼骨折は全骨折の2%という稀な骨折(Laird,2005)である。その手術手技は整形外科領域の中で最も難易度の高い部類に入り(入船,2014),治療する施設は限られる。そのため本骨折における報告は少なく,QOLに関する報告はほとんどない。今回,当院で骨接合術が施行された寛骨臼骨折患者を対象に,QOLに影響する因子を検討したので報告する。
【対象と方法】
2011年10月~2015年10月に当院で寛骨臼骨折骨接合術が施行された40例を対象とし,そのうち術後人工股関節置換となったものや重篤な合併症を有するものを除外した。調査項目は,年齢,性別,陥没骨片の有無,術式,骨折面のstep off(術直後および術後12ヶ月時点),股関節機能評価としてHarris Hip Score,股関節外転筋筋力(患側および健側),歩行時痛(VAS),QOL評価として日本語版EQ-5D-5Lとした。股関節外転筋力については徒手筋力計(モービィ,酒井医療社製)を使用し,トルク体重比(Nm/kg)を算出した。歩行時痛(VAS)は,0-100の範囲で疼痛のない状態を0とした。陥没骨片の有無と骨折面のstep off(術直後および術後12ヶ月時点)については,主治医がレントゲンとCTから判断および計算した。日本語版EQ-5D-5Lについては,換算表からQOL値(0-1.000)を算出した。以上の各項目についてそれぞれ術後12ヶ月に調査を行なった。QOLに影響する因子の検討として,QOL値を従属変数,それ以外の項目を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行なった。なお,統計処理にはSPSS Statistics ver.24を用い,有意水準は5%とした。
【結果】
12ヶ月以上のフォローが可能であった24例(平均53.0±15.3歳,男性19例,女性5例)で解析を行なった。各項目の内訳および平均は,陥没骨片は「有り」が11例,「無し」が13例,術式は「前方」が19例,「後方」が5例,骨折面のstep offは「術直後」が1.6±1.5mm,「術後12ヶ月」が2.8±1.5mm,Harris Hip Scoreは90.4±12.8点,股関節外転筋筋力は「患側」が1.0±0.4Nm/kg,「健側」が1.1±0.4Nm/kg,歩行時痛は9.5±19.3,日本語版EQ-5D-5Lから算出されたQOL値は0.817±0.164であった。重回帰分析の結果,QOLを説明する因子として患側股関節外転筋力が抽出され,このモデルの重決定係数はR2=0.635(p<0.001)であった。また,患側股関節外転筋力の標準化回帰係数はβ=0.811であった。
【結論】
寛骨臼骨折術後患者におけるQOLには患側股関節外転筋力が影響することが示された。一方で陥没骨片の有無や術式,骨折面のstep offについては関連が認められなかった。筋力は理学療法士の介入によって改善が期待できる項目である。本骨折は関節面骨折であり術後は免荷となることが多く,介入には股関節面へのストレスについての配慮が必要であると考える。